
(【4月5日 BUSINESS INSIDER】90後世代からは「社会の競争は激しくなり、成功の機会は減っている」との声も多い。頑張っても成功できないなら・・・と、中国では競争と距離を置き、自分の世界に閉じこもる「仏系」も)
【お金を払って東南アジアから花嫁を見つけてくるのは時間と労力を省いて社会的な体面を保つため】
中国では長く続いた「一人っ子政策」の結果、男児を希望する親が多く、男女のバランスが著しく崩れ、独身男性の嫁不足が深刻化して、周辺国から人身売買のような形で女性を「調達」している・・・という話は、ここ数年よく目にする話題です。
下記記事もそんな話のひとつ。
****中国で強制結婚させられたミャンマー人女性、推計7500人 報告****
ミャンマー北部で、女性や少女が中国へ売られ結婚を強制される事例が後を絶たず、被害者が推計7500人に上ることが、7日に発表された報告書で明らかになった。紛争が続く両国国境地帯にはびこるこの問題が研究対象になったのは、今回が初めてとみられている。
中国では数十年続いた一人っ子政策の影響で、男性が女性より約3300万人多い。
この差を埋めるべく、カンボジアやラオス、ミャンマーやベトナムの貧困層から、毎年数万人の女性が花嫁として売られている。自ら希望する女性も一部にはいるが、大半がだまされたり人身売買の犠牲になったりしている。
この種としては初とされる今回の研究に携わったのは、米ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生大学院。その報告によると、長年戦闘が続いているミャンマー北部カチン州とシャン州出身の女性推計7500人が、中国で強制結婚を強いられているという。
逃げ出して帰国した、あるいは今なお中国に暮らす大勢の女性らから聞き取り調査を行い、インタビューを実施。このうちの大半が、出産も強要されていた。
報告書の執筆者の話では、女性がミャンマーを去るのは「紛争と強制退去、貧困」が原因で、中国人口の男女比の不均衡のせいで同域の女性らへの需要が高まっているという。
インタビューに応じた女性の一人は、3回中国へ売られ、そのたびに「出産を強制された」と語っている。現地調査員は「政情不安、紛争、土地接収などにより、女性の安全確保は大きな課題となっている」と指摘している。
結婚は家族や村の長老らがまとめ、仲介することが多い。女性は社会階級の最下層にいるため、拒否できない。若い女性ほど高値が付き、最高約110万〜170万円で取引されるという。
女性らの結婚相手は概して、中国国内で妻探しに苦労する、地方在住の高齢者、病気や障害のある男性ら。一方女性らは公文書の不備が原因で、法律上不安定な立場に陥るケースが多いとされる。【12月7日 AFP】
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この種の話を、中国男性側から見たのが下記記事です。
****中国の独身男性、体面保つためメコン川流域国の結婚仲介業者に数千米ドル払う****
2018年12月15日、中国紙・環球時報(電子版)によると、仏AFP通信は14日、中国で「光棍」と呼ばれる孤独な独身男性が、体面を保つためメコン川流域国の結婚仲介業者に数千ドルを支払っていると報じた。以下はその概要。
農業をしているという41歳のある男性は、「この年になるともう中国国内での嫁探しは難しい」とし、お金を払って東南アジアから花嫁を見つけてくるのは時間と労力を省いて社会的な体面を保つためだと話している。
男性は結婚仲介業者に約13万元(約213万円)を支払い、ベトナム人の26歳の女性と結婚した。男性は再婚で、妻の実家に毎月約1200元(約2万円)程度の生活費を送っているといい、「大した額ではないが、向こうにはこれが生活していく生命線なんだよ」と明かした。
中国の農村では結納金の相場が上がる一方で、17年には一部の農村地区で20万元(約328万円)もかかるようになった。
結婚相手の見つからない独身男性の多くは中高年で、しかも離婚歴があったり、障害があったり、経済的に苦しかったりと国内ではなかなか良縁を期待できない。
そこで目が向けられるようになったのが、結納金の相場が比較的安い東南アジアだ。こうした男性たちにとって、結婚は単に自分だけのことではなく、一族が存続できるかどうか、さらに社会的な体面を保つことができるかどうかの大問題なのだ。
中国は人口男女比に大幅な不均衡が生じている。短期間のうちに解消する可能性は極めて低く、そうした面でも海外から花嫁を連れてくる需要はなくならないとみられている。【12月16日 レコードチャイナ】
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上記記事の中国男性は“妻の実家に毎月約1200元(約2万円)程度の生活費を送っている”とのことですから、比較的“良心的”な部類なのでしょう。
金額も“結婚仲介業者に約13万元(約213万円)”と、冒頭記事の“若い女性ほど高値が付き、最高約110万〜170万円で取引される”に比べるとかなり高額ですから、違法な人身売買ではなく、合法的な結婚仲介なのでしょう。
金額は、取引形態・地域によって様々でしょう。
“結婚相手に支払う金の余裕もないため、これらの男性たちは斡旋業者を通じ、ベトナム、ラオス、カンボジアといった国々から花嫁を迎える。河南省山間部の寒村では、ベトナム人女性と結婚する費用は約3200ドル(約34万円)と、地元女性の4分の1で済むとチョウ氏は説明している。”【2月21日 NewSphere】といった数字も。
それにしても、毎月約1200元(約2万円)程度の送金について、農業従事者が「大した額ではないが」と言えるまでに中国社会も豊かになった・・・と、全く別の観点で再認識した次第です。
【女児がいない訳ではなく、無戸籍になっているだけ・・・との指摘も それもまた大問題】
中国社会は貧富の差が大きい、農村部は未だに非常に貧しい・・・といったことはいつも言われますが、そんななかでも、それなりに農村部の生活の底上げが進んでいるのでしょうか。
当然に、中国国内でも問題にされ、いろんな意見もあるようです。
また、3000万人超の男性が余ってしまうという数字についても、「実際はそんなことはない」との異論もあるようです。
****中国、「3000万人の男性が結婚難」の真偽 ****
中国で今後30年間に結婚できない男性が3000万人に上るといわれる。中国人口学会などの権威筋が繰り返し試算してきた数字だ。
1979年から2015年まで続いた一人っ子政策のために、男女の出生バランスが崩れた。とりわけ農村部では未婚男性が多く、適齢期の女性が少ない社会が到来しつつある。
中国の男性は伴侶を見つけられずに苦悩している。男女比のゆがみは若いベトナム人女性を人身売買するような悲劇まで生み出した。(中略)
農村の嫁不足を放置すれば人身売買や性犯罪が多発するとみたのか、学術界も処方箋を出している。
中国人民大学の毛寿竜教授は「外国人女性に中国に来て生活してもらうべきだ」と提案した。人身売買のような不法で非人道的な手段をとらず、合法的に中国に外国人女性を移民させ、独身男性と結婚させようという考えだ。
ただし、これは逆に中国に女性を送り出す側の国が適齢期の女性の不足に陥り、中国への非難が高まる恐れがある。
浙江財経大学の謝作詩教授は1人の妻に多くの夫が一緒に生活する「一妻多夫制」を唱え、論議を巻き起こした。極端に貧しい農村では兄弟で1人の女性を妻にする例が見られるとし、低収入の男性は複数が集まって1人の妻を持つ連合婚を試みてはどうかと訴えた。
あまりにカネ万能の結婚観で、しかも男女不平等につながる主張に同調者は少なく、非難が巻き起こった。こんな珍説が現れるほど中国の男性は結婚難に追い込まれているのだろうか。
■男女比のゆがみ、無戸籍女児を含めると大きくない?
男女比のゆがみは語られるほど深刻ではないとする反論もある。
米カンザス大学のジョン・ケネディ准教授と陝西師範大学の史耀疆教授は、男女比のバランスが崩れて見えるのは女児が生まれても出生届をしていないからだと主張する。
一人っ子政策が強要されるようになると、中国の農村では女児が生まれても生まれていないことにし、男の子だけの出生を届け出た。女の子はこっそりと育て続け、村の指導者も見て見ぬふりをしてきた。
2人の共同研究では、25年間で2500万人の女性が出生時に届けられていなかったと推計している。確かに筆者もかつて訪問した村々では、男女のきょうだいが遊んでいる様子をたくさん見た。
村の指導者が「あれは本当のきょうだいではなく、いとこなのです」と慌てて弁解する姿もあちこちで見た。
出生後に何年もしてから戸籍に編入された女児も多いが、そのまま無戸籍になった子供もいる。戸籍がないため、この世に存在していない扱いとなる。学校にも通えず、各種行政サービスも受けられない。
中国の経済統計は必ずしもあてにならないが、人口統計もうのみにしてはいけないのかもしれない。3000万人の男性が結婚難に陥るという説はどこまで本当なのだろうか。
男性の結婚難を議論するのは大切だが、その前に無戸籍児を含めた正確なセンサス(国勢調査)がもっと重要だろう。中国はまったくもってして一筋縄ではいかない国だ。【2017年3月24日 日経】
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“25年間で2500万人の女性が出生時に届けられていなかったと推計している”とのことですが、「一人っ子政策」に伴う無戸籍児の問題は以前から指摘されているところです。
千万人単位で、教育・医療・年金などの公的サービスが受けられない無戸籍児で発生しているとしたら、それは独身男性の嫁不足以上に深刻な社会問題ともなります。
【人類の貧困撲滅史上の「奇跡」で実現した豊かな社会 そこでは「仏系」、「軟弱系」、そして「自分らしさ」の主張】
嫁不足にしても、無戸籍児にしても、極めて大きな課題を残した「一人っ子政策」ですが、中国社会がこの間、“奇跡的”ともいえる貧困撲滅に成功したのも事実です。
****中国の貧困発生率、40年で97.5%から3.1%に―中国メディア****
国務院貧困支援弁公室の劉永富主任は、8日に開かれた「中国貧困支援改革40周年座談会」において、「改革開放以来40年間で、中国農村部では約7億人が貧困状態から脱却することができた。
1987年に97.5%だった貧困発生率は、2017年末には3.1%まで低下し、人類の貧困撲滅史上、奇跡ともいえる偉業を成し遂げた」と語った。新華社が伝えた。(後略)【12月13日 レコードチャイナ】
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この“奇跡”の実現を、「一人っ子政策」による人口抑制が支えたとしたら、その功罪は慎重に検討する必要があります。
でもって、豊かになった中国社会で、今年前半ぐらいの記事でよく目にした「仏系」と呼ばれる若者。日本の“草食系”にも似た現象です。
****中国の「仏系」ミレニアル世代、穏やかで十人並みがモットー****
中国の指導者は、一生懸命働き大きな夢を抱けと市民たちを鼓舞する。だが、ミレニアル世代の中には、ずっと十人並みであり続けることを宣言する若者たちがいる。
この若い世代は「仏(ほとけ)系」の若者たちと呼ばれている。何も経を読むわけではない。穏やかで、なるように任せるという姿勢で人生に臨むその様子からそのように呼ばれているのだ。
「人生はとても疲れる」と語る23歳のグオ・ジアさんは「仏系」について、「自分の力で変えられないことを受け入れ、流れに従っていく」人のことだと説明する。
中国の若い努力家たちの多くと同様、グオさんは自分自身に課した大きな期待に応えるために首都・北京にやって来た。しかしその当初から、就職した金融関係の仕事から地下鉄での通勤まで、あらゆることに不安を覚えていたという。
それから1年以上を経て、グオさんは物事をあるがままに任せることに安らぎを見いだすようになった。「最近はほぼ穏やかで平静です。人生に満足を感じれば、それで十分です」と心情の変化について明らかにした。
「
中国の夢」なる理念の周りに、特に若者を結集させようと習近平国家主席が奮闘している中国で、このような発言が聞かれるのはなんとも奇妙ではある。
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中国ミレニアル世代の仏僧のようなユニークな姿勢に注目が集まるようになった背景には、メッセージアプリ「ウィーチャット」で人気のアカウント「Ways of the 21st Century」の存在がある。ここではさまざまなタイプの「仏系」が描写されていた。
例えば「仏系の乗客」は、配車サービスの「滴滴」の運転手に自分がいる場所を説明するよりも自ら歩いて車両のある場所まで行くこと選び、「仏系のネット通販利用者」は嫌いなものでも送り返さず、「仏系の労働者」は「職場に無事到着し、静かに家に帰る」ことを何よりも望んでいる、といった具合だ。
「仏系」の人々は何も欲しない。なぜならば何も期待しないからだ。勝っても負けても不運でも幸運でも、すべてを受け入れる。
長年の一人っ子政策と経済の急成長は中国の若者らに、学業で成功を収めて社会で出世しろと多大な圧力をかけてきた。表面的には彼らは「普通」の生活を送っている。同僚とランチを食べ、週末にはスポーツに興じる。でも「仏系」の若者たちは何事につけても、やり過ぎることを警戒している。(後略)【12月16日再掲 AFP】
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一方、年長世代や党のお偉方が顔をしかめるような「軟弱系」アイドルがあふれる時代にもなっています。
****「軟弱系」アイドル旋風に共産党は渋い顔?****
<オシャレなイケメン男性アイドル「小鮮肉」が大人気。年長世代には「女々しい」と不評だが、若い女性の支持を追い風にブームはまだ続きそう>
今年9月1日、中国のインターネットでちょっとした騒動があった。国民的な子供向けテレビ番組『開学第一課』の出演者に「軟弱な男の子」が多過ぎると、批判が巻き起こったのだ。
この10年ほど、中国のポップカルチャーは「小鮮肉」と呼ばれる若い男性たちに席巻されている。整った顔立ちにオシャレな身なり、スリムな体形に完璧な髪形をした男性アイドルたちのことだ。いま中国では、リー・イーフォン(李易峰)、ヤン・ヤン(楊洋)、ウー・イーファン(呉亦凡)、ルー・ハン(鹿晗)といった男性アイドルを見ない日がない。
『開学第一課』は、国営放送の中国中央電視台(CCTV)と中国教育省が共同で作る毎年秋の恒例の大型番組だ。それが「軟弱」な男性たちで埋め尽くされることに、一部の年長世代は我慢がならないのだろう。
中国の国営・新華社通信の匿名コラムも、小鮮肉たちを「娘砲」だと揶揄した。「女々しい男」という意味だ。子供や若者が小鮮肉に夢中になるあまり、社会に弊害が生じかねないと、コラムの筆者は指摘した。「民族復興の任務を担う人材を育むためには、若者を好ましからざる文化から遠ざけなくてはならない」というのである。(後略)【12月12日 Newsweek】
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一方、ロリータファッションで“自分らしく生きる”ことを求める女性も。
****中国でロリータファッションモデルの女子大生「批判されることも」****
浙江農林大学4年の女子大生・謝安然さんは、ロリータファッションが大好き。彼女にとってはロリータ服が「普段着」。謝さんは授業の合間にショッピングサイト・淘宝のロリータファッションモデルとしても活躍している。
彼女は、「自分で稼いだお金でロリータのスカートを100着以上買ったわ。一番高いもので1万元(約16万円)以上したのよ」と話す。そのコーディネートには毎日1〜2時間かかるが、彼女はロリータファッションを身に着けた時の「特別感」がたまらなく好きなのだとしている。
モデルの仕事は、撮影が深夜や明け方までかかることもしばしば。杭州の寒さに震える冬でも酷暑の夏でも撮影を行うため、熱中症になって病院に搬送されてしまったこともあるという謝さん。そんな彼女は、「ネット上でいろいろ批判されることもあるけど、自分の好きな服を着て、自分らしく生きなければと思っているの」としている。【12月11日 レコードチャイナ】
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総じて、政治体制の違いを超えて、日本社会とも共通した社会現象が生まれているようにも見えます。
中国と言うと、アグレッシブで、ときにルールを無視しても「成功」を追い求める・・・というイメージがありますが、そうした見方もステレオタイプに過ぎるのかも。
社会的に類似してくれば、国民間の相互理解も容易になり、ひいては政治的緊張も・・・・というのは楽観に過ぎるでしょうが、まあ、年の瀬で来年に向けてということで。