
(イスラエル軍に撃たれて死亡した4人の葬儀に集まった人たち=15日、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区【3月16日 CNN】)
【イラン情勢に世界の関心が集中する状況で関心が低下するも、苦悩は続くパレスチナ情勢】
国際社会の注目がイラン戦争に集まる中、ウクライナやパレスチナの交渉・取組に関する報道は殆ど目にしません。
メディアの関心が低下したこともありますが、アメリカがイランに集中する状況で他の地域への関与が低下し、結果的にウクライナやパレスチナの交渉・取組自体が停滞しているように思われます。
そうした状況にあっても、パレスチナの苦悩は続いています。
イラン戦争のあおりで、封鎖されていたエジプト境界にあるガザ最南部のラファ検問所がようやく再開されましたが、イスラエルの管理が厳しいようです。
****ガザ、ラファ検問所を再開 イラン交戦開始後に封鎖****
イスラエル当局は19日、エジプト境界にあるパレスチナ自治区ガザ最南部のラファ検問所で限定的な人の往来を再開したと明らかにした。イラン攻撃を始めた2月28日「安全上の理由」でガザの全検問所を封鎖していた。
パレスチナメディアは今月19日、ガザから傷病者8人と付き添いがラファ検問所を通過すると報じた。
検問所は傷病者の域外搬送に使われ、封鎖の影響が懸念されていた。世界保健機関(WHO)によると、ガザの1万8500人以上に域外での緊急治療が必要。ただ今後も往来できる人数は大きく制限され、イスラエル側の事前承認も得なければならない。【3月19日 共同】
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“1万8500人以上に域外での緊急治療が必要”ななか、19日に認められたのが傷病者8人・・・あまりに少なすぎます。
【ヨルダン川西岸地区で激しさ増すイスラエルによる「民族浄化」的な動きとイスラエル人入植者の暴力】
ハマスとの停戦状態にあるガザ地区に代わって、ヨルダン川西岸地区でのイスラエルの暴力・入植強行が目立ちます。
****イスラエル軍がパレスチナ人一家4人を射殺 ヨルダン川西岸****
パレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区で、イスラム教の断食月ラマダンの断食を終えて深夜に車で外出していたパレスチナ人の一家4人がイスラエル兵に射殺された。パレスチナ当局が明らかにした。死者の中には5歳と7歳の男児2人が含まれる。
イスラエル軍は、兵士がこの家族の車の動きに脅威を感じたため発砲したと説明した。占領下のパレスチナ自治区では、イスラエル兵やイスラエル人入植者によってパレスチナ人が殺害される事件が相次いでいる。
アリ・バニ・オデさん(37)と妻のワエド・バニ・オデさん(35)は息子4人を車に乗せ、ナブルスから自宅へ戻る途中だった。生き残った2人の男児のうちのひとり、ハレド・バニ・オデさん(11)によると、このときに銃撃を受けた。
ハレドさんは病院で取材したパレスチナ人記者に「突然、銃弾が飛んできた。どこから撃たれたのか分からなかった」と語った。 ハレドさんは「父はシャハーダ(死に直面した際にイスラム教徒が唱える信仰告白)を口にし、指を立てた。母は悲鳴を上げた後、静かになった」と話した。
銃撃後の映像には、道路上に散乱した弾丸や、血痕とみられるものが映っている。 ハレドさんは「弟のムハンマドをひっくり返そうとしたが、できなかった。もう残っているのは私と兄弟のムスタファだけだ」と付け加えた。
銃撃では、5歳のムハンマドさんに加え、7歳のオスマンさんも死亡した。 イスラエル軍はCNNに対し、「この件の状況については関係当局が調査している」と述べた。
イスラエル軍は声明で「1台の車両が部隊に向かって加速した。部隊は脅威を感じ、発砲で応じた。その結果、車内にいたパレスチナ人4人が死亡した」と明らかにした。車両の実際の動きを特定するのに役立つ可能性のある監視カメラ映像はまだ公開されておらず、イスラエル軍は映像を提供していない。
パレスチナ赤新月社がCNNに語ったところによると、パレスチナ人の救急隊員らは現場に入って医療措置を施すことも阻まれた。1時間後、地元病院の医療従事者が、この家族のうち死亡した4人を受け入れたという。
イスラエルは2023年以降、占領下のヨルダン川西岸で軍事活動を大幅に強化している。ネタニヤフ首相率いる右派政権は、ユダヤ人入植地の拡大と、ヨルダン川西岸におけるイスラエルの支配強化を進めている。ヨルダン川西岸でのイスラエルの入植活動は、国際法上は違法とされている。
同時に、イスラエル人入植者によるパレスチナ人やその財産への攻撃も激化している。イスラエル当局はパレスチナ人の移動を定期的に厳しく取り締まっている。イスラエルの人権団体ベツェレムは、イスラエルが「イランとの戦争を隠れみのにして」、ヨルダン川西岸の「民族浄化」と同団体が呼ぶ動きをさらに加速させていると非難している。【3月16日 CNN】
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上記記事にもあるように、ユダヤ人入植地の拡大、ヨルダン川西岸におけるイスラエルの支配強化が進むなかで、ヨルダン川西岸地区で1年間で3万6000人以上のパレスチナ人が避難を強いられているとして、国連は「民族浄化」の懸念を表明しています。
また、イスラエル人入植者によるパレスチナ人への暴力も大幅に増加しており、イスラエル軍はこうした多くの暴力を効果的に取り締まっておらず、黙認、あるいは手助けしていると言われています。
****1年で3.6万人強制移動、西岸でイスラエルの入植地急拡大 国連****
国連は17日、ヨルダン川西岸地区におけるイスラエルの急激な入植地拡大を直ちに停止するよう求め、1年間で3万6000人以上のパレスチナ人が避難を強いられたとして「民族浄化」の懸念を表明した。
2025年10月31日までの12か月間を対象とした国連人権事務所の最新報告書は、西岸での不法な入植地の加速度的な拡大と併合が「前例のない」規模で人々の立ち退きを引き起こしていると警告した。
報告書は「占領下の西岸地区で3万6000人以上のパレスチナ人が移動を強いられている。これは前例のない規模で行われているパレスチナ人の集団追放で、国際人道法で禁止されている不法な移送に相当する」と指摘。
また、ガザ地区での広範な避難と並び、「西岸全域での大規模な強制移送を目的とするイスラエルの政策を示唆しており、恒久的な追放を狙った民族浄化の懸念を抱かせるものだ」と断じた。
報告書によると、イスラエル当局は占領下の東エルサレムで3万6973戸、西岸地区のその他の地域で約2万7200戸の入植者向け住宅建設を推進、または承認した。また、この12か月間に「84件という前例のない数の入植拠点が西岸地区に設置され、総数は300件を超えた」としている。
西岸地区には約300万人のパレスチナ人が暮らしているほか、国際法で不法とされるイスラエル人入植者が50万人以上いる。
パレスチナ保健省の統計に基づくAFPの集計によると、2023年10月のガザ戦争開始以降、西岸地区ではイスラエル軍や入植者によって少なくとも1045人のパレスチナ人が殺害された。一方、イスラエル側の発表によると、同時期、兵士や民間人を含む45人のイスラエル人が死亡した。
国連は調査期間中、死傷者や物的損害をもたらした入植者による暴力行為を1732件記録した。前年の1400件から大幅増となった。
報告書は「入植者による暴力は、組織的かつ戦略的で、ほとんど阻止されることなく継続しており、イスラエル当局が中心的な役割を果たしている」と指摘している。
国連のボルカー・ターク人権高等弁務官はイスラエルに対し、「即座に入植地の設置と拡大を完全に停止」し、「すべての入植者を撤退させ、パレスチナ領土の占領を終わらせる」ことを求めた。 【3月17日 AFP】
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【ようやく開始したハマスと「平和評議会」の交渉 ハマスに武装解除に関する提案】
ガザ地区の交渉については、ようやくトランプ米大統領が主導するパレスチナ自治区ガザの和平計画を担う「平和評議会」とハマスの会談が始まっています。
****イラン戦争でガザ停戦にも暗雲、「平和評議会」とハマスが会談****
トランプ米大統領が主導するパレスチナ自治区ガザの和平計画を担う「平和評議会」の代表団が先週末、イスラム組織ハマスの代表とカイロで会談したと、関係筋3人が明らかにした。
米国とイスラエルによるイラン空爆開始以降、ガザでの停戦を巡っても緊張が高まっている。 会談開催が確認されたのはイラン戦争開始後では初めて。
評議会はトランプ氏が自ら議長を務める新たな国際機関と位置付けられ、ガザ復興や治安の監督などを任務としている。
イスラエルは会談後の15日、ガザとエジプトを結ぶラファ検問所を近く再開すると発表した。この検問所はイラン空爆開始以降、閉鎖されていた。関係筋の1人は、イスラエルの発表はハマスと評議会の会談の直接的な成果だと考えていると述べた。
関係筋によると、ハマス代表は評議会に対し、イラン戦争中にイスラエルが新たに課したガザへの規制が続くなら、停戦に基づくこれまでの合意事項を撤回する可能性があると警告した。
イスラエルは2月28日の開戦後、安全上の理由からガザとの境界を封鎖。その後、限定的に一般物資や支援物資の搬入を再開したが、ガザ南端のラファにある検問所は閉鎖したままだった。 今週にも会談が予定されているという。【3月17日 ロイター】
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****ハマス武装解除に半年超 ガザ評議会提案と報道****
イスラエル紙ハーレツは20日、トランプ米政権が主導するパレスチナ自治区ガザの暫定統治機関「平和評議会」がイスラム組織ハマスに対し、武装解除に関する提案を示したと報じた。
段階的に重火器と小火器の放棄を進め、完了まで半年以上の猶予を与える内容。ハマスは近く回答する予定だとしているが、提案に応じるかどうかは不透明だ。
提案では、まず重火器の撤去を始め、カラシニコフ銃など小火器に進む。小火器の放棄は南から北に向かって実施し、武器の放棄に同意したハマスのメンバーには安全が保証されるという。
武装解除の「完了」が宣言された地域にはパレスチナ人で組織された警察が配備される。【3月21日 共同】
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ハマスが本気で武装解除に応じるとは信じ難いものがあります。イスラエルに対する武装抵抗がハマスの存在理由ですから、武装解除は自己否定になります・・・・というのが従来の考え。 本気で政治勢力として再出発する考えになったのでしょうか?
ネパールの毛沢東派やコロンビアの最大武装組織FARC(コロンビア革命軍)のように武装解除に応じた事例はあります。
【ハマスが、イランに対し近隣諸国への攻撃をやめるよう要請】
その武闘派であり、イランとの関係が深いハマスが、イランに対し近隣諸国への攻撃をやめるよう要請したというのは意外な感じも。
****ハマス、イランに「近隣諸国への攻撃」やめるよう要請****
パレスチナのイスラム組織ハマスは14日、イランに対し近隣諸国への攻撃をやめるよう要請するとともに、イランが自衛権に基づいてイスラエルと米国に反撃することができる点を強調した。
ハマスは声明で、「イラン・イスラム共和国は国際規範と国際法に基づき、あらゆる手段を用いてこの侵略に反撃する権利を有することを再確認するとともに、イランの同胞たちに対し、近隣諸国への攻撃をやめるよう求める」と述べた。
パレスチナ自治区ガザ地区でイスラエルと2年間にわたって激戦を繰り広げたハマスは国際社会に対し、現在進行中の紛争を直ちに「終結させる」よう求めた。
ハマスは以前、イスラエルと米国による攻撃初日にイランの最高指導者アリ・ハメネイ師が殺害されたことを「凶悪な犯罪」と非難し、ハメネイ師が長年にわたりハマスを支援してきたことを公然と認めた。
ハマスはハメネイ師が殺害された直後の声明で、「パレスチナの住民、大義、そして抵抗運動に対し、あらゆる政治的、外交的、軍事的支援を提供してくれた」と述べた。 【3月14日 AFP】AFPBB News
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ハマスは宗教的にはスンニ派で、シーア派イランとは異なります。イランとの関係はレバノン・ヒズボラなどのように“子飼い”というほど緊密ではありませんが、イスラエルと対抗するなかで近年は上記記事にもあるようにイラン、特にイラン国内強硬派のイラン革命防衛隊(IRGC)と密接な関係を築き、イランの代理勢力のひとつと見られています。
****ハマスがイランに対し近隣諸国への攻撃をやめるよう要請した背景****
今回の報道は一見すると意外ですが、背景を整理するといくつかの要因が考えられます。
まず前提として、ハマスとイラン革命防衛隊(IRGC)は長年協力関係にありますが、完全に同じ利害ではありません。
1 ハマスは「パレスチナ戦争の拡大」を望んでいない可能性
現在の戦争の中心はガザ地区・イスラエルです。
もしイランがホルムズ海峡周辺・サウジアラビア・アラブ首長国連邦などを攻撃すると、紛争は「パレスチナ問題」 → 「中東全面戦争」に変わります。
そうなると、世界の関心がガザから離れる・アラブ世論が分裂するという問題が出ます。
ハマスとしては「パレスチナ戦争」を中心に保ちたい可能性があります。
2 湾岸諸国を敵に回すのはハマスにも不利
ハマスはイランの支援を受けていますが、同時にカタール・トルコなどとも関係があります。
もしイランが湾岸諸国を攻撃すると、アラブ諸国が反イランで団結し、ハマスも「イラン陣営」と見られる可能性があります。
つまり、外交的な孤立を避けたいという事情です。
3 ハマス内部の現実路線
ハマス内部には大きく軍事強硬派(ガザの軍事部門)、政治部門(国外指導部)の二つがあります。
政治部門は捕虜交渉、停戦交渉を考える必要があります。
イランが戦争を拡大すると交渉環境が壊れるため、抑制を求める可能性があります。
4 イランに対する「公開メッセージ」の意味
もう一つ重要なのは、これは実際の圧力というより政治メッセージの可能性です。
つまり「ハマスはイランの代理ではない」「パレスチナ運動は独立している」というイメージを国際社会に示す狙いです。
【ChatGPT】
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