
【今もナチスの犯罪と向き合い続けるドイツ社会】
1万人余りの殺害に加担したとして、2年の禁錮刑を下した地裁判決が確定。女は当時18~19歳の未成年だったため、執行猶予が付いた。ナチス犯罪の当事者は高齢のため公判が難しく、今回が「最後のナチス裁判」になる可能性がある。
確定判決によると、イルムガルト・フルヒナー被告は1943年6月~45年4月、ポーランド北部シュツットホーフ収容所の所長室で唯一の速記係として勤務。業務を通じてガス室での殺害やアウシュビッツ収容所への移送を助け、ユダヤ人など1万505人の殺人と、5人の殺人未遂をほう助した。
弁護側は、被告が収容所の実態を知っていたか証明できていないなどと主張。しかし連邦裁は「従順な部下として、所長らを心理的にも支えた。その働きは官僚的な組織運営にとって極めて重要だった」と結論付けた。収容所の事務員に対する初の有罪判決だった。【8月20日 時事】
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シュタインマイヤー氏は同島のカンダノス村で感情のこもった演説を行い、ギリシャ語で「きょう、私はドイツを代表して許しを乞いたい」と述べた。続いてドイツ語で「ドイツがここで犯した重大な犯罪について、生存者と子孫の皆さんに許しを乞いたい」と語った。
1941年に連合国軍がドイツ軍の空挺(くうてい)部隊による侵攻を阻止しようとした「クレタ島の戦い」で、住民が参戦したカンダノス村では180人が命を落とし、村は壊滅させられた。
シュタインマイヤー氏はドイツ大統領として初めてクレタ島を訪問。虐殺の生存者らに迎えられたが、中にはドイツ政府が戦時賠償金の支払いを拒み続けていることに対する抗議のスローガンを叫ぶ人もいた。 【11月1日 AFP】
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その一方で、ナチス復活を目論むような動きも。
検察によると、男らは「ザクセン分離主義者」を自称する反ユダヤ主義や終末論的な考えを持つ15〜20人のグループに属し、ザクセン州など東部地域一帯を武力で制圧することを計画。「来たる『Xデー』にドイツが崩壊する」と想定し、市街戦や銃器の使用、夜間行進などの訓練を行っていた。【11月5日 時事】
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上記のような“ナチス思想に基づく国家の再建を・・・”といったものが、「おかしな考えの人間はどんな社会にもいる」といった類のものなのか、あるいは、ドイツ社会でうごめくものから派生するものなのか・・・
ナチスのホロコーストへの反省ということから、ドイツはイスラエルを継続的に支援してきました。個人的には“ホロコーストへの反省”と“現在のイスラエルの行っていることへの支持”はイコールではないと思いますが。
ショルツ独首相は「イスラエルとその国民の安全はドイツの『国是』だ。」とも。
「イスラエルの国家の存立と安全のために立ち上がることがわれわれの使命だ」
しかし、いまその「国是」とするイスラエル寄りの方針に反発の声も高まり始めています。ドイツでいったい何が起きているのでしょうか。
ナチスの反省を受け継ぐドイツ
11月9日、ドイツは「水晶の夜事件」から85年を迎えました。日本人のなかには知らない人もいるかもしれませんが、ドイツ国民の記憶に深く刻み込まれた事件です。
ヒトラー率いるナチス政権下にあった1938年11月9日から10日にかけて、ナチスのメンバーがユダヤ人の住宅や商店を襲撃。ユダヤ教の礼拝所シナゴーグも破壊され、多くのユダヤ人が殺されました。割られて散乱したガラスが月明かりで「水晶」のように光ったとしてその名で呼ばれるようになりました。
ユダヤ人が強制収容所へ送り出された駅のホーム跡(ベルリン郊外)そのひとつ、ベルリンの中心部から少し外れた駅に残る鉄道のホーム跡地で開かれた行事。このホームは、ナチス政権下のベルリンで暮らしていたユダヤ人をアウシュビッツなどの強制収容所に送るために使われました。
9日夜には、地元の高校生など数百人が集まってろうそくをかざし、命を奪われたユダヤ人に祈りを捧げました。ドイツでは、こうした行事が毎年行われ、社会全体でナチスの反省を共有し、「ホロコーストを繰り返さない」という誓いを受け継いできました。
イスラエルの安全は「国是」と語る首相
そのドイツにとって第2次世界大戦後に建国されたユダヤ人国家、イスラエルは特別な存在です。イスラエルを守ることには歴史から生じる特別な責任があるなどと言われ、ドイツ政府は今回の軍事衝突でも一貫してイスラエル寄りの姿勢を示しています。
その姿勢を象徴するのがショルツ首相が使う「国是」という言葉です。ショルツ首相は、10月17日、軍事衝突開始後、G7=主要7か国の首脳として初めてイスラエルを訪れました。そして、イスラエルの安全のために取り組むことは「国是」だと述べました。
今回の衝突をめぐりドイツ政府は「イスラエルにはハマスの攻撃に対して自衛の権利がある」と常に強調。民間人の犠牲は避けるべきで、人道物資の搬入を目的とした戦闘休止は支持する一方、停戦については否定的な姿勢を示し、イスラエルに攻撃をやめることまでは求めていません。
国内で上がり始めた反発の声
各地で政府に対して停戦を呼びかけるよう求めるデモや集会が開かれるようになっていて、11月4日にはデュッセルドルフで1万7000人、ベルリンで9000人(いずれも参加者数は地元メディア)が参加しました。ハマスの攻撃以降で最大のパレスチナ寄りのデモでした。
集会の参加者で目についたのが中東などにルーツを持つ人たちでした。多くは、戦後、移民としてやってきた人や移民の子どもとして生まれたドイツ人です。(中略)
サイードさん 「ドイツにおいては、ホロコーストの責任を忘れてはならないし、反ユダヤ主義をどんなかたちであっても許してはいけないと思います。ただ、いまの問題は、ドイツ政府や政治家が『反ユダヤ主義』と『イスラエル批判』を混同し、声を上げないことです。民主主義国家として戦争犯罪を非難し、少なくとも停戦を求める責務があるはずです」
さらに、集会には外国にルーツのないドイツ人も参加していました。(中略)
ドイツの世論に変化も?
ドイツの世論の受け止めはどうなっているのでしょうか?
有力紙ウェルトが(23年)10月中旬に行った世論調査では、政府がイスラエル寄りの姿勢を明確に示していることについて、66%が「正しい」、16%が「正しくない」、18%が「わからない」と答え、イスラエル寄りの政府の姿勢には一定の支持が寄せられているとみられます。
しかし、その後の世論調査では軍事行動への厳しい見方も出てきています。
公共放送ARDが(23年)10月下旬から11月上旬に行った調査では、市民の犠牲を伴うイスラエルの軍事行動についての意見を聞いたところ、「正当化できない」と答えた人が61%で「正当化できる」の25%を大きく上回りました。イスラエルがハマスの掃討を掲げて行ってきた大規模な攻撃に懸念が広がっていることも伺えます。(中略)
イスラエルの安全が「国是」だと言い切る首相の言葉からは、ホロコーストの歴史を踏まえた強い責任感や使命感が感じられる一方、政府の対応と国民の受け止めにはズレも生じていて、歴史にとらわれバランスを失いかねない危うさも感じます。
第2次世界大戦後、ナチスの歴史を踏まえ、世界に平和や人権を重んじる国になったとアピールしてきたドイツ。デモや集会に参加する人たちからは、その大方針を貫いて欲しいという思いも感じられます。今回の衝突はイスラエルと強く結びつくドイツを揺らし続けています。【2023年12月1日 NHK】
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上記記事は約1年前のものですが、ドイツ政府の対応は基本的には変わっていません。
連立与党・緑の党のべアボック外相は10月14日にドイツ議会でドイツ政府としてのイスラエル支持・支援に関して、「(パレスチナのイスラム組織の)ハマスが人々や学校の陰に隠れている場合、難しい問題ですが、私達は(そこへ攻撃することを)ためらうことはしません。だからこそ、私は国連に対し『民間人のための場所であっても保護対象から外れる場合がある』『テロリストが悪用しているからだ』と明確にしました。それがドイツがよって立つ理念であり、私達にとって、イスラエルの安全保障が意味するものだからです」と演説。
これはイスラエルが民間人・民間施設を攻撃していることを正当化する発言です。
“ベアボック外相の発言に対しては、国連のパレスチナ問題に関する特別報告者であるフランチェスカ・アルバネーゼ氏も、自身のX(旧ツイッター)に、「国連の独立専門家として、私はドイツがイスラエル/パレスチナに対して取っている立場や、その危険な意味合いと結果を深く懸念している。」と。【10月30日 YAHOO!ニュースより】
シュタインマイヤー大統領も「ドイツはイスラエルを支持する責任がある」と。
しかし、一方でイスラエルの攻撃に抗議するデモも広がっています。
ベルリンでの式典でシュタインマイヤー大統領は、ナチス・ドイツのホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)の過去に触れ「ドイツはイスラエルを支持する責任がある。反ユダヤ主義の台頭を二度と許さない」と警鐘を鳴らした。
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【極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」台頭に重なるナチスに同調する動き】
ナチス的なものの復活については、特にドイツ東部で極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が台頭していることはこれまでも取り上げてきましたが、その動きと重なる部分もあるようです。
東西統一から34年近くを経ても旧西ドイツ地域との経済格差は埋まらず、不満の矛先は増加する「よそ者」に向かう。今月中旬訪れたザクセン州では偏狭な民族意識が街に分断を生み、第2次大戦後の独社会で長らくタブーだった、ナチスに同調する動きが顕在化していた。
◇難民待遇に不満
ポーランド国境にあるザクセン州ゲルリッツ。「ドイツで罪を犯した者は、速やかに国外追放されなければならない」。街外れのレストランで、AfDのゼバスティアン・ビッペル州議が熱弁を振るうと、立ち見を含む約100人の聴衆が大きな拍手で賛意を示した。
会場にいた60代の女性は「私は45年間働いたが、年金だけでは生活できない。外国人(難民)は働いていないにもかかわらず、たくさんお金を受け取っている」と不満をあらわにした。
AfDは反国家的勢力と結び付いていると認定され、公安当局の監視下にある。それでもゲルリッツ地区では、6月の欧州議会選で40.1%の高い得票率を得た。
ビッペル州議は時事通信の取材に「支持者はわれわれが極右ではないと分かっている」と強調した上で、「住民は国境に関わる犯罪に長年悩まされ、収入は国内で最も低い水準だ。街は変化を望んでいる」と語った。こうした訴えが、多くの外国人を受け入れ、環境保護やウクライナ支援などを優先する政治に置き去りにされたと感じる市民を吸い寄せている。
◇かぎ十字「当たり前」
「昔はあり得なかった。今は右翼の憎悪表現が当たり前になっている」。同じ学校に子どもが通っているという自営業の男性は嘆いた。
ピルナでは2月、ドイツで初めてAfDが擁立した市長が就任した。市庁舎では例年、LGBTなど性的少数者のパレードの時期に合わせて多様性を表す虹の旗が掲揚されてきたが、今年は新市長が取りやめた。
パレード主催団体副代表のクラウス・エルグナーさん(37)は、右翼思想を持つ人々から公然と侮蔑されることが増えたと感じている。
「彼らはAfDの存在感の増大に力を得ている。だんだんとそれが『普通』になっている」と危機感を訴えた。ピルナに通う女子学生(17)は「対立するデモが繰り返され、街は分断されている。コミュニケーションが足りていない」と表情を曇らせた。
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9月1日の東部2州の州議会選挙の結果は“ドイツ東部2州で1日、州議会選挙が行われ、即日開票の結果、テューリンゲン州で移民排斥を掲げる極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)が第1党となった。同党が2013年の結党以来、州議会で第1党となるのは初めて。ザクセン州でも第1党に肉薄した。”【9月2日 産経】と予想されたようにAfDが躍進し、国政与党が大敗しました。
ドイツの民主主義への脅威を監視する連邦憲法擁護庁(BfV)は昨年、AfDの青年団「ヤング・オルタナティヴ」を極右過激派組織と認定。ザクセン州とテューリンゲン州のAfD支部も極右過激派組織と認定されている。にもかかわらず州議会選で歴史的な大成功を収めたのはなぜか。
テューリンゲン州のビョルン・ヘッケAfD党首はナチス時代のレトリックを使い、極端な民族主義・極右的見解で物議を醸してきた。ベルリンのホロコースト(ユダヤ人大虐殺)記念碑を「恥ずべき記念碑」と呼び、ナチスの過去を「180度逆転」させるよう提唱した。
ヘッケ氏はナチスの準軍事組織ナチスSA(突撃隊)のスローガン「ドイツのためにすべてを」を使用したとして何度も有罪判決を受け、罰金を科せられている。ドイツの裁判所はヘッケ氏を 「ファシスト 」と呼んでも名誉毀損に当たらないとの判決を下している。【9月3日 木村正人氏“極右「ドイツのための選択肢」が地方選で「歴史的」勝利...東西の分断はドイツに何をもたらすのか?” Newsweek】
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