
(8日、ニューヨーク市で記者会見に臨むマムダニ氏【10月19日 産経】 インド系移民でイスラム教徒というのも異色ですが、何より民主的社会主義者を自任し、家賃の凍結や幼児教育の無償化、市営スーパーの設置、バスの無料化といった左派的公的介入重視政策を公約している急進左派であることが特徴です)
【アルゼンチン ミレイ大統領、中間選挙勝利で自由主義的経済改革前進か】
10月4日ブログ“アルゼンチン ミレイ大統領の自由主義的経済改革 民主主義国での「痛み」を伴う改革の難しさ”でも取り上げたように、ポピュリズム的なバラマキもあって長らく経済不振に喘いできたアルゼンチン(アルゼンチンはかつての先進国から滑り落ちた世界でも唯一の国と言われています。そのアルゼンチンに続くのが日本では・・・とも)の大胆な経済改革を自由主義的立場からミレイ大統領が取り組んでいます。
改革はマクロ的には一定の成果も出していますが、改革の「痛み」に国民がどこまで耐えられるのか・・・という基本的問題に加え、議会内で少数派の与党は野党勢力の協力を得られず、議会内で改革が頓挫することも。
そうした議会内での苦境を改善できるか注目されていた中間選挙で、苦戦も予想されていましたが大統領・与党側は勝利を収めたようです。
勝利の一因として、「アルゼンチンのトランプ」とも称されるミレイ大統領に盟友トランプ大統領が支援を約束する形で肩入れしたこともあげられています。
****アルゼンチン中間選挙、ミレイ大統領派が勝利 米国の意向が影響か****
アルゼンチンで26日、経済危機からの脱却を進めてきた右派ミレイ大統領への審判となる議会中間選挙が実施された。開票率98%時点の中間集計によると、ミレイ氏の政党「自由の前進(LLA)」が大幅に議席を増やす見通し。地元メディアはLLAの勝利と報じた。
トランプ米大統領を慕うミレイ氏は過激な言動で「アルゼンチンのトランプ」とも呼ばれる。トランプ氏はミレイ氏側が勝利すれば、アルゼンチンを支援する考えを示していた。選挙結果に影響した可能性がある。
野党候補の一人は地元紙の取材に「難しい選挙になった。トランプ氏が選挙の流れをつくった。不公平だ」と述べた。
ミレイ氏は首都ブエノスアイレスでの集会で「歴史的な日だ。偉大なアルゼンチンをつくる」と勝利宣言した。トランプ氏はSNSでミレイ氏を祝福し「われわれのミレイ氏への信頼が裏付けられた」と強調した。
改選対象は上院(定数72)の24と、下院(同257)の約半数に当たる127の議席。LLAの下院議席数は37だったが、81に増加。協力関係にある政党の議席を加えると、野党提出法案への大統領拒否権発動などが可能になる86議席を超える。LLAの上院議席数は3倍の18議席となる。
トランプ政権はアルゼンチン政府を支援する構えで、通貨ペソの買い入れや200億ドル(約3兆円)規模の通貨交換(スワップ)協定締結で合意した。
ただ、14日にミレイ氏と会談したトランプ氏は「彼が勝てば共にいるが、負ければ去る」と述べ、LLA勝利が支援の条件との考えを示唆した。【10月27日 日経】
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トランプ大統領の支援がどこまで影響したかは確認していませんが、ミレイ大統領の改革へを有権者が拒否しているようなら「勝利」はあり得ず、今回の結果は大統領の改革が一定にしじされている証でもあるのでしょう。
いわゆる「ラテン気質」のアルゼンチンで“痛みを伴う改革”が実現するのか個人的にはかなり疑問視していましたが、私の憶測を超えて改革は続きそうです。
【ニューヨーク市長選挙 民主社会主義者を自称するマムダニ氏が優勢 家賃の凍結や幼児教育の無償化、市営スーパーの設置、バスの無料化などを公約】
アルゼンチン・ミレイ大統領の改革が公的介入を排除する自由主義的な立場からの「壮大な社会実験」であるなら、逆に社会主義的というか、公的介入を強化する方向での「社会実験」に取り組もうとしているのがアメリカ・ニューヨーク市。
こちらの主役はNY市長選に民主党候補として立候補しているゾーラン・マムダニ候補(33)。
マムダニ氏は民主社会主義者を自称するインド系移民のニューヨーク州下院議員。選挙戦前は全米ではほぼ無名でしたが、一部の住宅の家賃値上げ凍結や富裕層への増税を掲げ、6月の民主党予備選でアンドルー・クオモ前州知事(67)を破りました。
立場が逆の右派ポピュリズムのトランプ大統領からは目の敵にされています。
****ニューヨークに「社会主義者」「イスラム教徒」の市長は誕生するか 全米が見つめる“マムダニ現象”の行方****
◆トランプ大統領も「マムダニ氏勝利」に言及
全米最大の都市ニューヨークで、いまかつてない政治的熱気が広がっている。
11月4日(現地時間)に行われる市長選挙で、社会主義者を名乗る民主党のゾーラン・マムダニ候補(33)が支持を伸ばし、各種世論調査で他候補を大きく引き離しているからだ。
元ニューヨーク州知事アンドリュー・クオモ氏は2位に甘んじ、共和党のカーティス・スリワ氏は遠く3位。
さらに注目を集めたのは、トランプ大統領が側近に「マムダニはもう負かすことはできない」と語り、自身の対立党の候補者の勝利を“予言”したとも報じられたことである。
大統領は9月、「マムダニが市長になれば連邦資金を止める」と発言したが、その後ホワイトハウスは選挙を待たずして180億ドル(約2兆7000億円)のインフラ予算を凍結した。
◆マムダニ氏人気の“背景”
そのマムダニ氏はアフリカのウガンダ生まれ、インド系の両親とともに幼少期にニューヨークへ移住した移民二世でイスラム教徒である。
現在はクイーンズ地区選出のニューヨーク州議会議員で、民主的社会主義者(DSA)の一員を名乗り、「現実的な社会主義」を掲げる。
選挙公約は家賃の凍結や幼児教育の無償化、市営スーパーの設置、バスの無料化といった都市生活者の切実な不満に応える内容だ。
資金源として法人税率の引き上げや高所得者課税を提案するが、従来の急進派のように「資本主義を否定」するのではなく、「公平な分担」を訴える姿勢が目立つ。
かつて「警察予算の削減」を叫んだが、最近は謝罪のうえで「安全な街づくりのために警察と協力する」と語り、現実的な方向転換も見せている。
マムダニ人気の背景には三つの要素がある。 第一に、若者を中心とした草の根の組織力だ。ブルッキングス研究所によれば、彼の陣営はわずか数か月で3万人を超えるボランティアを動員し、投票登録者を急増させた。
第二に、生活費と住宅費の高騰という「実感のある危機」を正面から取り上げたことがある。支持者たちが街角で唱える「家賃を凍結せよ」というスローガンは、政治的信条よりも生存感覚に根ざしている。
第三に、時代の空気だ。CNNの世論調査によれば、民主党支持層の66%が「社会主義に好意的」と答え、資本主義を肯定的に見る人は42%にとどまった。冷戦期のように「社会主義=悪」という図式は、いまの米国では通用しない。
◆「もしNYで成功できるなら」
ニューヨーク市長選が全米の注目を集めるのは、単に経済規模の大きさゆえではない。ニューヨークは常に米国政治のあり方を映す鏡であり、ルーズベルト、ラガーディア、ジュリアーニ、ブルームバーグら歴代市長の時代を通じて、その政策が国の進路を先取りしてきた。
その意味で今回の選挙が注目されるのは、マムダニが勝てば米国史上初の「社会主義者の大都市市長」となる点だ。もし彼が財政を崩さずに成果を上げれば、社会主義という言葉の印象を一変させ、民主党の政策議論を根底から塗り替える可能性がある。
逆に失敗すれば、「家賃凍結」や「市営スーパー」といった政策は「非現実的な夢想」として退けられ、左派の実験は後退するだろう。
こうした流れの先にあるのは、民主党が「中道政党」か「社会運動型の組織」かという路線対立の決着である。 党内ではチャック・シューマー上院院内総務ら穏健派が警戒を強め、アレキサンドリア・オカシオ=コルテス下院議員ら進歩派は「次の世代の旗手」として熱烈に支持している。ニューヨークという舞台を通じて、民主党の魂の争奪戦が始まっていると言って良い。
一方で、トランプ陣営にとっても、この選挙は無縁ではない。 右派ポピュリズムの旗手であるトランプ大統領が、左派ポピュリズムの象徴となったマムダニ氏に対抗心を抱いていることは、大統領が180億ドルの連邦資金を凍結した異例の行政命令が示している。
だが理想だけでは街は動かない。ニューヨークの財政は慢性的な赤字を抱え、地下鉄の治安回復や住宅問題、観光業の回復など現実の課題が山積している。もし舵を誤れば、進歩派の希望は一転して「絵空事」に変わるだろう。
マムダニ氏は米国生まれではないため、将来大統領選挙に出馬する資格はないが、既存政治に風穴を開け、若い世代を再び選挙に駆り立てた事実は重い。 彼の挑戦が成功すれば、米国政治は「理念を語り、現実と折り合う」新しい成熟の段階に入るのかもしれない。
フランク・シナトラのヒット曲「ニューヨーク・ニューヨーク」の歌詞に「もしニューヨークで成功できるなら、どこでも成功できる(If I can make it there, I’ll make it anywhere)」という一節がある。ニューヨークのマムダニ現象は、やがて全米に波及していくのかーーその行方を米国全土が見つめている。 【10月27日 木村太郎氏 FNNプライムオンライン】
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日本はかつては社会党が二大政党のひとつを占め、昔も今も共産党が一定の議席数を持つ社会ですが、アメリカでは「社会主義=悪」としてまったく受け入れられない・・・・というイメージでしたが、それはもはや冷戦期のものとなったのでしょうか。(NYなど“進歩的”大都市はともかく、トランプ支持者が多いような地域では、今も存続する認識だとは思いますが・・・)
【マムダニ氏人気の“背景” NYの家賃高騰・物価上昇といった生活苦】
上記記事でマムダニ人気の背景として3点あげられていますが、とにもかくにも家賃高騰・物価上昇といった生活苦が背景にあると思われます。そこからあがる「何とかしてくれ」という悲鳴でしょう。
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4人家族の推定月額費用は、家賃を除いて951,284.9円(6,211.9ドル)です)。
1人あたりの推定月額費用は、家賃を除いて255,707.9円(1,669.8ドル)です。
ニューヨークは東京より79.6%高いです(家賃を除く)。
ニューヨークの家賃は、東京より平均して273.7%高いです。【NUMBEO】
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****New York City(NYC)の生活コスト・住宅情勢****
家賃・住宅コストの現状
市全体の賃貸相場が高止まり・上昇を続けています。例えば、2025年第1四半期における市内全体の「中央値 asking rent(募集掛け出し家賃)」は 約 US$3,397 /月(0〜2 寝室)で、前年同期比で+7.2%の上昇というデータがあります。
市内で最も高額な地域、Manhattanでは、2025年10月時点で平均賃料が 約 US$5,706/月(全賃貸)に達しています。
市全体で「平均賃料」が US$4,033/月とされるデータもあります。
国家平均と比較すると、家賃・住宅コストが著しく高いです。「住宅(購入+賃貸)」カテゴリで米国平均を200 %超えるという試算も出ています。
空室率も低く、需要が供給を上回る状況が固まっており、競争的な賃貸市場となっています。例えばマンハッタンの賃貸物件の空室率が 2 %台という報告もあります。
以上のように、「住むこと」のコストが非常に高く、それが広範な市民の家計を圧迫しているという構図が明らかです。
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物価・その他生活コストも相対的に高い
生活全体のコスト指数を見ると、ニューヨーク市は米国平均を大きく上回っています。例えば、1人あたりの暮らし(家賃を除く)で月6,295ドルというデータもあります。
家賃以外でも、食料品、ユーティリティ(光熱・通信)、交通などが全国平均より割高になっています。たとえば、食料品が約14%高いというデータも。
株主・富裕層・企業に対する増税など、政策的な反応も出てきています。Mamdani氏のプラットフォーム上でも「最低賃金を引き上げる」「家賃を抑える」「企業課税を強化する」といった提案が出ています。
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なぜこのような「生活苦」感が支持基盤となっているか
高い家賃・住宅コストが、可処分所得を圧迫し、特に中低所得層・賃貸世帯にとって重い負担となっています。
上記のような状況下で、Mamdani氏が「家賃抑制(例えば賃貸ユニットの賃料凍結)」「手の届く住まい(アフォーダブル住宅)」「物価・生活賃金の改善」といった訴えをしており、これが「生活の実感」あるテーマとして響いているからです。
住まいや暮らしのコストが大きな関心事であるため、「生活のために政治を変えたい」という市民感情が、進歩派・社会民主主義的な立場をとる候補者に向く土壌を作っています。
また、富裕層・不動産業界・企業に対する批判的な視点(例:超高額家賃、地主優位の構造)も、この支持傾向を後押ししています。【ChatGPT】
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【左派的な公的介入重視政策には危うさも】
ただ、「家賃抑制」といった手法は、かえって供給を抑制して根本的な需給バランス改善を阻害することにもなります。最低賃金引上げもコストアップにつながります・・・・過度の市場介入は失敗しやすいというのが「常識」であるようにも思うのですが・・・。
マムダニ氏が当選したら市場介入的施策に取り組むのでしょうが、バランス感覚を欠いた左派的手法は失敗する危険が強いように思えます。
ただ、民主党内はヒラリー・クリントンに対するサンダース候補の善戦にみるように近年左派勢力が強まっており、一度は「実験」してその結果を確認しないと再生でないのかも。