
(【8月9日 日経)

(【ChatGPT】 アメリカが99年運営管理する「トランプ・ルート」はアゼルバイジャン本土と飛び地ナヒチェバンを結ぶだけでなく、カスピ海沿岸のアゼルバイジャン(更にその先の中央アジア)からイラン国境をかすめてアルメニアを通過、トルコと結ばれる(更にその先の欧州にも通じる)南コーカサスの新たな物流ルートになります)
アゼルバイジャン領内に存在したアルメニア支配地域「ナゴルノ・カラバフ」(アルツァフ共和国)については、周知のように2023年9月にアゼルバイジャン側が軍事的に圧倒する形でこれまでの両国の対立に結着をつけました。
2023年の停戦以降、両国は「ナゴルノ・カラバフ」(アルツァフ共和国)の国家機関の解体、国境再調整、和平条文合意、そして米国仲介による和平に向けた共同宣言へと段階的に進んできました
2023年9月28日
アルツァッハの指導者が「2024年1月1日までに国家機関を解散する」との法令を署名。事実上、この独立体が解体されることになりました。
アルツァッハの指導者が「2024年1月1日までに国家機関を解散する」との法令を署名。事実上、この独立体が解体されることになりました。
2025年8月8日
ホワイトハウスにて両国首脳がトランプ大統領の仲介の下、「TRIPP(Trump Route for International Peace and Prosperity)」と呼ばれる新たな戦略的輸送回廊整備を含む和平枠組みで合意。
ホワイトハウスにて両国首脳がトランプ大統領の仲介の下、「TRIPP(Trump Route for International Peace and Prosperity)」と呼ばれる新たな戦略的輸送回廊整備を含む和平枠組みで合意。
ただし、法的な和平条約の署名には至らず、ナゴルノ・カラバフの帰還など具体的な解決は未達成です。
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アゼルバイジャンとアルメニアの首脳は8日、ホワイトハウスでトランプ大統領と会談し、米国の仲介による和平に向けた共同宣言に署名した。係争地ナゴルノカラバフを巡る数十年にわたる対立を終わらせ、経済関係の強化につながる可能性がある。
トランプ大統領は署名式で「彼らは35年という長い年月戦ってきたが、今は友人で、これからも長く友人であり続けるだろう」と述べた。
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なお、8月8日の合意は正式な「和平条約の締結」ではありません。あくまで「共同宣言(Joint Declaration)」であり、その性質としては、双方が和平の意思を再確認、主要な原則や経済回廊(トランプ・ルート/TRIPP)構想などの協力項目を盛り込む、今後の詳細な条文交渉や法的拘束力のある合意書作成の枠組みを整える・・・という政治的文書です。
今回のホワイトハウス会での合意は国際法上の和平条約(Peace Treaty)(双方がすべての懸案事項について詳細に合意 条文が国会などで批准され、法的拘束力を持つ 国際社会(特に国連など)でも条約として登録される)への中間段階と捉えるのが正確です。
これだけ自分の欲望をあからさまにできるというのは・・・・よほど性格的に偏執的なところがあると言うべきか、あるいは、裏表のない素直な性格だと評価すべきか?
(中略)トランプ氏はSNSで「多くの首脳が戦争を終わらせようとして失敗してきた。今までは。『トランプ』のおかげだ」と誇った。
ナゴルノカラバフはアゼルバイジャン西部の自治州で、住民の多くがアルメニア系。1994年、ロシアの支援を受けたアルメニアが実効支配を確立したが、2023年、アゼルバイジャンが奪還した。アルメニアはその際にロシアの支援を受けられなかったことからロシアとの同盟関係を事実上停止し、米国への接近を強めていた。【8月8日 産経】
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****動機は個人の名誉だったとしても、地域情勢は大きく改善するかも****
南コーカサスの紛争と安全保障の専門家、オレシア・バルタニャンは本誌に対し、「トランプは和平合意案でノーベル賞候補となることを狙っているのかもしれないし、単に世界平和の実現への意思を示そうとしているのかもしれない。
しかし個人的な動機はさておき、この地域にとっては本当に大きく重要なことだ」と、和平への取り組みの重要性を指摘した。 「たとえ、最終的な和平合意の署名がなくても、地域の安定と長期的な戦争回避の可能性を高めるだろう」
トランプは、自らが進める平和外交で国際的な評価を得たいという意図を隠さない。 実際、セルビアとコソボ、コンゴ民主共和国とルワンダ、カンボジアとタイ、インドとパキスタンの間の紛争解決で一定の役割を果たした(2025年5月に勃発した印パ間の紛争でのアメリカの役割については評価が分かれている)。
ジョージ・メイソン大学の研究者アリ・ママドフは、南コーカサスにおけるトランプの外交介入の意図は明白だと指摘する。 「『ザンゲズール回廊』への関与という発想は、トランプが他地域でも好んで用いてきた、取引型かつ利益重視の外交の流れに沿うものだ」とママドフは本誌に語った。 「紛争解決を主導すれば、トランプはそれを目に見える成果として提示できる。加えて、アブラハム合意のような個人的な外交成果としてブランド化することもできる」【8月10日 Newsweek】
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ウクライナ・パレスチナの戦争をすぐに終わらせると公言して就任したもののなかなか思いどおりに進まない状況で、鎮火しやすい周辺部の火の手のまださほど大きくない争いを、トランプ関税と絡めたりして強引に鎮火することで「実績」をかせぐ方針に切り替えたようです。
これまでにイスラエルとパキスタンから推薦や推薦の意向が示されてしましたが、カンボジアのフン・マネット首相も推薦を明らかにしています。アゼルバイジャンとアルメニアからも推薦を得られれば、国際的に無視できない流れにもなります。
話を8月8日の共同宣言の内容に戻すと、両国首脳がトランプ大統領の仲介の下、「国際平和と繁栄のためのトランプ・ルート(TRIPP)」、通称「トランプ・ブリッジ」計画)と呼ばれる新たな戦略的輸送回廊整備を含む和平枠組みで合意したとのことです。
(中略)和平合意の中核となるのは、「国際平和と繁栄のためのトランプ・ルート(TRIPP)」、通称「トランプ・ブリッジ」計画だ。
この計画は、アゼルバイジャン本土と同国の飛び地ナヒチェバン自治共和国を、アルメニア領を通過して結ぶというものだ。このルートは、アゼルバイジャンでは「ザンゲズール回廊」、アルメニアでは「スニク道路」と呼ばれている。
今回の両国による和平合意案は、南コーカサスで急速に進む地政学的変化の直後に浮上した。 2023年、アゼルバイジャンは電撃的な軍事行動で、係争地ナゴルノ・カラバフを掌握。アルメニアが支援してきた分離政権による30年の支配を終わらせた。 ロシアと同盟関係にあり、トルコとは根深い対立を抱えるアルメニアはこの敗北を受け、自国の地域戦略を見直すこととなった。
動機は個人の名誉だったとしても、地域情勢は大きく改善するかも
(中略)
「第1に、ロシアやイランが提示する和平案(後述)への対抗手段となり、パートナーシップを多角化できる。第2に、『トランプ・ブリッジ』は単なる交通回廊ではなく、『中間回廊』を通じて南コーカサスを世界的な貿易ルートに結びつける、広域連結構想の一部と見なすこともできる。これにより、アゼルバイジャンとアルメニアの相互不信を和らげ、政治的にもこのプロジェクトは受け入れやすくなるだろう」
国際危機グループ(ICG)のジョシュア・クチェラ上級アナリストは、南コーカサスにおけるトランプの取り組みについて、「ウクライナやガザでの和平仲介が思うように進まない中で、トランプ政権が手軽な成功を狙っていることは明らかだ」と述べた。
「(和平合意の中で)最も画期的なのはTRIPPだ。しかし、重要な部分も含め、未だ詳細が不透明だ」とクチェラは指摘した。 「アゼルバイジャンは本土とナヒチェバンを、アルメニアが干渉できない形で交通回廊を作ることを求めている。一方、アルメニアも、北部と南部を結ぶ最短経路としてナヒチェバンを通行できるよう望んでいる」
トランプは手軽な成果と考えているが...
アルメニアの地域民主・安全保障センターのティグラン・グリゴリアン所長も、トランプがアルメニアのパシニャン首相とアゼルバイジャンのアリエフ大統領をホワイトハウスに招いたことは、両国の和平実現を「手軽に手に入れられる外交成果」と見なしている証左だと語る。
そして、アメリカによる提案の詳細は「極めて重要」だと強調した。 「アゼルバイジャンは、貨物や旅客がナヒチェバンに移動する際、アルメニアの干渉を一切受けない交通回廊を強く求めてきた。アルメニアは交通回廊再開の考え自体には前向きだが、その交通回廊が自国の完全な領土保全、主権、管轄下にあり、かつ相互主義の原則に従うことを主張している」と両国の考えの違いを指摘した。
「もしアゼルバイジャンが、最低限の通過手続きでアルメニア領を通過し、ナヒチェバンと結ばれたとする。その場合、アルメニアがアゼルバイジャンとナヒチェバンを結ぶ鉄道を利用してアルメニア北部地域へアクセスする際には、最低限の通過手続きで通過できるというルールがアルメニアにも適用されなければならないとアルメニアは主張しているのだ」
周辺国の利害とも衝突する可能性大
両国間の和平合意がどのような形で実現しても、その影響は南コーカサスと国境を接するロシア、イラン、トルコといった周辺の大国にも及ぶ可能性が高い。
ロシアとイランには、対ロ制裁を回避する形でインドからロシアまでの鉄道ルートを築く「国際南北輸送回廊」という計画が存在する。 「トランプ・ブリッジ」はアルメニアとイランの国境近くに建設される可能性があるため、ロシアとイランの計画が妨げられる。(中略)
アルメニアの地域民主・安全保障センターのグリゴリアンも、トルコがすでに同国北東部に位置する都市カルスとナヒチェバンを結ぶインフラ整備を始めていることに触れ、「トルコは南コーカサス周辺の大国の中で唯一、アメリカの提案を歓迎するだろう」と指摘した。
イランはこの連絡路が断たれる恐れのある措置には反対するだろうとも述べた。 「国際南北輸送回廊はイランとアルメニアの国境沿いに位置している。そのため、イランはアルメニアの弱体化が、イラン北部国境およびアルメニア経由で欧州へ至る南北輸送回廊の双方に対する直接的な脅威になると考えている」
ロシアは敗北者に
グリゴリアンは、ロシアは南コーカサスへのアメリカの関与について「よりデリケートになっている」と語る。かつての支配地域で影響力が低下する中、「アメリカがこの地域でイニシアチブを握ることになれば、ロシアの地位に大きな打撃を与えることとなる」ためだ。
南コーカサスの紛争と安全保障の専門家のバルタニャンは、今回のアメリカの関与によって「ロシアは敗北者となった」と指摘する。そして、「ロシアはこの道路を自らの管理下に置くことを望んでいた。しかし、アメリカの動きはアルメニアとアゼルバイジャンの安定と和平を後押しするものだ。同時に、南コーカサスでのロシアの影響力低下を決定づけた。これはウクライナ侵攻とナゴルノ・カラバフ崩壊によって始まった流れが強化されたに過ぎない」と述べた。 「まあ、これがロシアの払うべき代償ということだ」【8月10日 Newsweek】
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アルメニアもその回廊を利用することで一定の利益はあるにしても、アゼルバイジャンの求めるような“アルメニアの干渉を一切受けない交通回廊”といった話になれば、また、アメリカが99年間の運営権を握るということを含め、アルメニアの主権が制限され、「外国勢力に領土を渡す」印象が強くなります。
