lonelylika’s diary

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ

メキシコ  世界初の裁判官公選制  麻薬組織の影響は? 米では政権による司法の恣意的利用も

(メキシコ・ハリスコ州サポパンで有権者に配布される、裁判所判事の公選制に関する資料(2025年5月28日撮影)【5月29日 AFP】)

 

【関税差し止め判決で、政権は「“選挙で選ばれていない判事”がトランプ氏の行動に口を出す権利はない」】

アメリカでは重要な政策決定が司法の場に持ち込まれることが常で、最終的には最高裁判断で結着することが常です。

 

それだけに、米大統領の最大の仕事は自分に有利な最高裁判事を可能な限り最高裁に送り込むことだとされており、そこを抑えれば、最高裁判断を後ろ盾に相当に強引な政権運営が可能になります。

 

その意味で、トランプ大統領は1期目で判事交代のタイミングに恵まれて「とてつもない成果」を実現し、最高裁判事構成の保守化をなしとげていること、そのため、多少強引な政策でも最終的には司法で結着させることができる有利な立場にあることは再三取り上げてきました。

 

もっとも、最近では例え司法が大統領政策を認めなくても、「国民に選挙で選ばれた大統領の権限の方が最高裁より上だ!」という三権分立を軽視するような姿勢も色濃くなっています。

 

関税についても、下級審レベルで差し止め判断がでましたが、政権は控訴して最終的には最高裁で決着させる意向でしょうし、仮に最高裁が認めなくても・・・といったところでしょう。

 

国民に選ばれた訳でもない裁判官が大統領の政策を阻止するのは「司法クーデター」だとも。

 

****トランプ政権、関税差し止め判決を不服として控訴****

米国際貿易裁判所は28日、ドナルド・トランプ政権による関税政策が違憲だとして企業などが提訴した裁判で、この訴えを認め、関税の停止を命じた。判決を受けて政権側は同日、控訴した。

 

裁判所に提出された控訴状には「2025年5月28日の裁判所の意見および最終判決に対して、米国連邦巡回区控訴裁判所に控訴することをここに通知する」とある。

 

裁判所の判断は、厳しい新関税を通じて各国政府を交渉の場に引き出そうとするトランプ氏にとって、米国の貿易関係を再構築しようとする試みへの大きな後退を意味する。

 

ホワイトハウスは判決について、「選挙で選ばれていない判事」がトランプ氏の行動に口を出す権利はないと主張。また、大統領次席補佐官のスティーブン・ミラー氏はSNSで「制御不能な司法クーデター」と非難した。

 

裁判所は、関税発動の根拠となっている国際緊急経済権限法について、「ほぼすべての国からの商品の無制限の関税を課す権限を大統領に委任していない」とし、「IEEPAがそのような無制限の権限を与えるとは読まず、そこで課された関税を無効にする」「無制限の関税権限を委任する解釈は違憲である」との判断を下した。 【5月29日 AFP】***************

 

今回差し止め対象になった関税は、すべての国への10%と、相互関税上乗せ分(日本は14%)の部分のようです。

自動車や鉄鋼・アルミへの追加関税は対象外とか。

 

司法判断を「制御不能な司法クーデター」として退けるなら、もはや「独裁者」「専制君主」の領域に入って行きます。

 

確かに、国によっては「司法クーデター」的なことが頻繁に起こることもあります。

ひと頃のタイで、保守派・軍部を背景とした勢力が司法判断によってタクシン派政権を再三転覆させたことや、カンボジアでの野党への司法を使った糾弾・解党処分などはその類でしょう。

 

トランプ大統領と司法の関係については、下記のような話題も。

 

****トランプ米大統領、自身の弁護士を高裁判事に指名****

トランプ米大統領は28日、ポルノ女優への口止め料支払いを巡る刑事事件で有罪評決を受けた際に自身を弁護したエミル・ボーブ氏を、東部ペンシルベニア州フィラデルフィアの連邦高裁の判事に指名すると発表した。

トランプ氏は自身の交流サイト(SNS)に、「ボーブ氏は司法の武器化を終わらせ、法の支配を回復し、米国を再び偉大にするために必要なことは何でもする」と投稿した。

ボーブ氏は司法省で首席司法副長官代理を務めている。高裁判事への就任には上院の承認が必要。

同氏は2月、ニューヨーク市のアダムス市長に対する汚職事件の起訴を取り下げるよう指示した。検察側は拒否し、ワシントンとニューヨークの検察官11名が辞職する事態となった。

上院司法委員会の民主党トップのダービン議員は、「(ボーブ氏には)地位の乱用が何度もあった」と主張し、同氏の指名に懸念を表明した。声明で、「ボーブ氏の不正行為疑惑は弁護士としての適格性に疑問を投げかけるだけでなく、彼の行動は、司法省の伝統的な独立性と法の支配を損なおうとするトランプ氏らの動きの一環だ」と批判した。【5月29日 ロイター】

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「司法の武器化」・・・どっちが?

 

【メキシコ 世界初の裁判官公選制導入 麻薬組織の司法への影響力は弱まるのか、強まるのか?】

こうした司法の恣意的な利用を止め、中立性を保ち、国民に選ばれた存在としての権威を付与しようとする動きの一つとして裁判官の公選制があります。

 

世界初の国家レベルの裁判官公選制を採用しようとしているのがメキシコです。

 

****メキシコ、世界初の裁判官公選へ 6月1日投票****

メキシコで6月1日、最高裁判所判事を含む全ての裁判官を選ぶ直接選挙が実施される。裁判官全員の公選制を実施する初めての国となる。

 

ただ、この司法改革をめぐっては、裁判所への犯罪組織などからの影響を弱めるのか、それとも強めることになるのか、議論が沸騰している。

 

政府は裁判官公選制について、まん延する腐敗と不処罰に対処するために必要と主張。これに対し、司法の独立性が損なわれ、悪名高い麻薬王ホアキン「エル・チャポ」グスマンの元弁護士など物議を醸す候補者の参加により、逆効果を招くと警告する向きもある。

 

6月1日には、有権者が数千人の連邦、地区、地方の裁判官・下級判事を選ぶ。残りの選挙は2027年に行われる予定だ。

 

エル・ウニベルサル紙とパイス紙の調査によれば、有権者の半数しか選挙日を知らず、投票すると答えたのは10人中4人にとどまっている。 【5月29日 AFP】AFPBB News

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現実問題としては、形骸化しているような日本の最高裁判所裁判官国民審査に見るように、国民が裁判官に関して関心を持って評価するというのはなかなか難しいところも。

 

少し情報が古いようですが、ロペス・オブラドール前政権時の制度設計案は以下のようなものでした。

 

****大まかな仕組み(案として出されている制度設計)****

候補者の推薦・選出プロセス:候補者は大統領、連邦議会(上院・下院)、司法府から推薦される。

推薦された候補者は、選挙管理機関(INE)によって登録・監督され、全国選挙の対象となる。

 

国民による直接投票

国政選挙(例:大統領選挙や議会選挙)と同時に実施される可能性が高い。有権者は候補者名簿から選び、最多得票者が任命される。

 

任期と再選の可否

任期は通常6年、再選は禁止または制限される案が多い。

 

■ 制度の意図・目的

司法の「民主化

現在の司法制度は、司法内部または政治的な任命によって裁判官が決められる仕組みで、国民からの距離があるとされている。  直接選挙によって、司法を「人民の意思」に近づけることが目的。

 

腐敗の抑止

メキシコの司法は長らく汚職や政治的癒着の批判を受けている。  公開選挙で選ばれることで、透明性を高め、裁判官の責任を可視化する狙いがある。

 

政治的統制の強化(批判的観点)

一部の批評家は、この改革は大統領(特にロペス・オブラドール政権)による司法への影響力拡大を狙ったものと見ており、権力の分立を危うくする可能性があると警告している。

 

■ 賛否両論の要点

賛成派の主張

国民が裁判官を選べる=民主的で透明  腐敗した任命制度からの脱却  司法への信頼回復

 

反対派の主張

一般有権者は法律の専門性に基づく判断が難しい  ポピュリズムに司法が左右されるリスク  裁判官が人気取りに走り中立性を失う恐れ

 

この制度は、ラテンアメリカ諸国では一部の州やレベルで類似の取り組みが見られるものの、全国レベルで最高裁判所の判事まで選挙で選ぶのは極めて異例です。メキシコの民主制度の今後に大きな影響を与える可能性がある重要な改革といえます。【ChatGPT】

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メキシコと言えば「麻薬戦争」が思い浮かぶように、政治への麻薬組織の介入が顕著な国です。

 

****メキシコ 市長選候補者が選挙活動のライブ配信中に撃たれ死亡 候補者殺害は先月に続き2人目****

メキシコで、市長選挙の候補者が選挙活動のライブ配信中に銃で撃たれて死亡するという事件が起きました。
支持者の車であふれる通りに突然、響きわたる銃声。歓声が悲鳴へと変わります。

ロイター通信によりますと、メキシコ中部ベラクルス州テクシスペテク市で11日夜、市長選挙の与党候補者が選挙集会を終えて支持者らと話をしていたところ、オートバイに乗った武装グループに突然、銃撃されたということです。

ロイター通信は検察当局の話として、候補者を含む4人が死亡、3人が負傷したと伝えています。事件当時、候補者は選挙活動の様子をライブ配信していました。

ベラクルス州の知事は検挙することを誓い、シェインバウム大統領は州当局との連携や支援を約束しています。

AP通信によりますと、ベラクルス州では先月にも別の自治体の与党候補者1人が銃で撃たれて死亡しており、これまでに57人の候補者らが政府や州が提供する警備を要請したということです【5月13日 TBS NEWS DIG】

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****メキシコシティ市長の側近2人が銃撃され死亡 政権与党への攻撃か*****

2メキシコシティ市長の側近2人が、バイクに乗った男に銃撃され死亡しました。政権与党への攻撃とみられています。

20日午前7時半ごろ、メキシコシティ中心部で市長の顧問と秘書が車に乗っていると、2人組の男がバイクで近づき、フロントガラスへいきなり発砲しました。  少なくとも4発が貫通して顧問は運転席で即死、秘書は車から出て逃げようとしましたが、まもなく銃弾に倒れ、死亡しました。

メキシコシティはシェインバウム大統領が最近まで市長を務めていた与党モレナ党の牙城で、トランプ大統領の要請もあり、麻薬組織カルテルの締め出しに乗り出していました。

シェインバウム大統領は「警察だけでなく軍も交えて捜査する」としています。【5月21日 テレ朝news】

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暴力・資金を使って麻薬組織が政府・行政に入り込み、司法への影響力も・・・という構図は容易に想像されるところです。

 

裁判官公選制によって、そうした麻薬組織の司法への影響力を遮断し、司法の中立・公正性を守ることができるのか?

 

それとも逆に、麻薬組織が公選制を利用して組織の息のかかった者を司法に送り込むようなことにもなるのか?(実際、立候補者に麻薬カルテルの元弁護人が含まれることもわかっています)

 

有権者の半数しか選挙日を知らず、投票すると答えたのは10人中4人にとどまっている”状況でどっちに転ぶのか・・・・いささか心配な「実験」のようにも思えます。