アメリカの階層別の世帯資産の分布の推移

(アメリカの世帯の下位半分(上図で一番下の肌色)は国の富のわずか2%しか保有していないが、上位1%の世帯(上図の一番上の水色)は国の富の3分の1を保有している。【2022年10月14日 LIFE INSIDER】)
【日本は「格差社会」か?】
かつては「一億総中流」と言われるほど格差が小さかった日本も、次第に格差が拡大し、いわゆる「格差社会」になっている・・・というのが世間一般的な見方でしょう。
ただ、そうした考え方に対して異論もあります。
****「日本は格差社会」は大間違い…多くの日本人が「格差が広がっている」と錯覚している納得の理由***
(中略)日本はかつての「一億総中流」だった平等な社会から、厳然たる格差社会になってしまい、しかもその格差は広がり続けているというのが、恐らく多くの人の受け止めだろう。メディアでも多くの政治家の言説でも、日本が格差社会であること、また、その格差がさらに拡大していることは、ほぼ自明の事実として扱われている。
格差拡大の原因としては、中曽根康弘政権(1982〜1987)の国鉄や電電公社の民営化や、小泉純一郎政権(2001〜2006)の派遣労働対象業種拡大といった新自由主義的経済政策で、意図的に弱肉強食化が進められたとの見方もあれば、誰かが意図をもってもたらしたというよりは、経済全体がグローバル化する中で、日本の労働者も中国をはじめとする低賃金国と競争せざるを得なくなり、必然的に賃金が下のほうに引っ張られていって起きたという見方もある。
ジニ係数は絶対か
格差に関するデータをおさらいしておくと、最も一般的に用いられるのは所得に関する「ジニ係数」である。
ゼロから1までの間で、ゼロは完全な平等(全員が同じ所得)、1は完全な不平等(一人がすべての所得を独占し、ほかの全員は所得がゼロ)を意味する。経済協力開発機構(OECD)によると、ジニ係数(所得再分配後)で見た日本の不平等度は、OECD38ヵ国中、11番目に高く、格差は大きい部類に入る。
ただし、ジニ係数が格差に関する唯一絶対の指標なのかというと、そんなことはない。
ジニ係数の問題点として指摘されるのが、人口の大半を占める「普通の人」に関する所得のばらつきを測るには有効だが、上位1パーセントや0.1パーセントといった「かなりのお金持ち」がどの程度その他の人々と比較して所得を得ているかといった格差を見るには適していないというものがある。また、不平等度を見るには、所得よりも資産の偏在度合いを見たほうがいいとの考え方も当然あり得る。
日本は「格差社会ではない」
こうした観点から、日本は(少なくとも国際比較においては)格差社会とは言えないと主張する専門家が一定数いるのも事実だ。
たとえば一橋大の森口千晶教授は、上位0.1パーセントの超富裕層、1パーセントの富裕層の所得が国全体の所得に占めるシェアの日米比較や、日米大企業の役員報酬の差などから、「世界的なトレンドとは異なり、『富裕層の富裕化』は観察され」ず、「現在の相対的貧困率が国際的にみても歴史的にみても高い水準にあるという理解」も「正しくない」と分析する。
その上で、日本は「アメリカ型の『格差を容認する社会』になったのではなく」、男性正社員が一家を養うという古いモデルを前提とした社会保障システムが、非正規雇用の増加や非婚率の上昇といった社会変化に追い付かず、「なし崩し的に『格差の広がった社会』になったといえる」と結論付けている(内閣府「選択する未来2.0」2020年4月15日・第6回会議提出資料「比較経済史にみる日本の格差 日本は『格差社会』になったのか」)。
森口氏に改めて見解を尋ねてみた。森口は「『格差社会』という言葉が先行して、多くの人が日本も格差社会になったと思っている」と語りはじめた。その上で、世の中の大半の人が格差を良いことだと思っていないという点で「日本は格差社会なんかじゃないんですよ」と断言した。「貧困層が拡大し、固定化されているのは事実だ」と認めつつ、「多くは高齢化で説明できる」として、世の中の格差論がイメージ先行であることに不満を漏らした。
また、『21世紀の資本』で一世を風靡したフランスの経済学者トマ・ピケティらによる「世界不平等研究所(World Inequality Lab)」がまとめた「世界不平等報告書」も、日本は所得格差に関しては1980年代以降、増大傾向にあるとするものの、資産格差については「とても不平等だが、西ヨーロッパ諸国より不平等というわけではない」と指摘。「1995年以降、資産のシェアはほぼ安定している」として、富の偏在が広がっているとの見方を否定する。
【2024年4月21日 井手壮平氏 現代ビジネス】
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【アメリカ社会には歴然たる大きな格差が存在 マスク氏のような大富豪の一方で「学生ローン」返済に苦しむ若者】
日本がどの程度の格差社会にあるのかはさておき、アメリカが日本より格差が大きく、しかもその格差が一定に容認されている(もちろん反格差運動「ウォール街を占拠せよ」みたいなものがない訳ではありませんが)ようにも見えるのは確かなことでしょう。
****マスク氏資産、初の7000億ドル超え 巨額報酬認める判決受け=米誌****
米誌フォーブスの長者番付によると、米電気自動車(EV)大手テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)の純資産が19日までに約7490億ドルとなり、初めて7000億ドルを突破した。
デラウェア州の最高裁は同日、マスク氏の巨額報酬パッケージを無効とした下級審の判断を覆した。報酬パッケージは当時の株価で560億ドル相当だったが、テスラ株の上昇に伴い19日終値時点で1390億ドルに価値が膨らんでいた。
マスク氏の資産は、同氏率いる宇宙企業スペースXが新規株式公開(IPO)を準備中で、その一環として企業価値を8000億ドルとする「二次株式売却」を開始したと報道された後、15日に6000億ドルに達していた。
フォーブスによると、マスクの資産は2位のグーグル共同創業者ラリー・ペイジ氏を約5000億ドル近く上回っている。【12月21日 ロイター】
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桁が大き過ぎて計算がついていかないのですが、7490億ドルというと約117兆円ですかね・・・理解の範囲を越えた金額です。
巨額報酬パッケージが下級審で無効とされた背景には、アメリカ社会にもこうした巨額の報酬・資産に対する違和感があるのでしょうか。結局、最高裁で認められることになりましたが。
2023年のデータを見ると、アメリカの所得格差を示す「ジニ係数」は0.485。先進7ヵ国(G7)で最も格差が大きい国となっていますが、あまりそのこと自体への批判は国内には少ないように見えます。(前述の反格差運動「ウォール街を占拠せよ」みたいなものはありましたが)
マスク氏のような超富裕層が存在する一方で、生活費・家賃・学費の上昇で「学生ローン」返済に苦しむ者も多く存在します。
学生ローンについては、バイデン前政権時代に「猶予」の動きもありましたが、トランプ政権下では「借りたものは返すのが当たり前」という大原則に戻ったようです。
****トランプ政権が強制回収再開…アメリカの大学生〈4300万人〉が背負う「学生ローン」という重荷****
米国の大学生の約4割が学費や生活費を学生ローンで賄っているといいます。日本でも奨学金利用率は50%を超えており、どちらの国も若者が多額の負債を背負って社会に出る構造は同じといえます。(中略)
米国では、大学進学にかかる学費が高額です。州内の公立大学で、年間平均約1万1610ドル(約170万円)。私立大学では約4万3350ドル(約630万円)にも上ります。そこに仕送りも含めると、負担は大きくなります。
米国では、約4300万人(学生の約4割)が、学費や生活費のために学生ローン(Student Loan)を利用しているといわれています。その総額は、1.77兆ドル(約225兆円)となっています。
ここで注意すべきは、「学生ローン」という言葉の意味が、日本と米国でニュアンスがやや異なる点です。日本では「学生ローン」というと、消費者金融などで学生が借りるローンのイメージが強く、ややネガティブな印象もあります。
対して米国でいう「学生ローン」は、大学や大学院の学費・生活費のために政府や金融機関から借りる教育ローンのこと。返済は社会人になってから行うのが一般的です。日本でいうところの、JASSO(日本学生支援機構)などから借りる「奨学金」に近いといえるでしょう。学生ローンと奨学金……言葉は異なっても、若者が何百万円もの負債を背負って社会に出る構造は同じです。
時代の変化…「ブルーカラーの仕事」が人気になりつつあるワケ
もし、米国で学生ローンを払えなかったらどうなるのでしょうか。
まず、返済が遅延すると、延滞料が発生し、さらに利子が加算されます。もっとも深刻な影響は、信用スコア(クレジットスコア)の低下です。信用スコアが下がると、住宅ローンや自動車ローンなど、他のローンの金利が高くなったり、そもそも借り入れができなくなったりします。最悪の場合「デフォルト(債務不履行)」とみなされて、給料や税金の還付金の差し押さえが行われるなど、強制的な回収措置が取られます。
学生ローンは若者にとって、とても重い負担です。学生ローンの返済が結婚、出産、住宅購入、起業などを遅らせ、格差拡大や米国経済そのものの成長の妨げになるのでは、という見方もあります。バイデン前大統領は、低・中所得層向けに最大2万ドルの学生ローン返済免除(Loan Forgiveness)を提案しましたが、「規模が大きすぎる」として2023年に連邦最高裁が違憲と判断し、頓挫しました。
コロナ禍では学生ローン返済が一時的に停止され、2023年まで延長されていました。その後もしばらくは、強制的な回収には踏み切っていなかったものの、トランプ政権になり、「借りたものは返すのが当たり前」という立場から、再び学生ローンの回収が再び始まったのです。
これは前政権とは真逆の姿勢です。これにより多くの人が、デフォルトのリスクに直面しているといわれています。学生ローンは政策によって大きく左右されますし、これから進学する学生には、これまで以上に大きな負担が課されることになります。
時代の変化も急激です。少し前までは、「ホワイトカラーの仕事に就けば高収入が得られる」と信じられてきました。けれども今では、そうした知的労働こそAIに置き換えられやすくなり、最近の学生たちは就職すら難しくなっています。一方で、プラマー(配管工)や電気工事、建設などのブルーカラー職はAIによる代替が難しいとして、高収入の人気職となりつつあります。(後略)【12月18日 THE GOLD ONLINE】
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【「強欲は善」 レーガン時代から「小さな政府」路線に転換 新自由主義の経済思想】
上記「学生ローン」への対応のように、トランプ政権は公的な介入をなるべく限定し、市場の原則に委ねる・・・という自由主義的立場にあります。そういう対応は格差拡大を促すように思えますが、ただ、アメリカの格差拡大はトランプ以前からのものです。
****アメリカ史の中で画期を成した、反格差運動「ウォール街を占拠せよ」…「無敵の超大国」アメリカの地殻変動はここから始まっていた****
世界一の格差社会
アメリカは世界一の格差社会だ。上位1%の大金持ちが国富の30%程度を占有する。2023年のデータを見ると、所得格差を示す「ジニ係数」は0.485。先進7ヵ国(G7)で最も格差が大きい。
富の偏在がアメリカで著しく進み始めたのは1980年代以降である。80年代と言えば、第40代大統領ロナルド・レーガン(共和党)の時代だ。減税と規制緩和を柱とする「レーガノミクス」を推し進め、「小さな政府」路線にかじを切った。
これはニューディールからの決別だった。ニューヨーク株の暴落に端を発した大恐慌後の苦境を乗り越えるため、第32代大統領フランクリン・D・ルーズベルト(民主党)が30年代に打ち出した大型公共投資を柱とする諸政策である。
ルーズベルトは、「小さな政府」を志向するそれまでの政策を大転換し、政府が大きな役割を果たすことで国民を救済した。それ以降、アメリカでは「大きな政府」路線が半世紀にわたって続く。レーガンはそれを元に戻したのだ。
レーガノミクスを支えたのが新自由主義の経済思想だ。政府の介入を控え、公共事業を減らし、市場原理を重んじる考え方である。富裕層が潤えば、富は下層へ滴り落ち、皆が豊かになると主張する「トリクルダウン」説も広まった。
「強欲は善」
当時の世相を象徴する映画がある。巨匠オリバー・ストーンが製作し、87年に公開された映画『ウォール街』だ。マイケル・ダグラス演じる主人公の投資家ゴードン・ゲッコーはこう言い放つ。
「強欲は善だ。私の言葉は、機能不全に陥った『アメリカ株式会社』を救うだろう」
ゲッコーのモデルは、ウォール街を揺るがすインサイダー取引で有罪となった大物投資家アイバン・ボウスキーといわれる。「強欲は善」というセリフは、新自由主義の資本主義観を象徴する言葉として有名になった。
しかし、強欲資本主義を是とする哲学は、ゲッコーの思惑とは裏腹に「アメリカ株式会社」に大きな副作用をもたらしていく。『ウォール街』が公開された頃から、格差が著しく拡大していったのだ。
この頃、グレン・S・フクシマは30代後半だった。カリフォルニア州出身の日系3世で、米通商代表部(USTR)で通商代表補代理を務めた後、在日米国商工会議所会頭などを歴任した。フクシマはインタビューでこう語っている。
「さまざまなデータを見ると、80年代から現在に至る40年余りの間に、一握りの大金持ちと他の国民との格差が著しく拡大している。富の偏在が進んだ結果、アメリカは『持てる者』と『持たざる者』に分かれ、その固定化が進む。80年代以降に広がった貧富の格差は、社会の分断を加速させた主要な要因の一つだ」
これを後押ししたのが、1991年3月から2001年3月まで10年にわたる景気拡大だ。インターネットの普及や情報技術(IT)が進化し、グローバル化とも相まって、アメリカはITバブルに沸き、金融自由化が進んだ。
その象徴が「グラス・スティーガル法」の見直しである。1933年に制定されたこの法律は、第2次大戦の引き金ともなった大恐慌の反省から、銀行業と証券業の兼業を禁じ、分離するよう義務付けていた。
大恐慌では株価暴落により、株の売買に力を入れていた銀行が次々と破綻した。このため、銀行・証券の分離が定められたが、その規制を無効にする金融規制緩和法が99年11月に成立し、リスクの高い金融取引がまかり通るようになった。
この法律に署名したのは第42代大統領ビル・クリントン(民主党)。共和党だけでなく、民主党も新自由主義の影響を受けていた証拠だ。銀行・証券・保険の業務一体化に道を開いたことで、巨大な金融コングロマリットが形成された。
クリントンは任期(1993~2001年)を通じ、その民間活力を取り込んでいく。「ニューデモクラット」を自称し、レーガン流の「小さな政府」にはくみしない半面、ニューディール型の「大きな政府」からも距離を置く中道路線を志向した。
当時、この路線は「第三の道」と呼ばれた。クリントン政権はその理念の下、社会的公正を追求しつつ、市場原理を重んじる。IT企業や金融大手にてこ入れし、経済成長を促進する政策を推し進めた。【12月20日 川北 省吾氏
現代ビジネス】
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共和も民主もしょせん「同じ穴のムジナ」 持てる者・金持ちが牛耳る政党・・・ということにもなっていきます。
****トランプがいようといまいと、アメリカは「持てる者たち」のための国****
<止まらない物価高でトランプの支持率はだだ下がり それでも金持ちによる金持ちのための国アメリカの社会構造は崩壊しない>
12月9日にフロリダ州マイアミで市長選挙があり、民主党系候補として約30年ぶりにアイリーン・ヒギンズが約60%の票を得て当選。トランプ米大統領が担いだ共和党系候補は敗退した。11月4日のニューヨーク市長選でも、過激な富の再分配を掲げる民主党のゾーラン・マムダニが大差で当選したばかり。
ウクライナ戦争の調停は堂々巡り。大騒ぎで世界各国に「指定した」高関税率は、国内で物価をつり上げたとして、国民から抗議の声が上がっている。そもそも関税率決定は大統領の権限にあらずとの見方を裁判所が示し、年末にも最高裁が最終評定を出す構え。トランプは就任1年を待たずして、はや転換点に差しかかった。来年は中間選挙の年だ。
すわ、民主党の逆襲が始まった。国は共和・民主の対立で内戦状態に......というのは、2024年の映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』の筋書きで、実際はそうなるまい。
というのは、共和、民主両党とも「持てる者」の党というか、少なくともその政治資金を大企業に依存しているからだ。かつては製造業の労働者と労働組合に資金を依存した民主党は、製造業の国外流出でこれらの資金を失い、2000年代初頭には政治資金の大半を金融・ITを中心とする大企業に仰ぐようになった。
この民主党のひそかな資本家層への擦り寄りは、2011年にあらわになる。この年の9月、ニューヨークのウォール・ストリートに生活に困窮した市民が集まり、「ウォール・ストリートを占拠せよ」運動を繰り広げた。しかし民主党のオバマ大統領は、警官隊がデモ隊を力で解散させるのを看過した。またヒラリー・クリントンは16年の選挙集会で、トランプの下に集まる困窮した白人層を「嘆かわしい人たち」と呼び、民主党離れを決定的にした。
結局、世界はひっくり返らない
アメリカでは所得上位1%の者が、GDPの25%弱を稼ぎ、国の資産の30%強を所有する。所得上位10%の富裕層が株式の90%強を所有する。連邦歳入の50%弱は個人所得税だが、その40%は所得上位1%の層、72%は上位10%の層が納めている。
だからアメリカは、肉体労働ではなく頭脳で儲ける「持てる者」たちが支え、彼らのために国が動いていると言える。その他大勢は、古代アテネの「平民」のように貴族より一段格下の人間として生きる。
こうして「持てる者」たちの金が共和・民主両党を牛耳り、持たざる者たちは選挙のたびに良さそうに見えるほうに投票して、「政治を変えた」つもりできたのだ。
だから、共和も民主もしょせん「同じ穴のムジナ」。左右の過激派勢力が散発的に暴れても、州を単位とする南北戦争のような内戦は起こるまい。
というわけで、アメリカは崩壊しない。(後略)【12月20日 河東哲夫氏 Newsweek】
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共和も民主もしょせん「同じ穴のムジナ」 持てる者・金持ちが牛耳る政党 南北戦争のような内戦は起こらない アメリカは崩壊しない 世界はひっくり返らない・・・・大混乱が起きずに安心と思うべきか、大きな変化もないことに「それでいいのか?」と思うべきか・・・・