lonelylika’s diary

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ

「鉄は国家なり」 イギリスでも


(ブリティッシュ・スチールの工場=12日、英東部スカンソープ(ゲッティ=共同)【4月13日 東京】)

中国企業所有のブリティッシュ・スチール、英最後の高炉を閉鎖へ】
多くの財の生産に、大砲・戦車・軍艦の生産にも使用される鉄の生産は国力の源とも考えられ「鉄は国家なり」という言葉も。

この「鉄は国家なり」は、プロイセン王国ドイツ帝国の首相ビスマルクの演説に由来しているとされ、日本では、初代首相の伊藤博文が1901年に官営八幡製鉄所の火入れ式でこの言葉を使用したとされています。

IT全盛の現代でもその残滓が残っており、かつてはアメリカを代表する企業の一つであったUSスチールの日本製鉄による買収計画が政治問題化し暗礁に乗り上げているのは周知のところです。

バイデン政権時代にストップがかかりましたが、トランプ政権になっても「買収ではなく投資なら」といった話もありましたが、基本的に解決していません。

トランプ大統領は4月7日に「さらなる措置が適切かどうか判断するため」、対米外国投資委員会(CFIUS)に新たな審査を行うよう指示。市場はこれを、トランプ政権がUSスチール買収承認を検討している可能性を示唆したものと受け止め、同社株価は大幅上昇しました。

しかし、9日には「日本に渡るのは望んでいない。われわれは日本を愛しているが、USスチールは非常に特別な企業だ。日本や他の国に渡るのは望んでおらず、関係者と協力している」と発言。USスチール株価も下落

13日にも・・・

****トランプ氏「外国企業がUSスチール支配すべきでない」、買収に難色****
トランプ米大統領は13日、外国企業が米鉄鋼大手USスチールを支配すべきだとは思わないと述べ、日本製鉄による買収に改めて難色を示した。大統領専用機上で記者団に述べた。

トランプ氏は9日、USスチールが日本に渡ることを望まないと述べ、日鉄による買収を支持しないことを示唆していた。

USスチールは10日、日鉄とともに「重要な投資を確保する」ため、トランプ政権と緊密に連携していると表明した。【4月14日 ロイター】
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製鉄業の衰退、しかし「鉄は国家なり」ということでその扱いが政治問題化する事情は他国、イギリスでも同じ。
アメリカが「USスチール」なら、イギリスはその名も「ブリティッシュ・スチール」

ただ、「ブリティッシュ・スチール」の方は、経営はすでに外国資本に渡っています。

****ブリティッシュ・スチール****
ブリティッシュ・スチール)は、イギリスの製鉄会社。第二次世界大戦後に国営企業体として発足後、幾度となく分離、合併、買収により名称や経営母体が変わってきた経緯があり、その時々ブリティッシュ・スチールの名が用いられた。

前史
1951年、労働党政権下でイギリス国内の製鉄会社が国有企業化されてブリティッシュ・スチールが誕生。以後、保守党政権下で分割民営化、再び労働政権下で統合されて国営化が繰り返された後、1988年に再度民営化されて再びブリティッシュ・スチールが発足した。

20世紀後半には、製鉄業の競争は激しいものとなっており、1999年にオランダのホーゴーバンと合併してコーラス・グループへ社名変更。さらに2007年には、インドのタタ製鉄が120億ドルで買収してタタ製鉄ヨーロッパとなった。

新生ブリティッシュ・スチール
2016年、タタ製鉄は赤字が続くイギリスの製鉄事業を売却を決断。投資会社グレイブル・キャピタルが1ポンドで事業を取得。再度、ブリティッシュ・スチールの名を冠した企業が誕生した。(中略)

この新しいブリティッシュ・スチールも厳しい競争には太刀打ちができず、2019年5月22日に経営破綻した。この時点で年産450万トンの生産能力を持ち、5千人の従業員を抱えていた。

2019年8月には、トルコの複合企業オヤック財閥が買収に乗り出したが10月までに交渉が難航して頓挫。翌2020年には中国の敬業集団が買収した。【ウィキペディア
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・・・・ということで、現在は中国企業が経営権を有していますが、赤字体質は変わらず、中国企業は高炉閉鎖を決断。

****ブリティッシュ・スチール親会社、英国で最後の高炉閉鎖へ-赤字続き****
経営難の英鉄鋼メーカー、ブリティッシュ・スチールは、英国で唯一残っている高炉2基を閉鎖する準備を進めている。

親会社の中国企業が今週、英政府から提示された5億ポンド(約980億円)規模の公的支援策を拒否した。 
敬業集団の傘下にある同社は27日、イングランド北部にある高炉と他の鉄鋼所を6月にも閉鎖する計画を巡り、従業員や労働組合と協議すると発表した。

敬業や英鉄鋼業界は何年も前から利益創出に苦戦してきた。トランプ米大統領が外国製の鉄鋼に25%の関税を課したことも、業界への懸念を悪化させている。ブリティッシュ・スチールによると、同社は1日当たり約70万ポンドの損失を出している。敬業は2020年、経営破綻状態だった同社を買収した。

ブリティッシュ・スチールは、高炉閉鎖に踏み切る理由として厳しい市場環境と関税賦課、環境コスト上昇を挙げた。

英国は電気炉で使用する材料を輸入品と鉄スクラップに全面的に頼らざるを得なくなる。また鉄鋼業界団体UKスチールは、輸送やインフラ、建設など主要セクターのメーカーは海外サプライヤーに完全に依存することになると警鐘を鳴らした。【3月28日 Bloomberg
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2023年のイギリスの粗鋼生産量は560万トンで世界26位。この30年間で3分の1以下に減少しています。

【「鉄は国家の誇り」 与野党全会一致で政府管理に】
中国・敬業集団の高炉閉鎖に対し、イギリス製鉄業の灯を消すな・・・という動きが超党派で。高炉が閉鎖になれば最大2700人の雇用に影響するおそれがあるとされていますが、話はそうした雇用の問題だけではないでしょう。

「イギリスがG7(主要7カ国)で唯一、一次鋼材の生産能力を持たない国になることは許されない」(鉄鋼業労組団体ス書記長)

スターマー首相も「鉄は国家の歴史や誇りの一部であり、遺産だ。我々の未来にとって不可欠だ」と“国の誇り”がかかっています。

イギリス議会上下両院は12日、異例の土曜日緊急招集で対応を協議。政府管理とすることを全会一致で決定。
国有化も視野に。

****英下院、ブリティッシュ・スチールの政府管理を全会一致で可決****
英議会下院は12日、経営難に陥っている英鉄鋼メーカー、ブリティッシュ・スチールの操業を政府が管理することを認める法案を全会一致で可決した。

ブリティッシュ・スチールは英国で唯一の高炉を持つ鉄鋼メーカーで、レイノルズ・ビジネス貿易相は下院で「国への所有権移譲は引き続き選択肢にあり、現段階では会社の状況を考慮するとそれを選ぶ公算が大きい」として、国有化の可能性が高まっているとの認識を示した。

中国の敬業集団傘下にあるブリティッシュ・スチールは英スカンソープ製鉄所で約3500人の従業員を抱えている。環境に配慮した製鉄法への移行に対する英政府の補助金支給で合意に達しなかったのを受け、存亡の機に陥っていた。

法案が施行されれば、政府がブリティッシュ・スチールの取締役会と従業員を指揮し、給与の支給を確実にして、高炉の稼働を継続させるための原材料発注も可能となる。ブリティッシュ・スチールは1日当たり70万ポンド(91万5600米ドル)の赤字を垂れ流している。【4月14日 ロイター】
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朝のTVニュースを見ていたら、ポピュリズム政党「リフォームUK」のファラージ党首は「中国はイギリスの製鉄業を潰すためにブリティッシュ・スチールを買収した」といった主旨の発言をしていました。「リフォームUK」は2月3日発表の世論調査では二大政党を抑えて始めて政党支持率でトップに立っています。

現在は操業維持に必要な原材料ストックがなく、どうやって原材料を確保するかが現実の課題にもなっているようです。

中国は、過度に問題が政治化し、中国への反感が高まらないように要請しています。

****中国、英政府に企業の公正な扱い要求 鉄鋼大手の政府管理で****
中国外務省報道官は14日、英下院が中国企業傘下の鉄鋼大手ブリティッシュ・スチールについて、政府による操業管理を決めたことを受け、英国で投資・操業する中国企業を公正に扱うよう求めた。

報道官は定例会見で、両国が協議を通じてこの問題を解決すべきだと主張。英政府に対し、英国での投資・操業に対する中国企業の信頼感に悪影響を及ぼさないよう求めた。(後略)【4月14日 ロイター】
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【物価高騰で消えゆくパブ】
なお、消えゆくイギリス文化も。時代の流れ・・・・というところですが、物価高騰も大きな原因。

****英パブ「週に6軒ペースで閉業」 19世紀から続くパブも突然廃業に****
物価の高騰などを背景にイギリスではパブの閉業が相次いでいます。ロンドンの住宅地で19世紀から続いたパブも歴史に幕を閉じました。

2月、ロンドンの住宅街「スイスコテージ」にある老舗のパブが突然、閉業しました。
スイス風のコテージのような象徴的な建物から、地名や駅名のスイスコテージの由来にもなっていました。

近くに住むアラン・セルウィンさん
「驚きとショック。信じられない気持ち。この地域には多くのパブがあったがどんどん減っている。社会インフラの損失だ」

このパブは少なくとも1830年代から営業していましたが、常連客によりますと、店員は経営難を嘆いていたそうです。 地元住民は地域の象徴としてパブの復活や建物の保存に向け署名活動などを行っています。

イギリスのパブはビンゴやカラオケ大会が開かれるなど、市民の憩いの場でもあります。しかし、去年1年間で、イングランドウェールズでは、週に約6軒のペースとなる289軒のパブが閉業しました。

パブの数は、この5年間で2200軒以上減少しているということです。

パブ店員 リアム・ジョプリンさん
「すべてのパブが危機に陥っている。どんなパブでも潰れる恐れがある。(価格高騰で)パブに不満を持つ人もいるが、多くのコストがかかることを分かっていない」

光熱費や人件費などの高騰で、こちらのパブでは3月末からビール1杯20ペンス、約40円値上げして6.4ポンド、約1240円となりました。5年ほど前の倍の価格です。


「パブの価格は法外でパブに来るのがとても難しくなっている。(値上げは)さらなるパブの閉業につながり、長期的には地域社会の分断を深め社会不安を招くだけだ」

ビール・パブ協会はパブで提供されるビールの全国平均の価格が4月、初めて1杯5ポンド、日本円で970円を超えたと危機感を示しています。【4月2日 テレ朝news】
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日本のラーメンに1000円の壁、イギリス・パブのビールに5ポンドの壁・・・でしょうか。