
(ウクライナとの戦闘で死亡したロシア軍兵士の墓(2025年2月20日、ロシア西部ニジニーノブゴロドで)【2025年2月23日 読売】)
【トランプ大統領:ゼレンスキー大統領に「行動」を求める ゼレンスキー大統領「ウクライナがあまりにも頻繁に譲歩を求められている」と不満】
ロシア軍がウクライナに侵攻した2022年2月24日から4年が経過しようとしていますが、戦闘は終結せず、和平交渉もウクライナ・ロシアの間の主張の隔たりは埋まっていません。
ロシアの支配地域をどこまで認めるかという「領土問題」、戦争終結後のロシアの再侵攻を抑止する「安全保障」などが主な争点となっています。
****ウクライナ外相、対ロシア和平協議で残る懸案「首脳会談」で解決必要と指摘****
ウクライナのシビハ外相はロイターのインタビューに応じ、ロシアとの和平協議で残る領土問題などの重要な懸案事項について、両国の首脳レベルの対面会談による解決が必要だとの認識を表明した。
現在のウクライナとロシアの協議は、トランプ米大統領が示した20項目の提案がたたき台になっている。こうした中でシビハ氏は「戦争を止められるのはトランプ氏だけだ」と改めて指摘し、11月の米議会中間選挙など新たな流動的要素が加わる前に、和平の取り組みを加速させたいと強く訴えた。
一方でシビハ氏は「数項目が(協議対象として)引き続き存在している。最も機微に触れる難しい事案は首脳間で対応しなければならない」と語った。
特に領土問題でウクライナとロシアの主張は依然かけ離れている。ロシアは、ウクライナがなお保持する東部ドネツク州の残り20%を引き渡すよう要求し、ウクライナはかたくなに拒否。ウクライナは、ロシア占領地域にある欧州最大のザポリージャ原発の掌握も求めている。
2月4─5日に中東のアブダビで開かれたウクライナ 、ロシア、米国の三者協議では事態打開の兆しは見えず、合意されたのは捕虜交換だけにとどまった。
ウクライナはこの戦争が終結した後、ロシアによる再侵攻を抑止する上で西側による安全の保証供与も重視している。
シビハ氏によると、米国は議会で安全保障の提供を批准する用意があることをウクライナに確認した。その後、和平合意を支援する安全保障上の「最終手段」を提供するが、ウクライナ国内に米軍部隊を派遣することはないという。
同氏は「現段階では、米国抜きでの安全保障インフラや枠組みはあり得ないと個人的に考えている。われわれは米国を味方につけねばならない。そして彼らはその過程にある。これは非常に大きな成果だ」と述べた。【2月9日 ロイター】
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ウクライナ・ロシア・アメリカの3カ国は1月下旬と2月上旬、アラブ首長国連邦(UAE)の首都アブダビで2回にわたり高官協議を実施。ただ、和平案の焦点であるウクライナ領の扱いなどを巡って結論は出ず、今月17日には3回目のウクライナ・ロシア・アメリカの高官協議がジュネーブで予定されています。
「勝てない戦争を始めた」ウクライナ側の責任を日頃主張し、ロシアに宥和的な言動も多いトランプ大統領は、ゼレンスキー大統領に決断を促す圧力をかけています。
****トランプ氏、ゼレンスキー氏に行動要求 和平機会逃すと警告****
トランプ米大統領は13日、ウクライナのゼレンスキー大統領が「行動を起こさなければ」和平の機会を逃すという認識を示した。
トランプ大統領は記者団に対し、「ロシアは合意を望んでおり、ゼレンスキー大統領は行動を起こさなければならない。さもなければ、絶好の機会を逃してしまうだろう」と語った。【2月14日 ロイター】
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「ルール」や民主主義などの「価値観」よりは「力」が国際秩序を決めるという考えのトランプ大統領としては、軍事侵攻したロシアの責任はさほど問題ではなく、アメリカ・ロシアという力ある大国が決める結着に「小国」ウクライナは従うべきだという発想なのでしょう。
こうした流れに、ゼレンスキー大統領は「ウクライナがあまりにも頻繁に譲歩を求められている」と不満を示しています。
****米はウクライナに「譲歩求めすぎ」、ゼレンスキー氏が不満吐露****
ウクライナのゼレンスキー大統領は14日、ミュンヘン安全保障会議で演説し、来週ジュネーブで開催される米国仲介の和平協議について、実質的なものとなることを期待すると表明する一方、ウクライナが「あまりにも頻繁に」譲歩を求められていると不満もにじませた。ロシアが交渉団トップを交代させたことについては、決定を遅らせようとしているとして非難した。(中略)
ゼレンスキー氏は、トランプ米大統領から「若干の」圧力を感じていると認めた。トランプ氏は13日、ゼレンスキー大統領が「行動を起こさなければ」和平の機会を逃すなどと述べている。
ゼレンスキー氏は「米はしばしば譲歩の話を持ち出すが、譲歩がロシアではなくウクライナのみを前提に議論されることが多すぎる」とし、ウクライナは多くの譲歩を行っており、ロシアがどのような妥協を受け入れる用意があるかを聞きたいと語った。【2月15日 ロイター】
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【開始から4年 ロシア社会にも疲労感】
一方、ロシアも、トランプ大統領が当初のロシア主張をほぼ丸呑みした立場から後退していると不満を示しています。
****「米国が立場変更」とロシア外相 ウクライナ和平で不満****
ロシアのラブロフ外相は9日までに、ウクライナ和平を巡りトランプ米政権が立場を変更したとして不満を表明した。ロシアは昨年8月の米ロ首脳会談で米国の提案を受け入れたが「米国は現在(その提案を協議する)用意がないようだ」と述べた。同日公開されたロシア系メディア「TV BRICS」のインタビューに答えた。
米国の提案は公表されていないが、ロシアが主張する「ウクライナ紛争の原因の根本的な除去」に関するロシアの要求を幅広く取り込んだ内容だったとされる。ラブロフ氏は、最近実施された米ロ、ウクライナの3カ国高官協議で、米国の立場が米ロ首脳会談時よりも後退したとして反発しているとみられる。
ラブロフ氏は、ロシアは米国提案を受け入れてウクライナ問題を解決し、幅広い協力に移行する想定だったが「現実は全て逆だ」と指摘。米国が新たな対ロ制裁を科し、インドなど友好国にロシア産エネルギーの購入禁止を迫っていると批判した。【2月10日 共同】
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戦争が長期化するなかで、ウクライナ側が連日のロシアの攻撃に曝され、電力施設が損傷し、多くの国民が厳しい冬を暖房なしで乗り切ることを強いられているといったあたりは周知のところですが、ロシア側も「戦争の代償」は大きなものになっています。
もちろんロシアは自国が直接攻撃に曝されることは少なく、直接的被害を受けているウクライナとは比べようもありませんが、プーチン大統領は国民に不人気な「戦争」を極力意識させない形でなんとかしのごうとしていますが、4年にも及ぶ戦争の傷はロシア社会も蝕んでおり、大きな問題を生んでいます。
****独ソ戦超えた「特別軍事作戦」 軽視される露国民の疲労感=真野森作****
1418日。第二次大戦でソ連がナチス・ドイツに勝利するまでの日数だ。ロシアでは先の大戦を「大祖国戦争」と呼ぶ。プーチン政権は、国民の団結を促す歴史的な出来事として重要視している。
2026年1月11日、ロシアがウクライナで続ける「特別軍事作戦」が開始から1418日目を迎えた。時間的長さにおいて独ソ戦を超えた。
ロシアにとって、今回の戦いは総力戦ではない。自国側の死者数は非公表だが、独ソ戦の推計2700万人より桁違いに少ない。地上戦はほぼウクライナ領内のみで展開されている。このように独ソ戦との違いは大きいが、その長期化によってロシア国民の間で「戦争疲れ」は確実に広がってきた。
25年12月19日、モスクワで開かれたプーチン大統領の年末記者会見でも、それを感じさせるやりとりがあった。
「『ウクライナに関するこうした(記者会見の)放送にはうんざりだ』と。同感です。終わりにしなければなりません」。プーチン氏は、国民のメッセージとされる文章を読み、こう語った。疲労感に理解を示したと言えるが、この会見の冒頭では「危機の根本原因の除去」を訴え、開戦当初と何ら変わらぬ強硬姿勢も示した。
つまり、プーチン氏は国内のうんざりムードを承知の上で、自らが掲げる戦争目標の達成を追求し続けているということになる。
年末記者会見では、会場後方に大画面があり、国民からのメッセージとされる文章が次々と映し出されていた。現場で記録できた文章を紹介したい。
経済状況への不満が複数示されていた。「欧米依存は良くない。では中印依存は良いのか?」「なぜ普通の労働者はもはや大衆車を買えないのか?」
移民排斥感情も書き込まれていた。「連邦下院はいつになったら、中央アジアからの移民の家族や親族の入国を禁じる法案を可決するのか?」
「大統領、(ウクライナ南部の港湾都市)オデッサを奪取しろ!」。こんな対ウクライナ強硬路線のメッセージも流れた。
そうした中で、政権の振る舞い全体を批判するような短い文章が印象に残った。「いつこのショーは終わるのか?」とあった。【2月15日 毎日】
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【ロシアの戦死者は17万人にも及ぶ その多くがカネで集められた極東やシベリアの貧困層 命に地域格差】
ロシア本土が攻撃されている訳ではありませんが、ロシアは17万人とも25万人ともいわれる膨大な戦死者を出しています。
プーチン政権は国民を戦争の不安に直面させる「動員」ではなく、カネで兵士を集めていますが、その対象はモスクワなどの大都市を避け、貧しい極東・シベリア・少数民族などに偏っていると言われています。
****ロシアの戦死者は17万人、重症者は50万人超…「命の値段」が地域で全然違うプーチンの"残酷な計算"****
小泉 悠氏:東京大学先端科学技術研究センター准教授
小林 昭菜氏:関東学院大学准教授
ロシアの戦死者は17万人にも及ぶ
【小泉】アメリカ国防情報局(DIA)の見積もりでは、2025年3月時点でのロシアの戦死者は17万人とされています。25万人というデータもありますが、17万人だってとんでもない数字です。アフガン戦争は10年やって戦死者が約1万5000人ですからね。戦死者の3、4倍の重傷者が出ているとすれば、50万人から70万人が傷を負って帰ってくる。
この人たちのメンタルヘルスが加われば、抗うつ剤の処方が1.5倍になるでしょう。さらに「連邦軍の兵士として戦った結果」というのならまだしも、「ワグネル」みたいな民間軍事会社の社員ということになると、一時金がもらえるだけで、ちゃんとした社会保障もない。
【小林】SNSでは「屠殺とさつ場に送られたダヴロボーレツ(志願兵)」と言われていますよね。
【小泉】衛星画像でいろんな墓地を見ているとき、ユジノサハリンスク近郊に「モニュメントがあるし、明らかに戦死者の墓だな」というところを見つけたので、現地の人に見に行ってもらいました。そうしたら、連邦軍だけではなくワグネルの兵士の墓もあると言っていましたよ。
このほかにも、ロシアの各地で軍人用墓地と見られるものがたくさんできているのが衛星画像で確認されています。こうしたロシア社会の今の重苦しさは確実にあるんだろうと感じました。
地域によって異なる“命の値段”
【小林】兵器も複雑化しているから死ぬ確率も高いですし、極東やシベリアの貧困層ほど戦争に行かざるを得ないという状況ですからね。
【小泉】別の対談でも話したんですが、地域格差は凄まじいです。10万人あたりの戦死者を連邦構成主体別に出してみると、一番戦死者が少ないモスクワが10万人あたり12人程度なのに対して、地方によっては300人以上というところもある。命の値段が全然違うんですよね。(中略)
【小林】地域差は貧しさでもありますね。
【小泉】貧しさと戦死率の相関は全ての地域で確認できるわけではないんですが、明らかにそうだという地域もまたあります。先ほど、「戦争反対の声を上げないのは、みんな生活があるからだ」という小林さんのお話がありました。教育ローンや仕事がある中間層、言い換えれば「守るものがある人たち」は、声を上げない代わりに戦争に行かずにすんでいる面がある。
死ぬかもしれない戦争に志願者がいるワケ
【小泉】一方、実際に戦争に行ってるのは、もっと貧しい人たちです。ローンなんか組めないような人たちが、国防省の提示する高額の報酬に惹かれて志願するわけです。2024年までのロシアは戦時景気で給与水準が上がっていましたが、それでも全国平均で8万5000ルーブルくらい(約12万円)。
これに対してロシア国防省が提示する報酬は一番下の兵隊レベルでも20万ルーブル以上になるみたいですね。加えて戦場行きを志願した人に対しては州政府などから数百万円の祝金が出るところもあります。これが「生きて帰ってこられるかわからない」という戦争であっても、志願者がいる理由です。
【小林】徴兵について言えば、プーチンが動員をとめた影響も大きいですよね。
【小泉】プーチンが「部分動員」を呼びかけたのは22年9月の1回だけ。「軍隊経験のある予備役30万人を召集する」というプランでした。つまり、男子国民の義務である有事の予備役動員義務を戦後初めて発動したんですね。
ところがこれは公的な義務だから、召集令状がみんなに平等に届いてしまう。
大学の予備将校課程は「軍隊経験に含まない」と軍は当初から言っていて、おそらくこれはエリート大学を出た人たちまで動員しないという配慮だったと思うんですが、そこまでのエリートではない、普通の中産階級の人々にも、日本で言う赤紙がバンバン届いてしまった。
人命をおもちゃのようにポイポイ捨てる
【小泉】私の知り合いでも召集令状を受け取った人がいて、こうなるとみんなパニックになるし、プーチンに対して「戦争をやめろ!」という声も出てきます。テレビの向こうの話だと思っていた戦争が自分や自分の家族のところに迫ってくると、沈黙していた中産階級も反抗するわけです。
だからプーチンはこれ以降、公式の動員は一度も行っていなくて、代わりに前述のようにカネの力で解決することを選んできました。ものすごく嫌な言い方ですが、貧しい人が戦場で死んでいっている分にはなかなか社会的問題にならず、したがって政権へのダメージにもならないという計算なのだと思います。(後略)【2月15日 PRESIDENT Online】
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【障害負った帰還兵、帰還兵の失業なども大きな問題に】
戦死者だけでなく、障害負った帰還兵、帰還兵の失業なども大きな問題になっています。
****ロシア“障害負った帰還兵”増加で苦慮…戦争の代償とは〜ウクライナ侵攻4年〜****
ウクライナ侵攻からまもなく4年となる中、ロシアでは戦闘で障害を負った帰還兵が増え、プーチン政権も対応をせまられています。
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今月、私たちが訪れたのは、ロシア南部ボロネジ州です。 ウクライナの戦場で負傷したおよそ30人の帰還兵が、リハビリや心理的ケアなど様々な支援を受けていました。
リハビリ中の帰還兵:「負傷した当初は、これほど支援があるとは思っていませんでした。退役軍人として自動車を受け取り、車用のリフトも支給される予定です」
州政府はリハビリ施設を今後も増やしていくといいます。
ボロネジ州・社会保障相:「帰還兵のリハビリは、州の最優先課題の一つです」
■義足などの需要が急増
負傷兵が前線から戻ってくるのに伴い、いま、ロシアで需要が急増しているのが…
義肢会社・スタッフ:「歩き出すと“義足”が動きを自動で調整します」
ロシア軍では、障害認定された負傷兵の半数が手足を失っていて、義足などを支給する今年の国家予算は戦前の3倍、およそ2000億円に達しています。
帰還兵:「国が一定額の補助金を支給してくれます」
高機能の義足は140万円から500万円と高額ですが、全額国の負担です。
■帰還兵へのサポートの裏に“危機感”
こうした帰還兵への手厚いサポートの裏には、プーチン政権の“危機感”があります。
先月には、帰還兵の失業者数が「25万人」と国営メディアが報道。しかし、その直後「数万人」に“下方修正”したといいます。 帰還兵の不満が高まればプーチン政権を揺さぶりかねず、都合の悪い事実を隠蔽(いんぺい)しようとした可能性も。
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帰還兵にくすぶる“不満”…
私たちが取材したのは、日本のアニメが好きだという帰還兵の25歳の男性です。
帰還兵の男性(25):「塹壕(ざんごう)を掘っている時、突然地面が爆発して砲撃が始まったと分かりました。逃げる途中で意識を失いました」
侵攻開始直後の2022年3月に重傷を負い、下半身不随となりました。こう本心を打ち明けます。
帰還兵の男性(25):「国の支援はありますが、最後までは面倒を見てくれません。本気で働きたいと思っていても、要望は聞きましたと言われるだけで、それ以上先に進みません」
自らが戦ったウクライナでの軍事作戦については…
帰還兵の男性(25):「(軍事作戦について)最初からなかったみたいに、完全に興味を失いました」
■失業問題に加え…帰還兵の犯罪も
失業問題に加えて、帰還兵による凶悪事件の増加も社会の不安定化につながりかねません。帰還兵の犯罪件数は、少なくとも8000件に上ると報じられています。
いまだ和平への道筋が不透明な中、戦闘の長期化は、ロシア社会にも重い代償を突きつけています。【2月14日 日テレNEWS】
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