
(【2月18日 NHK】スイスのジュネーブで開催されたアメリカ(中央)仲介のウクライナ(右側)とロシア(左側の和平交渉)
【ウクライナ:民間+軍人の死者は約6万人前後、負傷者は約40万人超 首都では多くの建物が暖房喪失】
ウクライナがロシアとの戦争で多大な犠牲を払っていることは言うまでもありません。
死者・負傷者の犠牲者数についてははっきりしたものはわかりませんが、おおよそのところを知るてがかりとしては下記のような報道が。
****国連は全面戦争開始以来、ウクライナで15,000人以上の民間人が死亡したことを確認(自動翻訳)****
ロシアの全面侵攻開始以来、ウクライナでは1万5千人以上の民間人が死亡し、4万1千人以上が負傷しています。
これは国連ウクライナ人権監視ミッションの新しい報告書によるものだとUkrinformは報じています。
「紛争関連の暴力により、2022年2月24日以降、ウクライナで少なくとも15,172人の民間人が死亡し、41,378人が負傷しています。少なくとも766人の子どもが死亡し、2,540人が負傷しています」と報告書は述べています。
国連は、2025年と2026年に民間人への被害が明らかに悪化したことを指摘しました。2023年と2024年よりも多くの民間人の死傷者が出ており、ウクライナのエネルギーインフラに対する持続的かつ組織的な攻撃による深刻な影響で国内の民間人は苦しみました。(後略)【2月17日 ukrinform.net】
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一方、通常発表されない軍兵士犠牲については、1年以上前の数字になりますが、一昨年末にゼレンスキー大統領が以下のように公表したことがあります。
****ウクライナ兵の戦死者「4万3000人」 ゼレンスキー大統領が公表****
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ロシアによる全面侵攻が始まって以来、約4万3000人のウクライナ兵が死亡したと述べた。同大統領が犠牲者数の実態について認めたのはまれ。
ゼレンスキー大統領はソーシャルメディアへの8日の投稿で、37万件の負傷事案が報告されていると述べた。この数字には同じ兵士による複数回の負傷も含まれており、一部は軽傷とされている。
また、ロシア側では19万8000人の兵士が死亡し、さらに55万人が負傷したと主張した。
BBCは、いずれの側の数字も検証・確認できていない。
ウクライナとロシアは共に、相手側の損失の推定値を定期的に公表しているが、自国の損失については詳細を明らかにすることを避けている。(後略)【2024年12月11日 BBC】
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両方の記事を併せると
死者 負傷者
民間人(国連報告) 約1.5万人超 約4.1万人超
軍人(政府公表) 約4.3万人 約37万人
民間+軍人 約6万人前後 約40万人超
これだけ厳しい戦争を続けていれば、“ロシアに対しウクライナ全国民一丸となって国土防衛のため激しく戦っている”・・・という訳にも行かないのは当然に想像できるところです。
民間においては上記のような死亡・負傷者だけでなく、ロシアのエネルギー施設攻撃で市民生活が極めて厳しいものになっています。
****ウクライナ首都で約1600棟暖房使えず 氷点下20度の中****
ウクライナ当局は15日、ロシアによるエネルギーインフラへの攻撃の影響で、首都キーウでは同日の時点で建物約1600棟が暖房を失ったままとなっていると明らかにした。
当局によると、約1100の住宅建物とその他の約500棟が、厳しい寒さの中で暖房のない状態にあるという。
ロシアの最近の攻撃により、ウクライナは侵攻開始から約4年となる戦争で最悪のエネルギー危機に直面しており、気温が氷点下20度にまで下がる中、数十万世帯が暖房と電力を失っている。(後略)【2月16日 AFP】
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なお、ウクライナ軍も、ロシア側の石油・ガス産業インフラを標的に、無人機攻撃を行っています。
【軍内部において脱走者・自殺者が増加】
軍内部においても、脱走者・自殺者が増加しています。
****ウクライナ軍で推定20万人が脱走、200万人が徴兵逃れ 新国防相が初めて明かす****
ウクライナのフェドロウ新国防相は14日、ウクライナ軍で許可なく持ち場を離れた脱走兵が20万人に上るとの推定を明らかにした。
フェドロウ氏は新国防相としての承認採決を前に議会で発言し、約200万人のウクライナ人が兵役回避の疑いで「指名手配」されていることも明らかにした。
ウクライナ軍は自国よりはるかに強大な敵を相手に国の防衛を試みており、ここ数年、負担を強いられている。
前線の状況は苛烈(かれつ)で、ウクライナ軍の兵士は数や火力で劣勢に立たされながらも、重要拠点で持ちこたえようとする場面が多い。
士気低下や脱走率の高さを巡るうわさは以前から飛び交っていたが、ウクライナ当局者が問題の規模を明らかにしたのは今回のフェドロウ氏の発言が初めてとなる。
ウクライナの法律では、18~60歳のすべての男性に軍への登録と書類の常時携帯が義務付けられている。ただ、実際に動員対象となるのは25~60歳の男性に限られる。
ウクライナは戒厳令で、兵役資格のある23~60歳の男性が国を離れることを禁じているが、それでも数万人が違法に脱出した。
ウクライナのゼレンスキー大統領は14日にフェドロウ氏と会談した後、国の動員制度の「より広範な改革」が必要だと指摘した。(後略)【1月15日 CNN】
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****ウクライナ前線で増え続ける兵の自死...隠蔽される「非戦闘による損失」の残酷な真実****
<長期化する戦争の陰で自ら命を絶つ兵士が増加。当局は「軍の評判」を下げる情報に敏感になっており、情報の削除なども行われている>
【2月18日 Newsweek】
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自死に関する上記記事内容は省略しましたが、自死が多い、戦争が長期化するにつれ自死が増加している・・・というのは、想像に難くないところです。
【軍に向けられる市民感情の変化】
上記記事で兵士の自死そのものに関する部分以上に目を引いたのは、帰還した軍人に向けられる視線の話
****軍服に向けられる若い男性の『くそ野郎!』とでも言いたそうな目****
続いてミコラは、ウクライナ軍に対する市民感情の変化について語った。「先日、私が地元に戻ったときのことだ。軍服を着て街を歩いていると、みんなが私を敵のような目で見ていた。特に若い男性は、『くそ野郎!』とでも言いたそうな目で。こんなことなら前線にいたほうがましだ、と感じるほどだ」
ロシアによる軍事侵攻が起きたとき、兵士たちは「故郷の防衛者」「英雄」としてたたえられ、多くの市民が志願兵として銃を手にした。しかし近年、ロシア軍の攻勢によってウクライナ軍は各地で撤退を続けている。今や軍服は、敗退と強引な徴兵のシンボルになってしまった。
停戦が実現し、故郷に帰還できたとしても、兵士は社会にどう受け入れられるだろうか。戦地の兵士に不安が募り、生き抜く自信を失わせている理由の1つを語るミコラの指摘は切実だ。【2月18日 Newsweek】
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上記は“ウクライナ軍第60独立機械化旅団のミコラ・フェドロビッチ(51)。ドネツク州のリマンを拠点に長期滞在している従軍牧師”という一個人の印象であり、これをもって一般化するのは危険ですが、戦争遂行・和平交渉に関する世論調査の数字には出てこない社会の空気感を伝えるものかも。
【世論調査:「戦争を続けたいわけではないが、ロシアの言いなりになる和平も受け入れられない」という複雑なジレンマ】
世論調査に見る傾向としては、できるだけ早い停戦を「交渉で」実現すべきとする考えが増加しているのは事実です。
**** 交渉優先論の拡大(Gallup など)*****
米ギャラップ系調査(2025年7月)
69%:できるだけ早い停戦を「交渉で」実現すべき
24%:勝利まで戦闘継続を支持
2022年は
「勝利まで戦う」73%
「早期交渉」22%
→ 世論がほぼ逆転
これは国際的にも引用頻度が高く、厭戦気分拡大を示す代表的データとされています。【ChatGPT】
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しかし、長期化する戦争による疲弊(厭戦気分)と、それに基づく現実的な妥協案への模索と同時に、ロシアの言いなりになる和平も受け入れられないという思い、長期戦への覚悟、勝利への期待も依然として大きく、和平に向けたベクトルと戦争遂行に向けたベクトルが同時に併存するジレンマ状態にあります。
****ウクライナ国内の戦争・和平に関する最近の世論調査****
1. 停戦・領土妥協への許容度の変化
かつては「全領土奪還」が絶対的な条件でしたが、現在は「安全保障」と引き換えに、事実上の前線凍結を容認する声が広がっています。
前線凍結への支持: キーウ国際社会学研究所(KIIS)の2025年末の調査では、69%の国民が「現在の前線での凍結」を含む和平案を、確実な安全保障があることを条件に承認する用意があると回答しています。
領土割譲への意識: 2025年半ばの時点で、領土の一部を譲歩することに同意する割合は約38〜39%に達しており、2022年の約8%から大幅に増加しています。ただし、ロシアによる占領の「法的な承認」には依然として強い拒否感があります。
2. 「必要な限り耐える」意志の底堅さ
厭戦気分が広がる一方で、降伏やロシア側の不当な条件(非武装化など)を受け入れることには依然として否定的です。
忍耐の継続: 2025年12月の調査でも、62〜63%の国民が「勝利のために必要な限り、ずっと戦争に耐える準備がある」と回答しており、この数値は2025年を通じて一定の水準を維持しています。
不公正な和平への懸念: KIISの調査によれば、50%以上の国民がトランプ米政権などの関与によって「不公正な和平」を押し付けられることを恐れています。
3. 欧米の支援疲れに対する認識
ウクライナ国内では、自国の疲れよりも「支援国の疲れ」をより深刻に捉え始めています。
支援への不信感: 2025年10月の調査では、欧州が信頼できる同盟国であると考える割合が58%に低下(8月の63%から下落)し、支援国がウクライナに譲歩を迫るのではないかという不信感が高まっています。
自主独立の志向: 戦後の優先事項として、53%が「他国に頼らず、自国の資源に依拠した独立した道」を歩むべきだと考えています。
このように、ウクライナ社会は「戦争を続けたいわけではないが、ロシアの言いなりになる和平も受け入れられない」という複雑なジレンマの中にあります。最新の詳細は、ウクライナの主要な調査機関であるキーウ国際社会学研究所(KIIS)のレポートで確認できます。【Gemini】
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****勝利期待そのものは依然高い****
2026年初頭調査:84%:ウクライナの勝利を信じる
ただし同時に終戦時期予測については、2~3年以内:最多(35.9%) 2026年末まで:17.7%
→ 短期決着への期待は低下。【ChatGPT】
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【ゼレンスキー大統領「(戦線凍結による領土の)現状維持を文書に明記すれば、国民投票で支持されるだろう」 和平交渉は進展なし】
こうした社会の空気を背景にゼレンスキー大統領は和平交渉に臨んでおり、ウクライナとロシアは17日、スイス・ジュネーブでアメリカの仲介による高官協議を開始しました。
ゼレンスキー大統領がトランプ大統領の圧力でウクライナばかりが譲歩を強いられるとの不満を表明していることは15日ブログでも取り上げました。
****米はウクライナに「譲歩求めすぎ」、ゼレンスキー氏が不満吐露****
ウクライナのゼレンスキー大統領は14日、ミュンヘン安全保障会議で演説し、来週ジュネーブで開催される米国仲介の和平協議について、実質的なものとなることを期待すると表明する一方、ウクライナが「あまりにも頻繁に」譲歩を求められていると不満もにじませた。ロシアが交渉団トップを交代させたことについては、決定を遅らせようとしているとして非難した。(中略)
ゼレンスキー氏は、トランプ米大統領から「若干の」圧力を感じていると認めた。トランプ氏は13日、ゼレンスキー大統領が「行動を起こさなければ」和平の機会を逃すなどと述べている。
ゼレンスキー氏は「米はしばしば譲歩の話を持ち出すが、譲歩がロシアではなくウクライナのみを前提に議論されることが多すぎる」とし、ウクライナは多くの譲歩を行っており、ロシアがどのような妥協を受け入れる用意があるかを聞きたいと語った。【2月15日 ロイター】
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交渉はドンバス地域(ウクライナ東部のドネツク州とルハーンシク州)に関する領土問題、米軍も関与する安全保障問題が中心になります。
ゼレンスキー大統領はドンバス地域全体の割譲要求については受け入れられないとして、現在の戦線凍結を求めています。
****トランプ氏が過度な圧力とウ大統領、東部割譲「国民受け入れず」=報道****
(中略)
一方、現在ロシアが約88%を支配しているドンバス地域全体の割譲要求については、(ゼレンスキー大統領は)国民投票で受け入れられないとの考えを示し、「感情的に国民は決して許さない」と強調した。
その上で、現在の戦線凍結を改めて求め、「現状維持を文書に明記すれば、国民投票で支持されるだろう」との見方を示した。【2月18日 ロイター】
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ジュネーブで行われていた3回目の和平協議は、領土問題に関しては進展はなかったようです。
****米露ウクライナ、3回目の和平協議が終了 ゼレンスキー氏、領土の扱いに「進展なし」****
ロシアによるウクライナ侵略の終結に向けた両国と米国の3カ国による第3回高官協議は18日、スイスのジュネーブで2日間の日程を終えた。
ウクライナメディアによると、同国のゼレンスキー大統領は協議後、和平交渉の最大の焦点であるウクライナ領土の扱いに関して「進展はなかった」と報道陣に説明。一方、和平成立後の停戦監視に米国も関与することが「ほぼ合意された」とも表明した。
露国営タス通信によると、露代表団のメジンスキー大統領補佐官は「困難だが実務的な協議だった」と述べ、次回協議が近く行われるとの見通しも示した。
ウクライナ代表団のウメロフ国家安全保障・国防会議書記によると、協議は領土などの問題を扱う政治分野と、停戦監視などを扱う軍事分野を議論する2つのグループに分かれて行われた。3カ国の代表団は帰国後、各大統領に詳細な協議結果を報告するという。(【2月18日 産経】
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