lonelylika’s diary

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ

ベネズエラ  政権側の圧政のもと、野党勢力の統一的な抵抗は困難な状況 周辺国で軋轢を惹起する難民

(抗議活動を行うベネズエラの野党指導者マリア・コリナ・マチャド氏=1月9日、ベネズエラ首都カラカス【1月10日 CNN】 数か月ぶりに公の場に姿を見せたマチャド氏でしたが、このとき一時的に当局に拘束されたとのこと。 現在は、地下組織の結成を呼びかけています。)
 
 
マドゥロ政権の圧政のもと、足並みが揃わない野党勢力 選挙での与党勝利を許す】
マドゥロ大統領の強権支配が続く南米ベネズエラ
野党による反政府活動は政権側の圧政により封じ込まれている印象。
 
****ベネズエラ国内の市長選、カラカス主要市で野党勝利****
ベネズエラで7月27日に市長選挙と市議会議員選挙が実施され、市長335人、市議会議員2,471人が選出された。任期は4年間。
 
報道によると、投票率は44%超で、投票期間中に暴動などは発生していない。市長選では、首都カラカスのチャカオ市、バルタ市、エル・アティジョ市で野党が勝利したが、全体では335市長選のうち304が最大与党・統一社会党(PSUV)の勝利だった。5月25日に行われた州知事選挙でも、24州のうち首都を含む23州で与党が勝利している。
 
選挙管理委員会(CNE)による選挙結果の発表はYouTubeなどで確認できるものの、ウェブサイトはアクセス不可の状態が続いている。
 
今回の選挙では、投票率の低さが問題視されている。特に若年層の関心が薄く、「2024年の大統領選では若者の間でも選挙への関心が高かったが、今回は対照的に若年層の投票率が非常に低い」と、ベネズエラ大学センターのミゲル・アンヘルスアレス会長は述べた。「ベネズエラ国民は選挙を通じて政治体制を変革できるという希望を失っている」と、隣国コロンビアのロサリオ大学のベネズエラ研究家、ロナル・ロドリゲス教授は指摘している。【8月1日 JETRO
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この選挙で、与党PSUV(チャビズモ)が85%以上の市長職と知事職を維持し、80%を超える議席を占めました。ただし投票率は約44%と低調であり、野党の大部分が不参加またはボイコットを呼びかけた結果ですので、これをどう評価すべきかは微妙なところ。
 
いずれにしても野党側が公然と統一的に政権と対決できる状況にはないようです。
 
****最近のベネズエラ国内でのマドゥロ政権と反政府勢力(特にマリア・コリナ・マチャド率いる野党)の関係****
州・選挙を巡る圧政と法案強化
反政府勢力に対する拘束と取り締まりは継続しており、フォーロ・ペナルによれば現在850名以上の政治犯が収監中であり、拘束と解放が行き来する「出入り口型拘束」が指摘されています。
 
国内の国会(国民議会)では、反政府活動を取り締まる「反ファシズム法」や、社会団体・NGOを事実上封じ込める「反ソサエテ法」など厳格な法案が進行中で、反対派への言論・組織活動の制限が強化されています
 
野党指導者の対応と呼びかけ
野党指導者マリア・コリナ・マチャドは長期にわたり身を隠しており、最近では「国内に地下組織を結成し、必要時に市民・軍人・警察による市民的行動を準備せよ」と呼びかけています。これは反体制行動の新たな段階を示すものです。【ChatGPT】
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野党側の足並みの乱れも指摘されています。
 
****ベネズエラ議会選挙、与党が圧勝 野党足並みそろわず****
ベネズエラで(5月)25日実施された議会選挙は、野党が分裂する中、マドゥロ大統領の与党・統一社会党が83%近くを得票し、過半数議席を維持した。

選管は、党・会派別の獲得議席数は明らかにしていない。与党寄りとみられる会派の得票率は6.25%、野党連合は5.17%。

24州の州知事選挙では、野党候補が勝利したのはコヘデス州の1州のみで、前回21年の選挙の4州から減少した。

投票率は42.6%で、21年とほぼ同水準だった。

今回の選挙で野党は、マドゥロ氏が勝利した2024年7月の大統領選挙の結果に抗議し、投票者に棄権するよう呼びかける党と、政治への関与を維持するため投票を訴える党があり、足並みがそろわなかった。【5月26日 ロイター】
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移民問題や石油産業という実務的課題で微妙な交渉が続く対米関係】
アメリカ・トランプ政権との関係で見ると、敵対的言葉が飛び交い制裁が主張される一方で、移民問題や石油産業という実務的課題を通じた微妙な協調も見られる・・・という硬軟両様の状況が見られます。
 
****ここ数か月(現在2025年8月時点)のアメリカとベネズエラの関係****
1. ドナルド・トランプ政権の強硬政策
2025年3月24日、トランプ大統領は「ベネズエラの石油を購入する国にはアメリカからの全輸入品に対し25%の追加関税を課す」大統領令(Executive Order 14245)を発出しました。これにより他国経由でのベネズエラ産石油の輸入も対象となり、地域にも広範な影響を与えました。
 
同時期、米国はMigrants policy を見直し、ベネズエラからの不法滞在者の大規模退去(特に「Tren de Aragua」犯罪組織関係者とされる人々)を進めました。
 
2. 人質交換と移民問題での交渉
2025年初頭、トランプ政権特使リチャード・グレネルがカラカスを訪問し、ベネズエラに拘束されていた米国人6名の解放と、「Tren de Aragua」疑いで拘束されたベネズエラ人の米国外退去(エルサルバドルの収容施設への移送)を交渉しました。
 
その後、2025年7月18日にさらなる人的交換が成立。米国人10名の解放と、エルサルバドル収監中だった252名のベネズエラ人をベネズエラに送還する三国協定が実施されました。
 
3. 石油関連制裁と企業運営の制限
4月に再び石油制裁が強化され、Chevronを含む複数のエネルギー企業に対する米国の限定許可が撤回され、ベネズエラ石油の輸出が停止されました。
 
しかし7月末になって、Chevronに対して限定的な業務再開の許可が出され、輸出の部分的再開が予定されるようになりました。支払はベネズエラ政府に直接行わず、代替的仕組み(ロイヤリティ支払い、オイルスワップなど)が設けられています。
 
4. 外交スタンスの対立と内部調整
外交政策を巡り、トランプ政権内ではマルコ・ルビオ(国務長官)とリチャード・グレネル(特使)との間でアプローチの対立が浮き彫りに。ルビオ氏は強硬改革を主張し、グレネル氏は交渉での実務的解決を模索しており、これが政策決定に影響しています。
 
5. 人権と旅行警告の強化
米国国務省は、ベネズエラへの旅行を「レベル4: Do Not Travel(渡航禁止)」とし、拘束や冤罪拘留のリスクを明記しています。
一方、ベネズエラ側は6月初旬にトラベルバン反発として、「アメリカ滞在は極めて危険」との声明を出し、政府を「ファシスト」と糾弾しました。【ChatGPT】
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国務長官ルビオ氏は「マドゥロ政権は違法」との立場から、 どのような譲歩も拒否し、Chevronへのライセンス延長反対や制裁継続を頑強に主張しているのに対し、特使のリチャード・グレネル氏は人質・移民問題やChevronの業務に関して交渉による現実的対応を重視しており、アメリカとしての統一対応にも揺らぎが見られます。
 
【約790万人のベネズエラ難民が周辺国で惹起する軋轢も】
これまでの経済破綻と政治混乱は多くの難民を生み出しています。
UNHCR(国際連合難民高等弁務官事務所)によれば、“約790万人が保護とより良い生活を求めてベネズエラを離れました。その大半(670万人以上)は、ラテンアメリカカリブ海諸国で受け入れられています。”【2025年5月】とも。
 
当然ながら、受入国となった周辺国で大きな軋轢も惹起しています。
 
****破綻国家ベネズエラの“経済難民”は770万人!アルゼンチン・チリで見聞した『嫌われ者のベネズエラ難民』****
(中略)
2人の独裁者により二十数年間で国家が破綻したベネズエラ
日本外務省のウェブサイトでベネズエラを検索すると2024年の人口2646万人、1人当たりGDPは3870ドル、失業率は不明とある。数字の出典は国際通貨基金の公表データとの注釈。ベネズエラ国家には信頼できる統計数字が存在しないようだ。
 
そして累計780万人の国民が近隣ラテン諸国(コロンビア、ペルー、チリなど)に流出したとある。  
 
IMFのデータによるとベネズエラの2018年の失業率は36%でその後はデータがない。ちなみに悪名高いウーゴ・チャベスが大統領に就任する前の2000年の失業率は14%である。ウーゴ・チャベス(在任2002年〜2013年)、ニコラス・マドゥ―ロ(2013年〜現在)の2人の独裁者大統領により、わずか二十数年の間に潤沢な石油輸出収入により中南米でトップクラスの豊かな国であったベネズエラが国家として破綻したのだ。
 
桁違いのベネズエラ経済難民、770万人ってホント?
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によるとベネズエラ難民は2024年時点で770万人。難民の居住国はコロンビア290万人、ペルー100万人、エクラドル47万人、チリ44万人となっている。アルゼンチンは40万人程度らしい。とにかくとんでもない数字である。  
 
日本では川口市周辺のクルド人が2500人に増加したと大騒ぎになっているが人口5200万人のコロンビアに300万人近いベネズエラ難民が押し寄せているというのだ。筆者にはどんな状況なのか想像もつかない。
 
ベネズエラ人は治安悪化の根源なのか、チリのベネズエラ
3月9日。チリ南部の港湾都市パタゴニアの観光拠点であるプエルトモントのホステルの女将49歳のエリーと、ゲストのチリ北部から来たスポーツトレーナー氏の2人と歓談。治安問題の話になったら2人は挙ってベネズエラ難民を批判した。
 
2人はチリには約50万人のベネズエラ難民がいるが彼らにより治安が悪化して社会の不安要因となっていると主張。  
 
エリーによると、ホステルの対面にある空き地がベネズエラ人のフードデリバリー配達員の溜り場となっていて多い時で十数人が騒いでおり近隣の住民は恐いので夜間は遠回りして帰宅するという。  それゆえチリ国内では『ベネズエラ人は国に帰れ』(Venezuelan go home)という声が日々大きくなっているとのこと。  
 
3月13日。チリの人気番組である朝のニュースショーでは、前日夕刻サンチアゴ市内でベネズエラの若者がパトロール中の警官と揉めたことをきっかけに、大勢のベネズエラ人が加勢に入り暴動に発展して、駆けつけた機動隊と衝突した事件を報じていた。29人のベネズエラ人が拘束される騒動だった。  
 
TVの人気コメンテーターは顔をしかめて、視聴者に危険な通りを歩かないように注意喚起していた。一緒にTVを見ていた女将のエリーによるとコメンテーターの発言内容はベネズエラ人が沢山いるような場所は危険であると暗に示唆しているとのことだった。(中略)
 
ブラジル、コロンビアのベネズエラ難民は?
3月12日。プエルトモントのホステルでブラジルのマナウスの北東の町から旅行にきたIT企業を経営する50歳の女性と会った。ブラジル北部は人口も少なく、働き口が少ないのでベネズエラ人はほとんどいないという。ブラジルでもサンパウロリオデジャネイロなど大都市にベネズエラ難民がいるという。  
 
ブラジルは大国のわりにはベネズエラ難民が少なく二十数万人程度なので市民生活への影響が余りないのかもしれない。  
 
4月16日。コロンビア人の石油掘削の熟練労働者フェルナンドによると、300万人ものベネズエラ人が住み着いているコロンビアでは、凶悪犯罪が急増している。特に拳銃による殺人が顕著だと。現在のコロンビアは従来からの麻薬マフィアと、ベネズエラ人マフィアに支配されていると嘆いた。  
 
そのためフェルナンドは生活拠点をペルーに移した。上の子ども2人は学校を出てコロンビアで働いているが、奥さんはペルー人なので現在は下の子ども3人と奥さんとリマで暮らしているという。
 
ベネズエラ難民の大多数は善良な人々なのか
筆者は滞在中にアルゼンチンもチリも治安悪化が社会問題となっていると感じた。特にチリはボリッチ政権の無策のために、治安悪化が最重要政治問題となっていた。
 
筆者には両国の人々が治安悪化の原因をベネズエラ難民であると安易かつ感情的に結び付けているようにも思えた。  本稿第6回(『ラテン世界を席捲する“スシ”、寿司ネタの王様はやはり「あの食材」だった!地球の裏側にある日本食堂の経営戦略』)にて紹介した“ベネズエラ人が17人も働いている繁盛スシ・レストラン”のように勤勉に働いている若者も大勢いるのではないか。  
 
3月28日。チリ南端のフィヨルドの入り江の港町プエルト・ナタレスのホステルで同宿したブエノスアイレス在住の水道技術者のエリオの指摘は正鵠を得ていた。「ベネズエラ人の流入を快く思わないアルゼンチン人は多いが、ベネズエラ人がアルゼンチン人の嫌う3K職場で低賃金に甘んじて働いている。彼らがアルゼンチン経済を支えていることを評価するべきではないか」とエリオは指摘した。  
 
3月24日。ブエノスアイレス近郊出身の若手エリート警察官のマウロは「アルゼンチンの警察は、ベネズエラ人に対してステレオタイプな差別はしない。アルゼンチン警察は法律を守って仕事をしているベネズエラ人に対しては、アルゼンチン市民と同様に接している。それが我々警察官のプライドなのだ」と正論を堂々と語った。  
 
彼らの冷静で客観的な見解は、良識のある善良な市民の声を代表しているように思えた。そうしたサイレント・マジョリティーが社会に存在しているからこそ、770万人という膨大な数のベネズエラ経済難民は、異郷の地で生きてゆけるのではないだろうか。そう信じたい。 以上 次回に続く【7月20日 WEDGE
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サイレント・マジョリティーがどちらの側にあるのか・・・良識のある善良な市民の声としてあるのか、それとも難民を拒否する怒り・不安の声としてあるのか・・・日本の先日の選挙結果など見ても、あまり楽観的にはなれません。