lonelylika’s diary

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ

カナダとトランプ大統領の軋轢 米議会は対カナダ関税に反対決議 トランプ氏は自由貿易協定離脱検討

(【211日 日経】カナダのオンタリオ州アメリカのミシガン州を結ぶゴーディ・ハウ国際橋 カナダの建設費負担で建設が進むこの橋に、トランプ大統領は「開通を許可しない」と息まいています)

 

【様々な分野で続くアメリカとカナダの対立】

主要7カ国(G7)の中で、カナダほど貿易関係が一極集中している国はありません。カナダの輸出の約7割が米国向けで、輸入の大半も米国からです。

 

そのカナダがアメリカ・トランプ政権と間で強い軋轢を抱えていることは、24日ブログ“脱米へ一歩踏み出す流れ 「大国に従い、安全を買う時代の終焉」「いま引き下がれば、尊厳を失う」”でも取り上げました。

 

世界が注目するダボス会議でも、カナダ・カーニー首相がアメリカ主導のパックス・アメリカーナの終焉を示唆し、大国に従う事で安全が買える時代は終わったと指摘。中堅国が協力し、新しい秩序を構築する必要性を訴え、異例のスタンディングオベーション(大きな拍手)を受けました。

 

一方、トランプ大統領は「カナダは米国のおかげで生きている」と“思い上がり”を批判し、カナダと中国が貿易協定で合意した場合、カナダから米国に輸入される全ての製品に対し100%の関税を即時課すと自身のSNSで警告しています。

 

ダボス会議、カーニー首相訪中・中国との経済関係強化だけでなく、昨年のトランプ第2期政権発足以来、軋轢が続いています。

 

****2期トランプ政権発足(20251月)以降に顕在化・激化した米加関係の軋轢****

2025

1月 トランプ政権発足直後:対カナダ通商圧力の再開

USMCA(米加墨協定)見直しを示唆。 乳製品の供給管理制度(カナダの高関税・輸入枠)を再び問題視。 木材・アルミ・鉄鋼への追加関税検討を表明。

特徴:第1期と同様、「対EUより対カナダが厳しい」通商姿勢が復活。

 

23月 エネルギー・資源摩擦

カナダ産原油・電力への依存度を問題視。 「エネルギー安全保障上の対外依存削減」を主張。

カナダ側は「北米統合市場の原則に反する」と反発。

 

4月 EV・自動車補助金問題再燃

米国のEV税控除制度(北米生産優遇)を強化。 バッテリー原材料の「米国内調達比率」引き上げ案。

カナダは「サプライチェーン分断」と批判。

 

6月 国防・対中政策をめぐる温度差

米国:対中デカップリング加速要求。 カナダ:対中輸出(資源・農産物)維持姿勢。

5GAI・鉱物投資規制でも足並み乱れ。

 

8月 北極圏・防衛負担問題

米国がNORAD近代化費用の増額負担を要求。 カナダの防衛費GDP比(NATO基準未達)を批判。

北極航路・資源開発の主導権でも緊張。

 

10月 デジタル課税・IT規制

カナダのデジタルサービス税(DST)に対し、米IT企業差別と非難。 報復関税を警告。

 

2026

1月 USMCA再交渉圧力が本格化 米政権が協定再改定の前倒しを要求。 原産地規則(自動車)厳格化案。

カナダは「サプライチェーン混乱」を懸念。

 

1月 鉄鋼・重要鉱物調達問題

米国が政府調達で「Buy American」拡大。 カナダ産鉄鋼・ニッケル・レアメタル排除懸念。

カナダはWTO提訴も示唆。

 

2月 ゴーディー・ハウ国際橋問題(後述)

トランプ大統領が開通阻止を示唆。 「カナダが両岸の土地を所有」 「米国は十分な利益を得ていない」と批判。 所有割合見直し・補償要求を主張。

カナダ政府・ミシガン州が反発。

 

上記の時系列整理事案とは別に、政権発足後ずっと並行的に続く構造的対立テーマも存在します。

 

1. 農業(乳製品・小麦)

カナダの供給管理制度に対し、米酪農団体が強く圧力

 

2. 木材(ソフトウッド材)

米住宅業界 vs カナダ林業 ダンピング関税問題が再燃

 

3. 自動車サプライチェーン

原産地規則 EV補助金 バッテリー鉱物調達

 

4. 対中政策

投資規制 技術輸出 鉱物供給網

 

5. 防衛費・北極圏

カナダの軍事費不足 北極インフラ整備遅れ   【ChatGPT】

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【“言いがかり”に思えるトランプ大統領が持ち出すゴーディー・ハウ国際橋問題】

新たにトランプ大統領が持ち出したのが、ゴーディー・ハウ国際橋問題

 

****トランプ氏、アメリカとカナダを結ぶ橋の開通を阻止すると脅す****

ドナルド・トランプ米大統領9日、アメリカがカナダに提供してきた「すべてに対して完全に補償される」まで、アメリカとカナダを結ぶ橋の開通を阻止すると脅した。

 

カナダのオンタリオ州アメリカのミシガン州を結ぶゴーディ・ハウ国際橋についてトランプ氏は、カナダ政府が「我々が当然受けるべき公平さと敬意をもってアメリカを扱う」まで開通しないだろうと、ソーシャルメディアに投稿した。

 

橋の建設事業の公式サイトによると、この橋の建設費用はカナダ政府が提供しているものの、カナダとミシガン州の双方が公的所有する予定。

 

トランプ氏がどのように開通を阻止できるのかは不明だが、大統領は交渉を直ちに開始するとして、詳細は示さなかった。

 

デトロイト川にかかり、米ミシガン州デトロイトとカナダ・オンタリオ州ウィンザーを結ぶこの橋は、2026年初頭の正式な実地検査と承認を経て、開通される予定。2018年の着工以来、10年以上にわたり両国間の争点となってきた。カナダ放送協会によると、建設費用は64カナダドル(約7340億円)と推定される。

 

トランプ氏は自分のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」で、アメリカは「この資産の少なくとも半分」を所有すべきだと主張した。また、カナダが橋のカナダ側とアメリカ側の双方を所有しているとの意見を示した。

 

事業の公式サイトによると、橋を開発するウィンザーデトロイト橋機関は、カナダ政府が全額出資する組織だ。

トランプ氏は、「カナダ政府は、アメリカをただ『いいように利用』できるように、私がそんなことを許可すると思っている!」と書いた(太文字は原文ですべて大文字)。

 

大統領はさらに、「アメリカが彼らに与えてきたすべてに対して完全に補償されるまで、この橋を開通させるつもりはない」とも書いた。

 

ゴーディ・ハウ国際橋の隣には、すでにミシガン州デトロイトオンタリオ州ウィンザーを結ぶアンバサダー・ブリッジがある。この橋を所有するミシガンのモルーン一族は、第1次トランプ政権当時、新しい橋は自分たちが持つ通行料徴収の独占権を侵害すると主張し、新たな橋の建設中止をトランプ氏に働きかけていた。

 

これに対し、トランプ氏とカナダのジャスティン・トルドー首相(当時)は、橋が両国間の「重要な経済的つながり」だとする共同声明を発表していた。

 

トランプ氏は9日、両国の最近の貿易摩擦に言及し、「カナダが我々の乳製品に課している関税は、もう何年も受け入れがたいものだった」と述べた。また、カナダと中国が今年1月に署名した貿易協定について、「カナダを生きたまま食い尽くす」ことになると述べた。

 

トランプ氏はさらに、「中国は真っ先に、カナダで行われているアイスホッケーをすべて終了させ、スタンレーカップを永久に廃止する」とも書いた。

 

カナダの橋当局、オンタリオ州首相室、デトロイト市長室は、コメント取材に直ちに応じなかった。【210日 BBC

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(アンバサダー・ブリッジを所有するミシガンのモルーン一族の建設反対云々は、まるで西部開拓時代みたいな話)

 

そもそも同橋を巡っては、アメリカ側が建設費負担を拒否したため、カナダ政府が全額出資する事業体が事業全体を統括し、資金調達・契約・運営を担当する形で、カナダ政府が資金を拠出した経緯があります。用地取得費、接続道路、通関施設建設費用もカナダが負担し、通行料収入で回収することになっています。

なお、橋はカナダ政府とミシガン州の共同所有になります。

 

トランプ大統領は「カナダが両岸の土地を所有するのは受け入れられない」と批判していますが、別にアメリカ側の土地がカナダ領になる訳ではなく、カナダ政府出資の事業主体が不動産権利を保有するも、米国法の下で登記し、用途は橋関連インフラに限定、主権・治安権は当然アメリカ・・・という形です。イメージとしては外国政府系企業が米国内にビルを所有するが、土地は米国領土のままという形に近いようです。

 

「カナダが所有」・・・領土主権の話ではなく、あくまでインフラ資産の所有構造の話です。国際インフラの場合、資金負担側が施設資産を持つのは一般的です。

 

繰り返しになりますが、そもそもそういうカナダ系事業主体が施設資産を保有する形になったのは、アメリカが資金拠出を拒否したからです。

 

それを今になって意味不明の「カナダが両岸の土地を所有するのは受け入れられない」云々で「開通させない」(どうやるのかは知りませんが)などと言うのは、いささか“言いがかり”じみています。

 

トランプ大統領は“言いがかり”をつけるのは、カナダの店頭で一部の米国産アルコール飲料が扱われていないことや、乳製品に対するカナダの関税、中国との貿易協議を理由といった諸々のトランプ大統領の不満と複合した結果です。

 

【議会下院はトランプ大統領がカナダに課した関税の撤廃を求める決議案を可決 与党側にも造反者】

トランプ大統領は何かにつけて追加関税をふりかざしますが、カナダに対しても折につけそのような脅迫を示唆しています。

 

ただし、冒頭に既述したようにカナダにとってアメリカが死活的に重要な貿易相手であるように、アメリカにとってもカナダは重要な取引相手です。かつ、エネルギー(石油・電力)供給国、防衛・NORADで一体運用、重要鉱物供給国という国でもありますので、トランプ大統領もカナダを関税で脅迫はするものの、全面的な高関税の再発動には至っていません。つまり「圧力はかけるが、全面貿易戦争は回避」という状況です。

 

2018に第1トランプ政権が通商拡大法232条(国家安全保障)を基にカナダを含めて鉄鋼25、アルミ10の関税を課し米加関係が悪化しましたが、2019にUSMCA(米墨加協定)批准環境整備の一環でカナダ向け232条関税は撤廃されました。

 

2期トランプ政権では2018年型の一律関税」がそのまま再発動されている状態ではありません。
ただし、第2期トランプ政権下では、類似の国家安全保障ロジックを用いた追加関税・上乗せ措置が個別に打ち出され、結果として“事実上の232条的措置”が復活・強化されている側面があります。

 

議員の間には、消費者のコスト上昇や貿易に携わる企業への関税の影響を巡り不満が出ています。

 

****トランプ政権のカナダへの関税 議会下院が撤廃求める決議案を可決 与党・共和党議員6人が造反 トランプ大統領は「選挙で代償払うことになる」と激怒****

アメリカの連邦議会下院は、トランプ大統領がカナダに課した関税の撤廃を求める決議案を可決しました。与党・共和党からも造反者が出ています。 

 

アメリカの連邦議会下院は11日、トランプ大統領がカナダに課した関税について撤廃を求める決議案を賛成219、反対211の賛成多数で可決しました。議会下院は与党・共和党が多数を占めていますが、共和党6人の議員が造反し、決議案に賛成しました。 

 

トランプ政権によるカナダへの関税をめぐっては、共和党の議員の中からもアメリカ経済にマイナスだという指摘が出ていました。 

 

この決議案は上院に送られ、ロイター通信は上院でも可決される可能性が高いと伝えていますが、トランプ大統領は拒否権を持っているため、関税政策の変更につながることはない見通しです。 

 

ただ、共和党議員も含めた形で議会が関税政策に反対の意思を示したことは、トランプ政権にとって痛手となります。 トランプ大統領SNSに投稿し、「共和党の議員は、下院であれ上院であれ、関税に反対票を投じれば選挙の時に深刻な代償を払うことになる」と造反した議員に強い圧力をかけています。【212日 TBS NEWS DIG】

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トランプ大統領は「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」からの離脱を非公式に検討 “主敵”はカナダ?】

一方、トランプ米大統領は北中米3カ国での取引をしやすくするための自由貿易協定「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」からの離脱を非公式に検討していると報じられています。

 

****トランプ大統領がメキシコ・カナダとの3カ国自由貿易協定からの離脱検討と報道 日本企業への影響不可避***

(中略)ブルームバーグ通信は11日、複数の関係者の話としてトランプ大統領が、アメリカとメキシコ・カナダによる3カ国の自由貿易協定(USMCA)からの離脱を内密に検討していると伝えました。

 

 関係者は「トランプ氏が貿易協定から離脱すべきではない理由を側近たちに尋ねている」としていますが、「発表するまでは、議論は臆測にすぎない」ともコメントしています。 

 

USMCA7月の見直しで合意すれば延長されますが、離脱となればアメリカ市場向けにメキシコやカナダに生産拠点を構えてきた日本の自動車メーカーなどへの影響は避けられません。【212日 FNNプライムオンライン

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“USMCA見直しを巡っては、米国はメキシコと正式協議を始める一方、カナダとは対立が続いている”【212日 日経】という話もありますので、トランプ大統領の“主敵”は、シェインバウム大統領が極力トランプ大統領を刺激しないように配慮を重ねているメキシコではなく、カーニー首相のダボス会議演説のように公然とトランプ批判を繰り返すカナダのようです。

 

離脱となれば、日本の自動車メーカーにとっては深刻な問題です。