
(【CNN】 ソマリアは、ソマリランド(黄)とプントランド(緑)、首都モガディシオのあるソマリア(赤)の3地域に分かれる)
【最近、復活傾向のソマリア海賊 自衛隊もジブチ拠点の警戒監視活動継続】
東アフリカのソマリア・・・かつてはタンカーなどを襲い身代金を要求する「海賊」で大きな国際問題となり(2011年頃がピーク)、中東の石油に頼る日本にとってもその航路を阻害する重大問題としてジブチを拠点に自衛隊が警戒監視活動に乗り出しましたが、現在はほとんどそのニュースは目にしません。
ただ、最近は海賊活動の再発も起きており、自衛隊の活動も続いています。(おそらく「海賊対策」というより、ジブチを拠点とした自衛隊の海外活動を継続するためでしょうが)
****ソマリア沖の海賊の現状は?****
ソマリア沖の海賊については、長らく沈静化していましたが、2023年末から2025年にかけて再び活発化(リバイバル)しており、国際社会が再び警戒を強めている状況です。現在の主な状況を整理すると以下の通りです。
1. 発生件数の急増
最近の動向: 2019年〜2022年頃までは年間ほぼ0〜1件と極めて低い水準でしたが、2024年には8件、さらに2025年に入ってからも複数のハイジャックや襲撃事案が報告されています。
直近の深刻な事例: 2025年11月には、マルタ船籍のタンカーがエイル沖約1,000kmの海域で武装集団に占拠される事案が発生しました(後に欧州連合海軍部隊により解放)。
2. 海賊活動が再燃している理由
かつてのピーク時(2011年頃)のような状況に戻りつつある背景には、いくつかの要因が重なっています。
地域の不安定化: 隣国イエメンの武装組織フーシ派による船舶攻撃への対応で、各国の海軍資産(護衛艦など)が紅海に集中しており、ソマリア沖の監視が手薄になっている隙を突かれています。
違法漁業への反発: ソマリアの地元の漁師たちが、外国船による違法・無秩序な漁業(IUU漁業)によって生計を脅かされているとして、再び海賊行為に走るケースが増えています。
組織的な連携: アル・シャバーブ(イスラム過激派)などの武装勢力が、海賊から「みかじめ料」を取る形で活動を支援・結託しているとの指摘もあります。
3. 手口の変化と活動範囲
遠方への進出: 奪った漁船などを「母船」として利用することで、海岸から数百〜1,000海里(約1,800km)も離れたインド洋の深い海域まで足を伸ばして襲撃するようになっています。
武装の高度化: AK-47などの自動小銃に加え、RPG(ロケット推進弾)を使用するなど、攻撃性が高まっています。
4. 日本を含む国際社会の対応
自衛隊の活動: 日本は現在もジブチを拠点に、護衛艦やP-3C哨戒機による警戒監視活動を継続しています。2025年11月にも、政府は派遣期間の延長を決定しました。
船舶側の対策: 海運業界では、再び「武装警備員の同乗」や「避難用シェルター(シタデル)の設置」など、かつての厳重な防犯マニュアル(BMP5)の徹底が呼びかけられています。
総じて、以前のように「海賊問題は解決した」と言える状況ではなくなり、「再び予断を許さないフェーズに入った」というのが2025年現在の現状です。【Gemini】
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【イスラエル 初のソマリランド国家承認 対岸イエメンのフーシ派対策の狙いも】
ソマリアが国際的に話題になるのは、もっぱら上記のような「海賊行為」、その海賊跋扈を許している国家の統治機能が失われた「破綻国家」状態に関してでしたが、(正確にはソマリアではなく、北部のソマリランドに関してですが)思いがけないところで注目されることに。
****イスラエル、「ソマリランド共和国」を国家承認 国連加盟国で初****
イスラエルは26日、アフリカ東部ソマリアで一方的に独立を宣言している「ソマリランド共和国」を国家として承認した。国連加盟国がソマリランドを承認したのは初めて。
ソマリアではイスラエルと対立するトルコが影響力を増しているほか、対岸のイエメンでは敵対するイランと連携する武装組織フーシ派が首都を制圧している。イスラエルとしては、ソマリランドとの関係強化を通じて周辺地域での影響力を確保する狙いがあるとみられる。
イスラエルのサール外相によると、ネタニヤフ首相とソマリランドの「大統領」であるアブドゥラヒ氏は26日、互いに相手国を承認し、外交関係を樹立する合意文書に署名した。サール氏はX(ツイッター)で「地域の安定や経済的繁栄に向けて関係を発展させるために協力していく」と述べた。
ソマリランドの大統領府も声明で「国際的な正当性を求めてきたソマリランドにとって一里塚になる」と歓迎。イスラエルとの国交樹立を通じて「中東・アフリカ地域の平和に貢献する」と強調した。
一方、ロイター通信によると、ソマリアとトルコ、エジプトなどの外相はイスラエルを非難した。
ソマリランドは1991年、ソマリアの社会主義政権が崩壊したのを機に、南部の優遇策に不満を抱いた北部の住民らが一方的に独立を宣言して設立された。広さは日本の約4割にあたる約13・7万平方キロ。内戦が続くソマリアの中央政府の支配地域に比べて治安は安定しており、独自の通貨も発行している。2020年には台湾が大使館に相当する代表処を設置し、関係を深めている。
ソマリアでは北東部も1998年、「プントランド」が自治を宣言しており、国家の分裂状態が続いている。【12月27日 毎日】
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“思いがけないところで”と書きましたが、伏線がなかった訳ではありません。1年前の昨年11月・・・
****ソマリランドで野党党首が大統領選勝利、国家承認広がるか注目****
ソマリアからの独立を宣言しているソマリランドでは、先週の選挙で野党ワダニ党のアブディラフマン・チロ党首が現職のムセ・ビヒ・アブディ大統領を破り、政権が交代することになった。今後、他国による国家承認の動きが広がるか注目される。
ソマリランドは1991年にソマリアからの独立を宣言して以来、事実上の自治権を維持しているが、どの国からも承認されず、国際金融へのアクセスや約600万人の住民の移動が制限されている。
ソマリランド選挙管理委員会によると、チロ氏の得票率は64%、ビヒ氏は35%だった。
「今回の選挙は勝ち負けの問題ではない。団結と友愛の選挙で国家として前進させるための選挙だ」とチロ氏は19日のテレビ演説で述べた。
ソマリランドはインド洋と紅海の合流点という戦略的な地点に位置している。1月には内陸国であるエチオピアとの間で、国家承認と引き換えに沿岸部の土地の使用を認めるという予備協定を結んだ。
ソマリランドはまた、トランプ次期米大統領の政権が自国の主張に好意的であろうと期待している。第1次トランプ政権時の対アフリカ政策担当の主要メンバー数人が、ソマリランドの承認を支持すると表明しているからだ。
チロ氏はエチオピアとの協定を支持する姿勢を示しているが、協定を実行するかは不透明。一部のアナリストは、同氏が協定に反対しているソマリア政府との対話に、より前向きになるのではないかと見ている。
この協定によりエチオピアとソマリアの関係は悪化し、ソマリア政府はエチオピアと歴史的に反目しているエジプトとエリトリアに接近することになった。
ビヒ政権下でソマリランドとの緊張関係が続いていたソマリアと隣国ジブチの大統領らは、チロ氏の勝利を祝福した。
エチオピア外務省もチロ氏に祝意のメッセージを送った。【2024年11月20日 ロイター】
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イスラエルの狙いは、対岸イエメンのフーシ派対策にあるとの指摘も。
“イスラエル首相府によると、ネタニヤフ氏とソマリランドの大統領らが共同宣言に署名した。トランプ米大統領が仲介するイスラエルとアラブ諸国との国交正常化の枠組み「アブラハム合意」の「精神に基づく宣言だ」としている。
ソマリランドの対岸にあるイエメンでは反政府勢力フーシが首都を支配し、イスラエル攻撃を繰り返してきた。国家承認は、フーシをけん制する狙いなどがあるとみられ、イスラエルが将来的に軍事拠点として利用する可能性もある。”【12月27日 読売】
【トルコ、エジプトなどアフリカ・アラブ諸国は反発 トランプ大統領「ノー」】
ソマリアに加え、トルコ、エジプトなどアフリカ・アラブ諸国はこのイスラエルのソマリランド承認に反発しています。
****イスラエルのソマリランド国家承認、アフリカ・アラブで批判相次ぐ***
アフリカのソマリアから一方的に独立を宣言したソマリランド共和国をイスラエルが世界で初めて国家として承認したことに波紋が広がっている。ソマリアはもとより、アフリカ、アラブ諸国も反発した。
ソマリア政府は、イスラエルの動きは「不法な一歩」で、主権に対する「意図的な攻撃」だと非難した。
エジプトのアブデルアーティー外相は26日のイスラエルの発表を受け、ソマリア、トルコ、ジブチの外相と電話会談した。エジプト外務省によると、外相らはイスラエルの措置は国際平和と安全保障への脅威となるとの認識を示し、ソマリアの領土の一体性を全面的に支持することを再確認した。
アフリカ連合(AU)もソマリランドの国家承認を拒否し、ソマリアの統一に対する「揺るぎないコミットメント」を再確認した。
ナイジェリア政府は声明で、ソマリアの憲法秩序を損ういかなる行動も「強く非難する」とし、他国にソマリア領土の一部を独立国として承認しないよう呼びかけた。【12月28日 ロイター】
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イスラエルの後ろ盾であるアメリカは、今回のイスラエル決定には難色を示しているようです。
****トランプ氏、ソマリランドの国家承認に「ノー」 同盟国イスラエルに追随せず NYT紙****
米国のドナルド・トランプ大統領は26日付の米紙ニューヨーク・タイムズのインタビューで、アフリカ東部ソマリランドの国家承認に反対すると述べた。
トランプ氏の盟友であるベンヤミン・ネタニヤフ首相は、イスラエルが、初めてソマリランドを国家として承認すると述べていた。
トランプ氏はソマリランドを承認するかと同紙に問われると「ノー」と答え、さらに「ソマリランドが一体何なのか、本当に分かっているのか?」と続けた。【12月27日 AFP】
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トランプ大統領としてはパレスチナ・ガザ地区の和平交渉を進めているなかにあって、「余計なことをするな」といったところでしょうか。
アラビア半島の対岸、東アフリカ「アフリカの角」には、ソマリア・ソマリランドの他、もうひとつプントランドがあります。
ソマリランドはソマリアからの分離独立を主張しているが、今回のイスラエルを除いて国際社会からは承認されていない・・・という、“わかりやすい”と言えばわかりやすい関係。
プントランドの方は微妙です。「独立」ではなく「高度な自治権」をソマリアに求めているという関係。
****ソマリアとプントランド(Puntland)の関係*****
一言で言えば「条件付きでソマリア連邦の一部であることを認めているが、実態はほぼ独立した高度な自治領」です。
隣接する「ソマリランド」が完全な独立を求めているのに対し、プントランドは少し複雑な立場を取っています。現在の状況を整理して解説します。
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1. プントランドは独立国なのか?
結論から言うと、「自称:ソマリア連邦共和国の一構成州」ですが、「実態:独立国家並みの機能を持つ自治政府」です。
政治方針: ソマリランドのように「ソマリアからの完全な分離独立」を公式に宣言しているわけではありません。彼らのスタンスは「ソマリアが安定した連邦制国家になるなら、その一部として留まる」というものです。
現状(2024-2025年): 近年、ソマリア中央政府との対立が深まっており、2024年3月には「ソマリア憲法の改正を認めない」として、憲法問題が解決するまで「独立国家としての権限を行使する」と宣言しました。これにより、現在はかつてないほど「独立国」に近い動きを見せています。
2. 国際的に承認されているのか?
いいえ、独立国家としてはどこの国からも承認されていません。
国際社会の見解: 国連や日本を含む諸外国は、プントランドを「ソマリア連邦共和国の一部(連邦加盟州)」と見なしています。
実務上の扱い: ただし、治安の安定や海賊対策、資源開発などの面で、各国や国際機関はソマリア中央政府を通さず、プントランド当局と直接交渉を行うことがあります。
両者の関係は、近年非常に悪化しています。
対立の理由: ソマリア中央政府が権限を中央に集めようとしている(集権化)のに対し、プントランドは自分たちの自治権を守ろうとしています(連邦化)。特に選挙制度や資源配分をめぐって激しく対立しています。
独自の活動: プントランドは独自の軍(プントランド治安部隊)、独自の議会、独自の大統領を持ち、独自の経済政策(港湾運営など)を行っています。
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プントランドは「ソマリアがまともな国に戻るまで、自分たちで国を運営する」という独特なスタンスを維持している、世界でも珍しい「国家内国家」のような存在です。【Gemini】
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