lonelylika’s diary

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ

アメリカ  政策強行で高まる政権と司法の軋轢 最高裁長官も異例の批判 揺らぐ三権分立


(【3月20日 共同】)

【敵性外国人法による強制送還をめぐる政権と司法の対立】
アメリカのトランプ政権による敵性外国人法を使った不法移民の強制送還について、連邦地裁の判事が差し止める仮処分を出したことをめぐり、ホワイトハウスと司法で非難の応酬が続いています。

****トランプ政権 「すでにアメリカを出発」 裁判所の国外追放差し止め命令に応じず 「大統領権限の範囲内」****
アメリカのトランプ政権は、戦時下の法律を使った犯罪組織メンバーの国外追放をめぐり裁判所の差し止め命令に応じなかったことについて、「すでに飛行機はアメリカを出発していた」と主張しました。

ホワイトハウス レビット報道官
「トランプ政権は敵性外国人法で大統領に与えられている憲法上の権限の範囲内で行動しました」

ホワイトハウスのレビット報道官は17日、戦時下の法律・敵性外国人法を適用してベネズエラの犯罪組織のメンバー数百人を国外追放したことについて、「大統領に与えらえた権限の範囲内だ」と主張しました。

裁判所がメンバーを乗せた飛行機をアメリカに戻すように命じたものの、応じなかったことについて問われると、「裁判官の文書での命令の前に飛行機はアメリカを出発した」と説明。「法廷で政府の正当性を主張する」としています。

また、レビット報道官は、追放された犯罪組織メンバーの収監を受け入れたエルサルバドル政府に対して、600万ドル=およそ9億円を費用として支払ったことを明らかにした上で、「アメリカでの収監にかかる国民負担に比べて、ごくわずかなものだ」と話しました。【3月18日 TBS NEWS DIG】
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1798年に制定された敵性外国人法は、戦時下の大統領に敵国の市民を拘束・送還する権限を与えるもので、これまでに3回発動されています。

1812年米英戦争、第1次大戦、そして最も有名なのは第2次大戦中の1942年〜46年にかけてで、約12万人の日系人がこの法律の下で強制収容された事案です。

****トランプ氏、敵性外国人法を活用 不法移民の強制送還加速****
トランプ米大統領は15日、ベネズエラから不法に入国した犯罪組織メンバーの送還を加速させるため、敵対国の市民を拘束、送還する権限を大統領に与える敵性外国人法を活用する布告を発表した。1798年制定の戦時法で、第2次大戦中にルーズベルト政権が日系米国人を敵視して強制収容した際に使われた。

布告に先立ち、ワシントンの連邦地裁はベネズエラ移民の強制送還を差し止める仮処分を出した。人権団体が、戦時下ではない現在での同法活用は違法だと事前に訴えていた。トランプ氏は犯罪組織が「米国に侵略し、非正規戦を展開している」と主張している。

トランプ氏は2期目就任演説で、外国人の麻薬カルテルを排除するため、敵性外国人法の発動を宣言していた。政権は人身売買や麻薬密輸で知られるベネズエラの犯罪組織トレン・デ・アラグアのメンバーで、14歳以上の不法移民を「敵性外国人」とみなすとしている。

日米は1941年12月の真珠湾攻撃を機に開戦。日系人は敵性外国人として扱われ、家を追われて各地の強制収容所に送られた。【3月16日 共同】
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更に、今後についても19日の会見で不法移民の大量強制送還を続けるとも。

****“強制送還”めぐり ホワイトハウスと司法で非難の応酬続く 米****
(中略)レビット報道官は19日の会見で、大統領には敵性外国人法に基づき強制送還を行う権限があると主張し、法廷で争う考えを強調しました。

レビット報道官「党派的な活動家として行動している判事がいる。彼らは大統領の政策に指図しようとしている。彼らは明らかに政権の計画を遅らせようとしていて、容認出来ない」

レビット氏は現在、国外追放のためにエルサルバドルに向かう航空機の具体的な運航予定はないとしつつも、引き続き不法移民の大量強制送還を続けると述べました。【3月20日 日テレNEWS】
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トランプ政権は、政権に裁判所判断を無視したかどうかを説明するよう命じた判事の解任を求めています。

****トランプ米政権、ベネズエラ人国外追放巡り地裁判事の解任要求****
米司法省は17日、ベネズエラ人数百人の国外追放を巡り、トランプ政権に裁判所判断を無視したかどうかを説明するよう命じた判事の解任を求めた。

トランプ政権は週末、地裁の強制送還差し止め判断にもかかわらず、ベネズエラの犯罪組織の200人超をエルサルバドルの収容施設に送還した。

首都ワシントンの連邦地裁は15日の審理で、トランプ大統領ベネズエラから不法に入国した犯罪組織メンバーの送還加速を目的に布告した「敵性外国人法」の活用に基づく強制送還を14日間差し止める仮処分を下した。

地裁のジェームズ・ボアズバーグ判事は、ベネズエラ人をエルサルバドルに移送した航空機が、地裁判断後に離陸したかどうかなどの詳細を提出するよう政府に指示していた。

トランプ政権は17日の審理の直前に提出した裁判所文書で、移民を乗せた航空機に引き返すよう求めた判事の口頭での指示は書面命令ではないため「執行不可能」と主張した。

また、判事がその後に出した移民当局による移民の強制送還を禁じる書面命令について、命令が出された時点で航空機はすでに出発していたため違反には当たらないと述べた。【3月18日 ロイター】
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また、トランプ大統領は18日、SNSへの投稿で、意に沿わない判事を「狂った極左」などと呼び「弾劾されるべきだ」と訴えています。

“トランプ氏は自身のソーシャルメディアに、強制送還を14日間差し止める仮処分を下したワシントン連邦地裁のボアズバーグ判事について、「私は有権者が望んだことをしているだけだ。私に出廷を強いる多くのいかさま(crooked)判事と同様、この判事は弾劾されるべきだ」と投稿した。”【3月19日 ロイター】

こうした司法判断無視、逆に判事の解任を求めるという政権・大統領の動きに、最高裁長官が異例の大統領批判を。

****最高裁長官、異例の大統領批判=判事への弾劾要求をけん制―米****
ロバーツ米連邦最高裁長官は18日、声明を発表し「弾劾が司法判断を巡る意見の相違への適切な反応でないことは、200年超にわたって確立されてきた」と述べた。個別の事件について言及は避けたが、トランプ大統領が同日、特定の判事の弾劾を要求したことを受け、司法批判のエスカレートをけん制したとみられる。米メディアが報じた。

最高裁長官が政治に関わる声明を出すのは極めて異例。トランプ氏は18日、SNSへの投稿で、意に沿わない判事を「狂った極左」などと呼び「弾劾されるべきだ」と訴えていた。名指しはしていないものの、トランプ氏は戦時法による移民送還を差し止めたワシントン連邦地裁のボースバーグ判事と対立しており、同氏を指すとみられる。

一部共和党議員はトランプ氏の投稿後、ボースバーグ氏の弾劾決議案を提出。実業家のイーロン・マスク氏も、政権が進める公務員の大規模解雇や補助金凍結を阻止した判事の弾劾を求めていた。こうした判事が脅迫を受けた事例もあり、司法の独立が脅かされる懸念が高まっている。

ロバーツ氏はブッシュ(子)大統領により最高裁長官に指名された穏健保守派。昨年末の報告書では、政治家が司法判断を公然と無視する風潮を「断固拒絶する」と述べている。【3月19日 時事】 
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トランプ大統領は「私は有権者が望んだことをしているだけだ」という主張で、民主主義の根幹である三権分立を揺るがす言動を繰り返しています。いつからアメリカ大統領は独裁的な国王になったのか?

【差し止め訴訟が全米で129件 今後も高まる恐れの政権と司法の軋轢】
こうした政権へのチェックを無視する姿勢は一人トランプ大統領だけでなく、政権に共通した意識にもなっています。

****不利な判決出す裁判所に「最高裁が対応を」、米政権 司法攻撃強める****
(中略)
政権内では、政策執行に立ちはだかる裁判所への不満が渦巻く。政府効率化省を率いる実業家イーロン・マスク氏は、トランスジェンダーの軍役を禁じる大統領令の一時差し止め判決を「司法によるクーデターだ」と批判し、議会に判事の弾劾を要求した。

判事を解任するには、判事弾劾訴追案を下院で単純多数決での可決、上院では3分の2以上の賛成を必要とする。

ジョンソン下院議長(共和党)の報道官は「司法委員会が憲法の下でこの緊急事態に対処するために利用可能な全ての選択肢を検討するのに協力できることを(ジョンソン氏は)楽しみにしている」と述べた。

ジョーダン下院司法委員長の報道官は「あらゆる選択肢が検討されている」と述べた。【3月20日 ロイター】
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“上院では3分の2以上の賛成”は実際には無理でしょうが・・・政権の強圧的姿勢は司法への牽制にはなります。

“公約に掲げる不法移民対策や政府支出削減を強行する中、反発して差し止めを求める訴訟などは約130件に上る”とのことで、今後政権と司法の軋轢が更に強まりそうです。

****公約強行へ司法と全面対決 トランプ政権発足2カ月****
第2次トランプ米政権の発足から20日で2カ月となった。公約に掲げる不法移民対策や政府支出削減を強行する中、反発して差し止めを求める訴訟などは約130件に上る。

トランプ大統領は待ったをかける判事を公然と罵倒、全面対決する姿勢を崩さない。司法を軽視する姿勢に、権力監視に不可欠な三権分立が損なわれると危惧する声が広がっている。

「狂った過激な左派の裁判官だ」。トランプ氏は18日、交流サイトで、ベネズエラ犯罪組織メンバーに対する国外追放措置を差し止めたワシントンの連邦地裁判事をののしった。

対外援助事業の凍結、政府機関の解体、トランスジェンダーの医療措置の制限―。トランプ氏が大統領令などを連発して進める政策に対し、訴訟も頻発している。司法専門誌の集計では、全米で129件が起こされ、ニューヨーク・タイムズ紙によると、少なくとも46件で差し止めの仮処分が出ている。

国外追放のケースでは、トランプ氏が15日、戦時法である敵性外国人法を活用する布告を出した。【3月19日 共同】
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【司法だけでなく、規制当局の独立性も危機に】
政権の意に沿わない機能を潰してしまおうとする動きは司法に対してだけではありません。
日本の公正取引委員会と似た役割を果たしている連邦取引委員会(FTC)に対しても・・・。

****トランプ氏、FTC民主党系2委員を解任 規制当局の独立性に試練****
米の民主党系委員2人が18日、トランプ大統領によって違法に解任されたと述べた。 ホワイトハウス当局者は解任を認めたが、それ以上のコメントは控えた。

解任を明らかにしたのは、ともに民主党系委員だったアルバロ・ベドヤ氏とレベッカ・ケリー・スローター氏。

ベドヤ氏はXに「これは明白な腐敗だ」と投稿。スローター氏は声明で「(トランプ)大統領は私をFTC委員から違法に解任し、法律の文言と最高裁の明確な先例を無視した」と述べた。

トランプ氏は既に全米労働関係委員会(NLRB)など他の独立機関の委員を解任し、訴訟に発展している。

最高裁は1935年、FTC委員は職務怠慢など正当な理由がある場合のみ解任できるとする法律を支持する判決を下した。この判決により、超党派の複数委員で構成する多数の独立機関はホワイトハウスによる直接的な統制から守られている。

しかし、トランプ氏は先月18日、独立機関に対するホワイトハウスの統制を強める大統領令に署名した。

FTCのファーガソン委員長ともう1人の共和党系委員メリッサ・ホリオーク氏は、ホワイトハウスに政府機関当局者解任の権限があるというトランプ政権の法的立場を支持するとしている。【3月19日 ロイター】
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金融政策においては、日本でも「日銀の独立性」があるものの、実際には政権の意向が強く反映されることが多いと思われます。 一方、アメリカでは中央銀行に相当するFRB連邦準備制度理事会は強い独立性を有し、国民からの信頼も高いものとなっています。ときには政権への信頼以上に。

トランプ大統領FRBへの要請を強めています。

****FRBは利下げをする方がいい」トランプ大統領が改めて考え示す****
アメリカのトランプ大統領は、中央銀行にあたるFRB連邦準備制度理事会政策金利を引き下げるべきだとの考えを改めて示しました。

19日、SNSに「FRBは利下げをする方がずっといい。アメリカの関税が経済に浸透しはじめるのだから。正しいことをしよう」と書き込みました。

この日、FRB政策金利を決める会合を開き、2会合連続で利下げを見送っていました。

トランプ氏は景気の冷え込みにつながる高い金利を嫌っていて、FRBに対して繰り返し、利下げを求めています。【3月20日 TBS NEWS DIG】
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FRBはトランプ政権の高関税政策の影響で物価が上昇する一方、景気は悪化するリスクに警戒感を持っています。

今は上記のような意見表明のレベルですが、そのうちFRBの独立性を損なうような動きも出てくのかも。中央銀行が政権の意を受けて金融政策を行うようになったら、インフレの危険が非常に高まります。

三権分立や規制当局の独立性の在り様は国によって異なりますが、大統領権限で全てが動くようになったら民主主義システムは危ういものになります。