lonelylika’s diary

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ

パレスチナ和平  イスラエルのドーハ攻撃という危機が生んだ好機・・・トランプ演出には注意も必要

(【107日 日経】)

 

イスラエルのドーハ攻撃という枠組み破壊的攻撃でむしろ高まった合意への機運】

アメリカが示したパレスチナ自治区ガザの和平計画を巡り、イスラエルイスラム組織ハマス6から、仲介国エジプトで間接交渉に臨んでいます。

 

トランプ米大統領5日、ハマス拘束下の人質解放や戦闘終結への協議が「急速に進展している」と主張。7日でガザ戦闘開始から2年。ガザ側死者が67千人を超え、餓死者も出る中、これまでになく停戦実現に期待が高まっています。

 

****ガザ戦闘終結へまもなく協議 あすで戦闘開始2年 イスラエルハマストランプ大統領提案の和平計画について話し合う****

パレスチナ自治区ガザの戦闘終結に向けた協議がこのあと行われる予定です。あす(7日)2年となるイスラエルハマスの戦闘。事態打開に近づくことはできるのでしょうか。

協議の当日もガザ地区では煙があがっています。イスラエル軍の攻撃は続いていて、アルジャジーラによりますと、5日は一日で24人が死亡しました。

イスラエルハマスの間接的な協議は6日、仲介国のエジプトで行われる予定です。アメリカのトランプ大統領が示した和平計画について話し合うもので、トランプ氏は協議を前に期待感を示しました。

アメリカ トランプ大統領 「(人質解放の)交渉は始まったばかりだ。数日かかるだろうが、非常に順調だと聞いている」

 

トランプ氏はSNSで、協議では和平計画の「詳細を詰める予定だ」と明らかにしています。また、「第一段階は今週中に完了する見込みとの報告を受けている」と投稿。「全員に迅速な行動を求める」として、進展が見られない場合には「大規模な流血が続き、誰もが望まぬ事態になる」と主張しています。

イスラエルのネタニヤフ首相は 「ハマスは無条件に降伏し、武装解除しなければならない」
ハマスが全面的に受け入れない場合は、軍事的な圧力を強めることを示唆しました。

和平計画では、ハマス武装解除し、ガザの統治にも関わらないとしていますが、ハマスはこれらの要求に対する態度を明らかにしておらず、合意に至るかは不透明です。【106日 TBS NEWS DIG

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常套句ではありますが、“両者の溝は深く、交渉の行方は予断を許さない面もある”のは後述するとして、先ずは“これまでになく停戦実現に期待が高まっている”背景について。

 

特に、イスラエルによる99日の交渉仲介国カタールドーハでのハマス幹部攻撃という中東諸国そしてトランプ政権をも怒らせる重大事案があったにもかかわらず、これまでイスラエルハマスの間の溝を越えることができなかった交渉自体はむしろ交渉枠組み破壊的な攻撃を契機に(少なくともトランプ大統領の主張によれば)まとまる方向で進んでいるとのことで、そのあたりの事情について。

 

****ガザ和平案に至るまで  イスラエル「一撃」が道開く****

米政府や中東諸国の仲介者らは数カ月前から、ガザでの衝突を少なくとも一時的に停止させ、イスラエル人の複数の人質を解放する合意案を取りまとめようと尽力していた。だがその努力が実を結ばなかった一方、最終的にはある戦闘行為が、紛争を完全に終結させる野心的計画の舞台を整えることとなった。

 

イスラエル軍99日、イスラム組織ハマスの複数の交渉人がいるカタールのオフィスをミサイルで攻撃。交渉人たちはドナルド・トランプ米大統領が示した最新の停戦案について協議するため、現地に集まっていた。

 

カタールは米国にとって安全保障上の主要なパートナー国だが、その国土へのミサイル攻撃はトランプ氏にはほとんど警告がなく、カタール政府は何も知らされていない中で実施された。

 

米国とイスラエル、そしてハマスの重要な仲介役を務めるカタールペルシャ湾の近隣諸国は激怒し、イスラエルに事態の収拾を要求。トランプ氏と中東担当米特使のスティーブ・ウィットコフ氏は、和平に向けた努力が水泡に帰すことを恐れた。

 

だがトランプ氏はその中で、危機的な状況を自身にとって有利なものに変える判断を下した。

イスラエルによるミサイル攻撃は中東諸国にとって、同地域の緊張が激化する危険性を痛感させるものであり、和平に対する思いはさらに強まった。

 

またイスラエルベンヤミン・ネタニヤフ首相がその後に控えめな姿勢を取ったこと、さらにハマスの指導者たちがホスト国にとって大きなリスクになりつつあることを受け、トランプ氏の影響力は高まる結果にもなった。

 

トランプ氏とその側近たちはさらに尽力を続け、3週間にわたるシャトル外交を実施。イスラエルカタール、そしてサウジアラビアの高官たちとの頻繁な会談の後、トランプ氏はホワイトハウスでカメラの前に立ち、自身の計画を発表した。

 

その傍らに立っていたネタニヤフ氏はこの計画を受け入れ、戦争を終わらせる意思があると述べ、中東諸国やイスラムの指導者たちもそれに続いた。

トランプ氏はこれが「文明史上、最も偉大な日の一つになる可能性がある」とした。(中略)

 

だが本当に困難な作業は、これから始まることになる。トランプ氏のチームがまとめた合意案は、戦争の初期にも示されて頻繁に議論されてきた要素が反映されているが、その中には関係者らが不満を示している条項も含まれている。

 

ネタニヤフ氏はパレスチナ国家への本格的な言及や、ヨルダン川西岸の一部を統治するパレスチナ自治政府による関与に反発。一方でハマス側は完全武装解除に歯向かい、イスラエルが撤退することをより確実にすることを望んでいる。

 

さらに中東諸国の政府は、この協定がハマスにはあまりにも厳しく、パレスチナ国家の樹立に向けた道筋についてはほぼ内容がないことから、自国民に売り込むことができないと懸念している。

 

その結果、この案が完全に受け入れられることはないと多くの関係者が内心では思っているものの、誰も公には否定できず、我慢比べの状況となっている。トランプ氏はその中で和平案に対するためらいに目を向けることなく、各国から支持が表明されたとして自身の道を突き進んでいる。(中略)

イスラエルのドーハ攻撃に)トランプ氏はいら立ちを爆発させ、より率直な反応を示した。複数の政府関係者によれば、トランプ氏はネタニヤフ氏について、「彼は私をばかにしている」と述べた。

 

米国のパートナー国であるペルシャ湾岸諸国もミサイル攻撃に激怒した。中東地域の各政府がほぼ一致した意見を示したことには、ホワイトハウスやネタニヤフ氏も驚いたという。(中略)

 

トランプ氏は(カタール首相)サーニ氏に対し、米政府がイスラエルの攻撃とは無関係だと断言した。また政府としてこのようなことが二度と起こらないように努力し、和平交渉を軌道に戻したいとも伝えた。

 

サーニ氏が(中東担当米特使)ウィットコフ氏に連絡を取り、ある考えを提案したのはその数日後だった。国連総会が迫る中、トランプ氏はガザに関する米国の和平案に関し、中東・イスラム諸国の指導者たちとの会合を開催することに前向きか、と。そう聞かれたウィットコフ氏はトランプ氏に電話をかけ、トランプ氏は迅速に同意したという。

 

ウィットコフ氏、バンス氏、ルビオ氏、そしてクシュナー氏はこの会合に先立ち、頻繁にトランプ氏と協議を行い、米政府として達成したい内容を確認。この機会を利用して、戦争を終わらせたいとするトランプ氏の考えは明確だった。同氏は断片的な合意ではなく、これ以上の戦闘や人質もなくし、ガザの復興に着手することを目指していた。

 

ウィットコフ氏とクシュナー氏はこれを受け、会合で提示する案の起草に取り組んだ。数カ月の交渉では米政府によるもの、フランスによるもの、さらにサウジアラビアによるものなど複数の案が浮上。またトニー・ブレア元英首相も自身の案をまとめていた。トランプ氏のチームはそれぞれの最良の要素を組み合わせて、単一の計画を作ることを決定。米国とイスラエルがそれまでに協議していた約7項目の計画は、21項目の提案に発展した。

 

トランプ氏は923日、国連年次総会に合わせて開かれた中東・イスラム諸国の指導者たちとの会合を主宰し、政府の計画案を提示。合意成立への意欲を改めて表明し、ウィットコフ氏に対して米国の構想を概説するよう求めた。ウィットコフ氏は迅速性を重視し、21項目を約10の主要なアイデアに絞り込み、詳細には触れずに説明を行った。

 

中東・イスラム諸国の指導者らは会合後、計画の進展について前向きなコメントを口にした。これら指導者は舞台裏では結束して対応することを決め、計画に盛り込まれるべきだと合意した項目を起草。トランプ氏は彼らの懸念が対処されること、そしてネタニヤフ氏に圧力をかけることを約束した。この中にはイスラエルによるヨルダン川西岸併合を阻止することも含まれた。

 

ウィットコフ氏とルビオ氏はその後も、中東諸国指導者たちの考えを最終草案に組み込むため、彼らと数回会合を持った。

 

カタール政府は戦争終結への明確な道筋と、パレスチナ国家樹立を含む和平プロセスを要求。エジプトは、パレスチナ自治政府がより大きな役割を果たすこと、そしてこれを支持する国連決議なしには、ガザの治安確保に協力しないと述べた。

 

中東諸国はまた、イスラエル軍がガザから完全撤退する確約と、ヨルダン川西岸が併合されない保証も求めた。さらに面目を保つため、ハマスに対して兵器を破壊するのではなく、放棄することを求めるよう提案。各国指導者たちは先週半ばには、期待していた影響力を示せたとの安心感を抱いて、会合を後にした。

 

ネタニヤフ氏は週明けにはホワイトハウスでトランプ氏と会談する予定であったことから、米国チームはイスラエルを計画に参加させることへと焦点を移していった。

 

ガザ地区への介入能力が制約されることを懸念するイスラエルは、パレスチナ国家樹立を阻止したい考えで、独自の修正案を推し進めることに躍起になった。結果的に、中東諸国が示した変更の多くが元に戻されることになった。(中略)

 

中東諸国の指導者らが計画の最終版を見た際には、各国が求めた変更の多くが迂回(うかい)され、反対する多くの修正が盛り込まれていることに驚いた。またイスラエル軍がいつ撤退するかについての具体的な記述はなく、パレスチナ国家への言及も弱められていた。

 

トランプ氏が計画を発表する直前、中東・イスラム諸国は米国に対し、これはもはや彼らが支持することに合意した内容ではなく発表は延期されるべきだと懇願。だがトランプ氏は予定通りに話を進めた。

 

同氏はホワイトハウスでネタニヤフ氏と並んで20項目の計画を発表し、「これは誰もが予想していたよりもはるかに大きなものだ」と説明。「だが、中東諸国やイスラエル周辺国、そしてイスラエルの近隣諸国から得られた支持の大きさは信じられないものだった」と付け加えた。

 

イスラム諸国は案を支持する共同声明を発表する決定を下したが、イスラエル軍の完全撤退とパレスチナ国家への確約を求め続けることも決めている。その中でいくつかの成果も達成し、ガザ復興中のパレスチナ人移住に関するトランプ氏の計画は取り下げられている。

 

トランプ氏はまた、カタールへの攻撃についてネタニヤフ氏に遺憾の意を表明させることにも成功した。謝罪を行うことは精神的にも良いものだと、トランプ氏はネタニヤフ氏に伝えた。

 

UAEムハンマド・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン大統領は今週、カタールの報道機関アルジャジーラとのインタビューで和平案について語り、「明確化が必要な事項があり、確実に議論と交渉が必要な事項もある」と述べた。

 

米政府は非公式にはこれらの交渉が展開されることを容認する意向だが、表向きにはトランプ氏はこのような考えを認めておらず、合意の成立を求めている。

 

ハマス3日夜、トランプ氏の計画を受け入れると表明した際、人質解放を戦争終結イスラエル撤退に結び付けるなど多くの条件を付けた。中東諸国の一部交渉担当者は、この回答を目にしてこれは「拒否」に相当すると結論付けた。

 

だがトランプ氏はソーシャルメディアへの投稿で異なる見方を示し、「ハマスが発表した声明に基づき、彼らは永続的な平和の準備ができていると信じている」とした。【106日 WSJ

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上記記事からわかることは、交渉枠組み破壊的イスラエルの攻撃によって、危機感が高まり、合意へ向けた機運がむしろ高まったこと、そこでトランプ大統領が合意成立のために精力的に動いたことが「合意」へ向けた流れを生んでいます。

 

ただ、中東諸国の当初の意向を反故にした形でイスラエル側の要望を受入れてトランプ大統領が合意をとりまとめ、その勢いに中東諸国も従っているというのが現実であるということ、合意にはハマスにとっても容認しがたい部分があることなどから、“両者の溝は深く、交渉の行方は予断を許さない面もある”という側面も。

 

なお、トランプ大統領はネタニヤフ首相に対しても、かなり強い姿勢でのぞんだようです。

 

****「理解できない、受け入れろ!」 トランプ氏、和平巡りイスラエル首相の足元見透かし制御***

イスラエルイスラム原理主義組織ハマスの交戦が始まってから7日で2年となったが、トランプ米大統領イスラエルハマスの双方に和平案の受け入れを強く迫ったことでパレスチナ自治区ガザでの戦闘は終結の可能性がみえてきた。

 

トランプ氏は、自身がイスラエルのネタニヤフ首相にとっての政治的な命綱であることを利用し、ハマスへの攻撃継続にこだわるネタニヤフ氏を制御している格好だ。

 

「君がなぜいつもそんなにネガティブなのか理解できない。これは勝利だ。(ハマスとの停戦を)受け入れろ!」

米ニュースサイト「アクシオス」によると、トランプ氏は3日のネタニヤフ氏との電話で、ハマスが和平案に原則同意したことへの不信感を口にしたネタニヤフ氏を乱暴な口調で責めたという。

 

202310月の戦闘開始後、米国は一貫してイスラエルの主張を支持する立場をとってきた。バイデン前政権は、停戦を働きかける半面、イスラエルへの主要な武器供与を継続。今年1月に発足した第2次トランプ政権も同様だ。

 

両政権の基本姿勢に大きな違いがない中、ネタニヤフ氏がトランプ氏の現行和平案をひとまず受け入れたのは、そうしなければトランプ氏との関係が破綻する懸念があるからだとの見方が強い。

 

汚職疑惑などで訴追を受けるネタニヤフ氏は近年、トランプ氏との蜜月ぶりを誇示して国内での求心力を維持。ガザ情勢では国際社会からの孤立を深める中でも強硬な態度を続けてきた。

 

だが、イスラエルで来年予定される総選挙を前にトランプ氏の後ろ盾を失えば、一気に失速して政治生命の危機に陥る可能性もある。トランプ氏はこうした事情を見透かし、ネタニヤフ氏への圧力に利用しているといえる。【107日 産経

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形としては、イスラエルのドーハ攻撃という「ショック」が、それまで停滞を繰り返してきた交渉を動かすことになったとも言えます。

 

カタールなどが媒介してきた交渉ルートが攻撃で直接傷つけられたことが、中東諸国に「これ以上放置できない」という緊迫感を抱かせたこと、ハマスの政治部門・外部指導部が比較的安全な場(たとえばドーハ等)にある中で攻撃を受けたことは、ハマス内部にも「今までの強硬路線を続けていていいのか」という再考を促したこと、トランプ大統領がネタニヤフ首相にカタールに対して謝罪させるなど強い姿勢でのぞんだこと・・・などがその背景にあると思われます。

 

【ただし、トランプ大統領の「危機が生んだ好機」という「物語演出」には注意も】

ただ、「危機が生んだ好機」というトランプ大統領の「演出」については注意も必要です。

 

****トランプ主張の文脈とその信憑性への注意****

トランプ政権(或いはトランプ自身)は、和平案を「危機が生んだ好機」という物語で演出しがちです。つまり、「ドーハ攻撃という紛争の激化こそが、交渉を再び前進させた」というストーリーを語ることは、米国自身の仲介・主導性を際立たせる意味を持ちます。

 

しかしながら、この主張をそのまま鵜吞みにするには注意も必要です:

実際には、交渉を前に進めるには当事者双方(特にハマスイスラエル双方)が一定の妥協的立場を取る余地を持つ必要があるわけで、単なる「攻撃 → 交渉」ではなく、長期にわたる力動・調整の蓄積が前提になっている可能性が大きい。

 

トランプの外交案(例えば 20点案、ガザ国際暫定権限機構案など)は、まだ多くの論点(ハマス武装解除、ガザ統治・移行機構、パレスチナ国家承認の扱いなど)で争点が残っており、一発で合意に至るものとは見られていません。

 

したがって、「交渉がまとまる方向で進んでいる」という報道・主張は、部分合意・停戦交渉などの前段階を指すことが多く、最終的な和平合意を意味するものではないという視点を持つべきです。【ChatGPT】

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