lonelylika’s diary

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ

ロシアへの追加制裁に関する議論 欧州の提起するロシア産原油価格上限の引き下げには米は反対

(ロシアの「影の船団」とみられるタンカーの付近を航行するエストニア軍の艦艇【5月20日 CNN】)

 

ロシアが一部の原油を制裁逃れの形で輸送している「シャドウ・フリート(影の船団)」への規制強化とは言っても実効性を担保するには難しい問題も。

 

エストニア海軍は15日までに、英国が制裁を科したロシア行きの石油タンカー「ジャガー」について、エストニア首都タリン沖で旗を掲げずに航行する違法行為のため13日に拿捕しようと試みたが、同船が協力を拒否したため臨検できず、代わりにロシア海域まで護送したと明らかにした。」【5月15日 ロイター】

 

「ロシアが状況を確認するために戦闘機を派遣し、同機は1分近く北大西洋条約機構NATO)領空を侵犯した」(エストニアはのツァクナ外相 15日)【同上】

 

戦闘機まで繰り出すロシア側への不用意な対応は突発的な“衝突”に至る危険性もあります)


【一見堅調そうに見えるロシア経済、脆弱化の一途】

ウクライナでの戦局では優位にたっているロシアですが(最近は、ひと頃の進撃ぺーズは影をひそめて膠着気味ですが)、ロシアの経済状況は表向きの「好調さ」にもかかわらず問題が大きいとも見られており、プーチン大統領も早期の戦争終結を望んでいるとも。

 

そのあたりがロシアを停戦交渉に呼び込むカギにもなります。

 

****ロシア経済は脆弱化の一途、スウェーデン研究所がEUに報告書****

ロシア経済は、戦時体制への切り替えや西側諸国の制裁によって足場が弱まり続けている――。スウェーデンストックホルム移行経済研究所(SITE)は13日、欧州連合(EU)財務相会合向けにまとめた報告書を公表し、こうした見解を示した。

報告書は、ロシア経済はまだ比較的安定しているものの、底堅く見えるのは表面上だけで、基調的な不均衡と構造的なもろさが拡大を続けていると分析。「戦争に伴う財政刺激が短期的に経済を浮揚させ続けている。しかし不透明な資金繰りや資源配分の歪み、財政バッファーの縮小が、長期的な(経済の)持続を不可能にしている」と述べた。

ロシアの国内総生産(GDP)は2023年が3.6%増、24年が4.3%増と、西側の制裁は効果がないかのように堅調だった。

ただ報告書提出者のトルビヨン・ベッカー氏は、ロシアのGDPの数値は信用できないと主張し、物価上昇率が実態より低めに公表され、実質GDPが過大に報告されていると指摘した。

ベッカー氏は、ロシアの財政赤字も公式統計の最大2倍に上るはずだと見積もっている。

EU欧州委員会のドムブロフスキス委員(経済担当)は、欧州委としてSITEの報告書の意見に賛同すると述べた。

ドムブロフスキス氏は「この分析はロシアの統計に信頼性がなく、ロシア経済は公式統計が示すほど良好ではないことを明らかにしている」と語った。【5月14日 ロイター】

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問題点は、一時的に「戦時経済」の押し上げ効果で問題が糊塗されていること、統計数値自体に信頼できない点があること、カネ・モノ・人材などの資源配分が歪んでしまい長期的な「歪み」が経済に生じていることです。

 

****ロシア経済をどのように評価すべきか?****

ロシア経済の「堅調なGDP成長」に対しては、短期的には“見かけ上”の成長があるが、中長期的には深刻な問題を抱えているというのが、多くのエコノミストや国際機関の見解です。

 

【1】ロシアのGDPがプラス成長なのはなぜ?

2023年:+3.6%  2024年(予測):+4.3%  これは主に以下の「戦時経済による一時的な刺激」によるものです

 

国防支出が急増(GDPの6〜7%とされる)

軍需産業がフル稼働し、雇用と生産を押し上げ

失業率は低水準(公式統計で3%台)

賃金が上昇し、消費支出も増加傾向

つまり、「戦争特需」によるケインズ型の景気刺激です。
ただし、これは持続可能ではないというのが大方の見解です。

 

【2】その成長は“本当”か?統計の信頼性

多くの専門家が、ロシアの公式統計について以下の懸念を抱いています:

GDP・物価・輸出入統計が政治的に操作されている可能性 

特に「軍事支出」の名目で予算や成長を誇張する構造

「軍需生産」が増えても、それが生活水準の向上を意味するとは限らない

 

IMFエコノミストの一部は、ロシアの成長率は過大評価されている可能性があると分析しています。

 

【3】長期的にみたロシア経済の深刻な歪み

財政の持続性  軍事支出の増大で「財政バッファー(国家基金)」が急減中。数年以内に枯渇する懸念あり。

 

資源配分の歪み  優先されるのは軍需産業。民間投資・生産性向上が停滞し、構造改革が進まず。

 

人材流出  動員や制裁逃れで若年労働者・IT人材が国外流出。人的資本の質が劣化。

 

物資不足  欧米からの輸入停止で、部品・技術・機械の供給に制限。代替調達先(中国など)も高コスト・低品質。

 

国際的孤立  投資・貿易・金融ネットワークからの締め出し。長期的な競争力低下。

 

【結論】もっとも妥当な見方は?

「現在のロシア経済の成長は戦争による一時的な刺激であって、構造的には持続不可能で脆弱である」

この見方がもっとも現実的かつ多くの専門家に共有されているスタンスです。
短期的な数字の回復に惑わされず、資源配分・人材・技術・制度の持続可能性という観点で見る必要があります。【ChatGPT】

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アメリカ  国内ガソリン価格・物価への悪影響から、欧州の提起するロシア産原油価格上限の引き下げには反対】

こうした状況で、ロシアを停戦交渉に連れ出すべく、EUなどはロシア産原油に設定している1バレル=60ドルの価格上限の引き下げで圧力を強めることを提案していますが、アメリカは反対のようです。

 

****G7のロシア産原油価格上限、米は引き下げ「納得せず」=欧州当局者****

主要7カ国(G7)がロシア産原油に設定している1バレル=60ドルの価格上限について、欧州連合(EU)などがロシアに対する圧力を強めるために引き下げを提案しているのに対し、米国は引き下げに納得していないことが22日、欧州当局者の話で分かった。

EUは価格上限を1バレル=50ドルに引き下げることを提案。ウクライナはさらに低い30ドルに引き下げることを求めている。

ただ、欧州当局者によると、カナダのバンフで開かれている主要7カ国(G7財務相中央銀行総裁会議に出席している米財務省のチームは、原油価格はすでに下落しており、ロシアは打撃を受けているとの見解を示している。ただ、米国は引き下げ案を排除しておらず、協議は継続されるという。

この件に関して米財務省からコメントは得られていない【5月23日 ロイター】

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アメリカがロシア産原油価格上限の更なる引き下げ(ロシアへの圧力強化)に反対しているのは、価格上限引き下げが結果的にロシアの市場からの撤退、原油価格高騰、アメリカ国内のガソリン価格高騰を招くとの判断です。

 

「価格上限の引き下げ(例:60ドル → 50ドル)→→ロシアが「その価格では売れない」と判断し、正規市場への供給を減らす/拒否する→→世界の原油供給量が減少(特に欧州や一部アジア向け)→→供給不足→→原油価格の上昇(世界市場全体に波及)→→ガソリン価格や電力コストの上昇 → 世界的なインフレ圧力」

 

****アメリカがロシア産原油価格上限の更なる引き下げ(ロシアへの圧力強化)に反対している理由****

  1. 世界的な原油価格の上昇リスク

米国は、価格上限の引き下げが世界の原油価格全体を押し上げる懸念を持っています。

特に、インフレが依然として懸念材料である中、エネルギー価格の上昇は米国内の経済に悪影響を与える可能性があります。

  1. 価格上限の「実効性」に疑問

米国は現在の価格上限(60ドル)でもロシア産原油の取引が抑制されていると見ており、現行ルールがすでに機能しているという立場です。

 

ロシアは一部の原油を制裁逃れの「シャドウ・フリート(影の船団)」で輸出していますが、その対策は価格ではなく取り締まりの強化が有効と考えられている可能性があります。

  1. 新興国との関係悪化の懸念

G7が価格上限をさらに下げると、インドや中国などの非G7諸国との関係が悪化する懸念があります。

これらの国はロシアから安価な原油を輸入しており、上限が厳しくなると、対ロ制裁に非協力的になる恐れがあります。

  1. 対ロ圧力と経済のバランス

米国はロシアへの制裁強化に賛成ではあるものの、エネルギー市場の安定とのバランスを重視していると考えられます。

単に制裁を強めるだけではなく、副作用(市場混乱)を回避しながら圧力を加える方針を取っています。

総合的に言えば:

米国は、価格上限の引き下げによる副作用(インフレ加速、供給混乱、外交摩擦など)を懸念しており、それよりも既存制裁の執行強化や技術的取り締まりの方が実効的だと判断しているとみられます。【ChatGPT】

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とにかく米政権にとって最重要課題は「米国内ガソリン価格」です。 「車社会」アメリカのどの政権もガソリン価格上昇に伴う国民の不満には耐えられません。 

 

従って、アメリカの対応が大きく影響する世界の政治・経済は、高邁な理想・理念や地政学的事情以上に、「米国内ガソリン価格を上げない」という制約の中で動くのが現実です。

 

アメリカの不安・懸念は決して「杞憂」ではなく、これまでもロシア産原油への規制強化の際に実際に見られた動きです。

 

****ロシアの供給減少が過去にどのような価格変動をもたらしたか、過去の事例****

ロシアの原油供給減少が過去に世界の原油価格に与えた影響について、主に以下の2つの時期を中心に説明します。

【事例①】2022年:ウクライナ侵攻直後のロシア制裁発動時

  • 背景:

2022年2月、ロシアがウクライナに侵攻。

西側諸国(G7・EU)は、ロシア産原油への禁輸・制裁を段階的に発動。

ロシアからの供給減少を警戒し、市場が大きく反応。

 

ブレント原油は、2022年初頭:約85ドル → 3月上旬に一時130ドル超まで急騰。

これは、2008年のリーマン・ショック前以来の高値水準。

 

  • 結果:

供給減の懸念が先行して価格が跳ね上がり、インフレが加速。

米国ではガソリン価格が全米平均で1ガロン5ドル超を記録し、政権に強いプレッシャー。

 

【事例②】2022年12月:G7による「価格上限制度(price cap)」の導入

  • 背景:

G7とEUが、ロシア産原油に60ドルの価格上限を設定。

同時に、上限を超える価格で取引する原油には、欧米の保険・輸送サービスを提供しない制裁。

 

  • 市場の反応:

当初、ロシアが報復として供給を削減するとの観測で再び価格が上昇傾向に。

しかし、ロシアは輸出先をインドや中国に転換し、供給自体は続いたため、急騰には至らず。

 

  • 結果:

市場はやや安定。ただしこれは、ロシアが新たな輸出ルート(シャドウ・フリート)を確保したため。

価格上限の「実効性」には議論があるが、一定の収入制限効果は見られた。【ChatGPT】

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【制裁逃れの「シャドウ・フリート(影の船団)」での輸出への規制強化】

上記の懸念に加えて、アメリカは現在の価格上限(60ドル)でもロシア産原油の取引が抑制されと考えており、もし圧力を強化するなら、ロシアが制裁逃れの「シャドウ・フリート(影の船団)」で輸出することへの取り締まりの強化が有効と判断しています。

 

制裁逃れの「シャドウ・フリート(影の船団)」での輸出への規制強化が必要なことは欧州も理解しており、その方向での動きもあります。

 

****英・EU、ロシアに停戦圧力 「影の船団」標的に追加制裁****

欧州連合(EU)と英国は20日、米国の参加を待たずに、ロシアに対する新たな制裁措置を発表した。ロシアが西欧諸国の制裁回避に使用する「影の船団」に属するとみられる石油タンカーのほか、制裁回避の支援が疑われる金融企業などを標的とする。

 

欧州はトランプ米政権に対ロシア制裁に参加するよう強く働きかけていたが、 EUと英国は 米国による 措置の発表を待たずに 今回の制裁を発表。

 

ブリュッセルで開かれたEU外相会合に出席したドイツのワーデフール外相は、「われわれはロシアに対し、前提条件なしの即時停戦を期待していると繰り返し明確に示してきた」とし、ロシアが停戦を受け入れないため、対応せざるを得ないと言及。米国もロシアが停戦に応じていないことを「容認しないよう期待している」と述べた。

 

ウクライナのゼレンスキー大統領は「制裁措置は重要だ。戦争の加害者に(痛みを)実感させるよう尽力する全ての人に感謝する」と対話アプリ「テレグラム」に投稿した。また、米国も加われば望ましいとし、「平和を近づけるプロセスに米国が関与し続けることが重要だ」と強調した。【5月21日 ロイター】

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ロシアの「影の船団」は約100隻ほどで、これらの船舶は通常、西側の正規組織による規制や保険を受けていない。また、老朽化した危険な船舶であることも。

 

また、ロシア産原油価格上限の更なる引き下げ、「シャドウ・フリート(影の船団)」への規制強化のほか・・・・

 

****EU、SWIFTから20行超のロシア銀行排除検討-新たな対ロ制裁で****

ブルームバーグ):欧州連合(EU)は、ウクライナ戦争終結に向け、ロシアへの圧力を強化するために新たな制裁パッケージを検討している。

 

この制裁案には、国際銀行間通信協会(SWIFT)の国際決済ネットワークから20行余りのロシアの銀行を排除することや、ロシア産原油の価格上限の引き下げ、天然ガスパイプライン「ノルドストリーム」の使用禁止が含まれている。

 

非公開協議であることを理由に匿名を条件に語った事情に詳しい関係者によると、新たな対ロ制裁を巡り、欧州委員会が加盟国と協議中で、実施時期などはまだ決定されていない。EUの制裁は全加盟国の支持が必要で、正式な提案と採択の前に内容が変更される可能性がある。

 

制裁パッケージの一環として、EUは20行余りの銀行に対する追加の取引禁止措置と、約25億ユーロ(約4000億円)相当の新たな貿易制限を検討している。ロシアの歳入をさらに削減し、兵器製造に必要な技術の入手を制限することが狙い。【5月24日 TBS CROSS DIG with Bloomberg

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【「彼に何かが起こった。彼は完全に狂ってしまった」】

こうしたロシアへの追加制裁の議論が行われている状況での、トランプ大統領プーチン批判。

 

****トランプ氏「プーチン氏に不満」、ウクライナへの大規模空爆受け 対ロ追加制裁を示唆****

トランプ米大統領は25日、週末にロシアがウクライナに対して行った空爆について強い不満を表明し、「プーチン大統領には満足していない」と述べた。 

 

ニュージャージー州モリスタウンの空港で取材に応じたトランプ氏は「彼に何が起きたのか分からない。多くの人々を殺している。それには納得できない」と語った。 

 

同日未明、ロシアはウクライナの都市に対して無人機とミサイル計367発による大規模攻撃を行った。これはウクライナ戦争開始以来最大規模の空爆であり、これにより少なくとも12人が死亡し、多数の負傷者が出ている。 

 

トランプ大統領は、ロシアとウクライナの双方に停戦合意を働きかけており、先週にはプーチン大統領と2時間以上の電話会談を行っていた。 

 

トランプ氏は今回の攻撃を受けて、ロシアに対する追加制裁の可能性にも言及した。 「これまではうまくやってきたが、今や彼は都市にロケットを撃ち込み、人々を殺している。それを私はまったく好ましく思っていない」と語った。【5月26日 ロイター】

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トランプ大統領は25日夜、自身のSNSに、「私はロシアのプーチン大統領と常に良い関係を築いてきたが、彼に何かが起こった。彼は完全に狂ってしまった」などと投稿しました”【5月26日 日テレNEWS】

 

「彼に何かが起こった?」とプーチン大統領をこれまで敬愛してきたトランプ大統領は訝っていますが、西側世界ではプーチン大統領の攻撃的・侵略的本質を示すもので不思議でも何でもない・・・という見方が大方でしょう。

 

いずれにしても、これで対ロシア制裁に腰が重いアメリカが動き出すのか?

単に、トランプ大統領はいつものようにその時の気分で言ってみただけ・・・なのか。