
(インド・ニューデリーで会談前に、記念撮影に応じる〈左から〉欧州理事会のアントニオ・コスタ議長、インドのナレンドラ・モディ首相、ウルズラ・フォンデアライエン欧州委員会委員長 【1月27日 時事】)
【インドGDP 日本をすでに抜いた? 3年以内に独も抜いて世界3位に?】
日本やアメリカにとってはインドとの関係は安全保障面での“対中国”という観点からの重要性がありますが、より基本的なところでは、人口14億人を擁する伸びしろも大きいインド巨大市場との関係は日米・欧州にとって重要性を増しています。
****インド、既に日本を抜いて世界4位の経済大国になったと主張****
インド政府が年末に公表した経済見通しによると、同国はGDP(国内総生産)で日本を抜いて世界4位の経済大国となった。当局は3年以内にドイツを追い抜いて世界3位となることを期待している。
しかし、公式な確認は2026年に発表されるGDPの確定値次第となる。国際通貨基金は、インドが日本を追い抜くのは来年だと予想している。
29日深夜に発表されたインド政府の経済説明資料には、「インドは世界で最も急速に成長している主要経済の一つであり、この勢いを維持する好位置につけている」「GDPが4兆1800億ドル(約653兆円)となったインドは、既に日本を抜いて世界4位の経済大国となっており、今後2年半から3年以内にドイツを抜いて世界第3位に躍り出ると見込まれている。2030年にはGDPが7兆3000億ドル(約1140兆円)に達すると予測されている。」と記されている。
IMFの推計によると、インドのGDPは2026年に4兆5100億ドル(約704兆円)となり、日本の4兆4600億ドル(約697兆円)を上回る見通し。
人口規模で見ると、インドは2023年に隣国中国を抜いて世界で最も人口の多い国となった。
世界銀行の最新データによると、2024年のインドの一人当たりGDPは2694ドル(約42万円)で、日本の3万2487ドル(約507万円)の12分の1、ドイツの5万6103ドル(約876万円)の20分の1に相当する。
政府の統計によると、インドの人口14億人のうち4分の1以上が10~26歳となっており、政府はすでに何百万人もの大卒の若者に高給の仕事を用意するのに苦労している。
IMFのデータによると、インドのGDPは2022年に旧宗主国である英国を上回り、世界5位となった。【2025年12月31日 AFP】
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欧州は以前からインドとの経済関係強化を目指して交渉してきましたが、しばらく中断していました。しかし、中国からの安値攻勢への警戒、そして最近のアメリカ・トランプ政権がもたらす「リスク」が追い風となって交渉が加速、今年1月にEUとインドの自由貿易協定(FTA)交渉が妥結しました。
“FTAは、特定の国・地域の間で、物品の関税やサービス貿易の障壁等を削減・撤廃することを目的とする協定です。関税や非関税障壁をなくすことで締結国・地域の間で自由な貿易を実現し、貿易や投資の拡大を目指すものです。FTA相手国と取引のある企業にとっては、無税で輸出入ができるようになり、消費者にとって相手国産の製品や食品などが安く手に入るようになるなどのメリットが得られます。”【わらしべ瓦版】
****EUとインドのFTA妥結 世界のGDP2割占める巨大経済圏誕生へ****
欧州連合(EU)とインドの自由貿易協定(FTA)交渉が妥結した。世界の国内総生産(GDP)の約2割を占める巨大経済圏が誕生する。
20年近く続いた交渉がまとまった背景には、高関税措置を乱発するトランプ政権下の米国や、安値攻勢で域内産業に打撃を与えかねない中国への過度な依存を避け、貿易関係を多角化したい両者の思惑が一致したことがある。
「史上最大級の通商協定をまとめ上げた」。EUの行政執行機関トップのフォンデアライエン欧州委員長はニューデリーで27日、こう誇った。AP通信によると、EUとインドの貿易額は年1365億ドル(約21兆円)規模。双方は、2030年に2000億ドルまで伸ばしたい考えで、年内の協定発効を目指すという。
協定が発効すれば、EUからインドへ輸出する製品の96・6%で関税が撤廃されるか引き下げられる。特に自動車への関税は年間25万台を上限に110%から10%へと段階的に引き下げられ、中国市場で不振に陥る欧州自動車メーカーには追い風だ。ワインやオリーブオイルなど農業食品の関税も幅広く引き下げられて門戸が開かれる。
両者の交渉は07年から始まったが、13年に規制などを巡る溝が埋まらず中断した。だが、EUが安値攻勢を仕掛ける中国からの輸入依存に警戒を強める中で、改めてインドの存在が注目されて22年に交渉は正式に再開された。
さらに、25年1月にトランプ氏が大統領に返り咲くと、米国はEUを含む世界各国・地域に高関税措置を発動した。昨夏に両者は関税交渉で基本合意したものの、トランプ氏は今年1月に一時、新たな追加関税を欧州8カ国にちらつかせてデンマーク自治領グリーンランドの領有容認を迫った。EUの中では「脅しを繰り返す」(高官)米国も中国同様に「リスク」と見なされ始め、インドとの交渉は加速した。
フォンデアライエン氏は「貿易がますます『武器化』される時代に、(EUとインドの)強みを組み合わせることで、戦略上の依存を減らすことができた」と意義を語った。【1月28日 毎日】
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【インド・EUのFTA妥結の直後、トランプ大統領はインド・モディ首相がロシア産原油の購入停止に合意したとして関税を大幅に引き下げ】
一方、インドはロシア産原油輸入を理由に、トランプ大統領から50%もの高関税を課せられており、これがインド経済にとって足かせにもなっていました。
しかし、上記のインド・EUのFTA妥結の直後、トランプ大統領はインド・モディ首相がロシア産原油の購入停止に合意したとして関税を大幅に引き下げることを発表しています。
****トランプ氏、インドへの関税を大幅引き下げ モディ氏がロシア産原油の購入停止に合意****
米国のトランプ大統領は2日、インド製品への関税を引き下げる意向を表明した。インド側がロシア産原油の購入停止などを約束することと引き換えの措置だとしている。
これは容易なことではない。国際貿易データプロバイダーのケプラーによると、インドはトランプ氏がインド製品への制裁関税を課してから数カ月が経過した現在でも、毎日約150万バレルのロシア産原油を輸入している。ロシア産原油はインドの総輸入量の3分の1以上を占めている。
トランプ氏はソーシャルメディアへの投稿で、2日午前にインドのモディ首相と会話し、同首相がロシア産原油の輸入をベネズエラ産と米国産に置き換えることで合意したと述べた。トータス・キャピタルのシニア・ポートフォリオ・マネジャー、ロブ・サメル氏によると、ベネズエラ産原油はロシア産原油と同等の品質で、重質で酸性度が高く、燃料油やディーゼルなどの派生製品の製造に最適であり、インドの製油所はすでにこれらの原油を精製する準備を整えているという。
しかし、その移行にどれだけの時間がかかるのかは不明だ。ベネズエラの石油インフラは老朽化しており、1999年に社会主義政権が政権を握る以前の日量300万バレル以上の生産量に戻すには、約10年の改修と数百億ドルの投資が必要となる。
インドはまた、ベネズエラが生産するよりも多くの石油をロシアから購入している。
インドはロシア産原油の主要購入国であるが、ロシア産原油はプーチン大統領によるウクライナとの戦争により、ほとんどの西側諸国から制裁対象となっている。中国はインドよりもはるかに多くのロシア産原油を購入しているが、インドとは異なりロシア産原油の購入に対する追加関税には直面していない。
インド政府当局者はこれまで、ロシア産原油の購入は同国のエネルギー安全保障に不可欠だと主張し、その正当性を擁護してきた。インドは世界第3位の原油消費国であり、ロシアは比較的距離の近い供給国。インドは世界最大の人口を背景に急成長する経済を支えるため、ロシアの原油に依存している。
みずほ証券のロバート・ヨーガー氏は、ロシア産原油は石油輸出国機構(OPEC)や米国産原油に比べて1バレルあたり約16ドル(約2488円)という大幅な割安で取引されており、インドが購入を中止することは困難だと指摘した。同氏は、米国との今回の合意後も、インドは過去数年間と同様に、制裁を無視してロシア産原油を購入する可能性があると予想。制裁対象の石油を運搬する「影の船団」の利用などに言及した。
しかし、過去数カ月にわたって原油価格が下落したため、制裁対象原油と非制裁対象原油の価格差は縮小し、インドが政策を転換する余地ができたとする見方も出ている。
トランプ氏は、インド製品への関税を50%から18%に即時引き下げると明らかにした。50%の関税率には、インドにロシア産原油の購入停止を促すため8月に導入された25%の追加関税が含まれる。ホワイトハウスの報道官はCNNに対し、トランプ氏は追加関税を完全に撤廃し、いわゆる相互関税を引き下げると述べた。【2月3日 CNN】
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【明確でない“インドのロシア産原油の購入停止”】
トランプ大統領は“モディ首相がロシア産原油の輸入をベネズエラ産と米国産に置き換えることで合意した”としていますが、モディ首相側はそのあたりを明確にしていません。
トランプ大統領としては、このままインドとの関係がうまくいかないまま、インドに欧州が接近して市場を奪われる・・・といった事態を憂慮して、どれほどの“確約”があったかは不明ですが、強引に“インドがロシア産原油の輸入を停止”ということを名目に、インドとの関係修復に乗り出した・・・といったところでしょうか。
そうすると、トランプ大統領にとっては、昨年、中国に関税で圧力をかけたが、レアアースを武器化した中国の対応に、結局は関税引き上げを撤回した件に続く「TACO」(トランプはいつもビビッて退く)ということにも。
****強く出れば後退? トランプ氏、EUとFTA締結したインドに「関税引き下げ」(1)****
米国のドナルド・トランプ大統領は2日(現地時間)、50%に達していたインドに対する関税を18%に引き下げた。中国に代わる「世界の工場」であるインドが、欧州連合(EU)と自由貿易協定(FTA)を締結し、米国を除いた人口20億が参加する超大型の無関税「自由貿易市場」を完成させてから6日後のことだ。
トランプ大統領は関税引き下げの発表直後、重要鉱物に対する戦略的備蓄計画を公開し、「1年前の出来事を繰り返したくない」と語った。トランプ大統領は昨年、中国に関税で圧力をかけたが、レアアースを武器化した中国の対応に、結局は関税引き上げを撤回。「TACO(Trump Always Chickens Out、トランプはいつも尻込みして退く)」という議論を巻き起こした。
◇「ロシア産原油」を名目に…具体策はなし
(中略)トランプ大統領は、「(インドが)ロシア産原油の購入を停止し、米国や、将来的にはベネズエラからより多くの(原油を)購入することにした」という点を関税引き下げの背景に挙げた。また、「5000億ドル(約78兆円)以上の米国産エネルギー・技術・農産物など、高水準の『米国産購入』を約束した」と主張した。
しかし、インドによる米国産原油および物品の購入に関する具体的な計画や日程などについての説明はなかった。 モディ首相はX(旧ツイッター)への投稿で、関税引き下げについてトランプ大統領に「感謝する」と述べた。しかし、ロシア産原油の輸入停止計画はもちろん、米国製品の輸入に関する言及はせず、むしろ自身が「14億のインド国民を代表する」とし、インドの巨大な市場規模を遠回しに誇示するような姿を見せた。
◇「20億市場」から米国のみ除外…関税を「垂直引き下げ」
欧州の主要メディアは、インドに対する関税引き下げが、先月27日に締結されたEUとインドのFTA合意直後に出された点に注目した。英BBCは「トランプ氏の関税引き下げは、FTA締結から1週間も経たずに出された措置」と意味を付与し、フィナンシャル・タイムズ(FT)も「FTAによってトランプ大統領がむしろ圧力を受けた可能性がある」と分析した。
EUとインドは2007年からFTA交渉を進めてきたが、合意点を見出せずにいた。しかし、トランプ大統領が同盟国はもちろん戦略的パートナー国に対しても無差別的な関税圧力を加えた後、議論が急進展し、最終的に20年越しでFTAの締結に成功した。
EUとインドはFTA合意に基づき、貿易品目のうち96.6%に対する関税を撤廃する見通しだ。これは20億人の人口と世界経済の25%、世界貿易の3分の1をカバーする巨大な無関税市場が形成されることを意味する。関税で「壁」を築いた米国が参入できる余地は制限される可能性が高い。
両側に関税で圧力をかけてきたトランプ政府は不快感を示した。ジェミソン・グリア米通商代表部(USTR)代表は先週、フォックスニュースのインタビューで「米国がグローバル化の問題を解決しようと努力している最中に、EUがむしろグローバル化をさらに強化した」とし、脱・米国に近い動きを見せた欧州諸国を叱責した。【2月3日 中央日報】
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トランプ大統領の強引な施策に対し、欧州・カナダなどが中国との関係を強化する動き・脱米の動きにあることはこれまでも取り上げてきました。
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EUは、米国を除いた世界の主要市場を自由貿易圏として結びつける作業を加速させている。 EUはインドに先立ち、先月17日にブラジル・アルゼンチン・ウルグアイ・パラグアイの南米4カ国共同市場「メルコスール(MERCOSUR)」と別途のFTAを締結し、29日にはベトナムと外交協力の最高段階とされる「包括的戦略パートナーシップ」へと関係を格上げすることで合意した。EUがASEAN(東南アジア諸国連合)加盟国と当該の協定を結んだのは初めてだ。
協力対象には、米国と対立する中国まで含まれた。昨年12月にエマニュエル・マクロン仏大統領が訪中して習近平国家主席と会談した。先月にはアイルランド、フィンランドの首脳も北京を訪れ、フリードリヒ・メルツ独首相は今月中国を訪問する。いずれも大規模な経済使節団を同行させているか、同行させる予定だ。
EU加盟国ではないが米国の核心的同盟国である英国のキア・スターマー首相も、北京で習主席と首脳会談を行った。英国首相の訪中は2018年以来8年ぶりだ。
もう一つの核心的同盟国であるカナダのマーク・カーニー首相も先月、習主席と会い、両国関係を「新たな戦略的パートナー」関係に格上げさせた。
同盟国たちの「反乱」に対し、トランプ大統領はグリーンランド併合に反対する欧州8カ国に10%の報復関税を課す計画を明らかにしたが、欧州が「対抗関税」で応じると計画を撤回した。また、フランス産ワインに200%、カナダに100%の追加関税を課すと公言したが、実際の措置は行われていない。【2月3日 中央日報】
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【ロシアは否定 専門家も現実性を疑問視】
トランプ大統領が“インドがロシア産原油の輸入を停止”ということを名目に掲げていることに、ロシアはこれを否定しています。
多くの専門家もインドがロシア産石油を完全に断つのは困難であり、現実的ではないとの見方です
****「トランプは嘘の塊」ロシアが否定した“インド関税解除”の真相*****
インドがロシア産原油の購入を中止したことを受け、米国がインドに課していた追加関税25%を撤廃し、相互関税率も25%から18%へ引き下げるとしたドナルド・トランプ米大統領の発表が、波紋を広げている。
これに対しロシア政府は4日(現地時間)、インド側から原油購入を停止するとの正式な通知は受けていないと明らかにし、トランプ大統領の主張を真っ向から否定した。
専門家の間では、トランプ氏が今回も事実関係を誇張して発言した可能性が高いとの見方が強まっている。インドがロシア産原油の輸入量を減らしている動きを、あたかも「輸入中止を約束した」かのように拡大解釈して発表したのではないか、という指摘だ。
ロシア「インド側から正式な通知はない」
(米メディア)「CNBC」は、ロシアの「RIAノーボスチ通信」の報道を引用し、クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官がトランプ氏の主張を否定したと伝えた。
ペスコフ報道官は「この問題について、ニューデリー(インド)側から何の説明も受けていない」と述べ、インドがロシア産石油の輸入を禁止するとの約束が事実ではない可能性を示唆した。その上で「米国とインドの二国間関係を尊重している」としつつ、「ロシアとインドの戦略的パートナーシップを強化する重要性も看過されるべきではない」と付け加えた。
インドがロシアとの関係悪化を覚悟してまで石油輸入を中止する可能性は低いとの見方を示した形だ。さらに、ロシアとインドの戦略的パートナーシップが最重要課題であり、両国関係の一層の強化を追求していく考えを示した。(中略)
トランプ氏の誇張発言か
トランプ氏が自身のSNSでインドとの貿易合意を発表する一方、ナレンドラ・モディ印首相もSNS上で合意の成立を認め、関税率が18%に引き下げられたことを歓迎する姿勢を示した。ただし、ロシア産石油の輸入を中止するとの言及はなかった。
専門家の間でも、インドがロシア産石油を完全に断つのは困難だとの見方が強い。米国による25%の報復関税を受け、インドが輸入量を一部減らしているのは事実だが、2022年のウクライナ戦争以降、ロシアにとって最大の顧客となったインドが、輸入を全面的に停止する可能性は極めて低いとみられている。
カーネギー国際平和財団の副理事、エヴァン・ファイゲンバウム氏は2日付の分析報告書で、インド政府がロシア産石油の輸入中止を明示的に約束した可能性はほとんどないとの見解を示した。ファイゲンバウム氏は「両国には歴史的かつ感情的に深い結び付きがあり、米国から圧力を受けたからといって、インドがロシアを排除することはできない」と指摘した。さらに、独立外交を掲げるインドにとって、ロシアは米国と同様に重要な存在であり、戦争遂行の核心となる石油輸入を断つことで両国関係が断絶する事態を、インド政府が望むとは考えにくいとの見方を示した。
格付け会社ムーディーズは、経済的な観点からトランプ氏の発言に疑問を呈した。ロシア産石油の輸入を全面的に中止すれば、製造業のコストが急騰し、消費者物価の上昇を招くため、発言の信憑性は低いとの判断だ。
ムーディーズは3日、インドがここ数か月にわたりロシア産石油の輸入を減らしているのは事実としつつも、経済成長を損なうような即時の輸入全面停止に踏み切る可能性は低いと予測した。世界有数の石油輸入国であるインドが、インフレを覚悟してまでロシア産石油を断つことは現実的ではないと結論づけている。【2月6日 江南タイムズ】
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