lonelylika’s diary

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ

シリア  ロシア主導で進む和平協議 復興もロシア・イラン主導


(シリア北部ラッカで、イスラム国(IS)からの解放後初めての結婚式を挙げた新郎(中央右)と新婦(中央、2017年10月27日撮影)【10月29日 AFP】)

東グータへ支援物資到着
内戦が続くシリアについては、首都ダマスカス近郊の政府軍に包囲された反体制派が支配する東グータ地区の惨状について、ショッキングな写真とともに、10月24日ブログ“シリア ラッカ解放でも続く戦闘・悲劇”で紹介しました。

食糧等の支援物資の搬入ができず、子供が次々に餓死している・・・との状況でしたが、ようやく物資搬入が可能になったそうです。

****子どもが餓死のシリア反体制派地区、4万人分の支援物資到着****
シリアの首都ダマスカス近郊に位置し、政府軍の包囲が続く反体制派支配地区の東グータに30日、4万人分の支援物資が届けられた。同地区では住民や援助団体が飢餓などの人道危機が深刻化していると訴えていた。
 
AFPが今月現地で撮影した写真には、見る者に衝撃を与えるほど痩せこけた子どもの姿が写っている。医師らによると、栄養失調と合併症で乳児2人が死亡したという。
 
AFPの記者の話では、東グータの町メスラバに集まった住民の中には、政府軍による封鎖の終結を求めるメッセージや、今月に入り生後1か月で餓死した乳児の写真を掲げる人の姿もみられた。
 
赤新月社によれば、トラック49台が8000箱の食料、それとほぼ同数の小麦粉や薬、医療品が入った箱を運び入れた。
 
東グータはかつては農業が盛んで果樹園が有名だった。しかし2013年以降、政府軍の包囲が厳しくなり、食料や薬が不足している。【10月31日 AFP】
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どういう経緯で今回の搬入が認められたのかは知りません。国際的に広く報道されたことで、批判が高まることを懸念してでしょうか?
今後とも搬入が継続して行えるのかも知りません。

とりあえずは、事態が若干なりとも改善したということで・・・・。
ただ、ユニセフは“子どもたちや教育施設が攻撃されている”との警告を出しています。

****シリア・東グータ 止まらない学校への攻撃と子どもの犠牲****
子どもへの攻撃停止を強く求める ユニセフ中東・北アフリカ地域事務所代表声明

包囲された状態が続くダマスカス郊外の東グータ地区で教育施設への攻撃が続いていることについて、ユニセフ(国連児童基金)中東・北アフリカ地域事務所代表ヘルト・カッペラエレが、以下の声明を発表しました。

子どもへの攻撃停止を強く求める
この48時間の間に、私たちのもとには包囲された状態が続くダマスカス郊外の東グータ地区で、引き続き子どもたちや教育施設が攻撃されているショッキングな報告と写真が届いています。

今日、ユニセフのパートナー団体は、ジスレン学校が攻撃され、子ども4人が死亡したと伝えてきました。
また、ミスラバ(学校への攻撃では子ども3人が死亡したと伝えられています。10月29日には、同じ地域の幼稚園が攻撃を受け、子ども3人と教員2人が負傷しました。

ユニセフはパートナーと協力して、これらの報告の詳細を確認しているところです。現時点でわかっていることから、シリアでは子どもに対する戦争が弱まることなく続いているということが言えます。(中略)

私たちは今まで何度も訴えてきましたが、あらためて言います。
私たちの共通の人間性のために、シリアの子どもたちに対する戦争は終わらなければなりません。

これまでの私たちの求める声が、聴き入られることはありませんでした。今なら、紛争当事者と彼らに影響力のある人々は、子どもたちを守るための行動を取るでしょうか?【2017年10月31日  ユニセフ
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支配勢力を支える住民の生活を立ち行かなくするために病院や学校は攻撃の標的ともなります。
攻撃する方からすれば、相手がそうした施設を住民・子供を隠れ蓑にして拠点として使っているから・・・という話にもなります。

“共通の人間性”が吹き飛んでしまうのが“戦争”の実態と言うしかありません。

大勢を掌握しつつある政府軍
白黒の決着がついて戦争が止まない限りは、上記のような悲劇も繰り返されるのでしょうが、そういう意味では、シリア政府軍が全体を掌握する方向の流れで戦況は進んでいます。

ラッカを追われたISが拠点としたデリゾールも政府軍が掌握するところとなったようです。

****シリア軍、東部デリゾールをISから奪還 監視団****
シリア政府軍と親政府派勢力は、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」が支配していた同国東部のデリゾール市を完全に制圧した。英国に拠点を置くNGO「シリア人権監視団」が2日、明らかにした。
 
当局は今のところ制圧を確認していないが、国営メディアはこれに先立ち、軍が同市内の複数の地域を解放したと報じていた。
 
ISはシリアの他の地域や隣国イラクで一連の戦闘に敗れており、デリゾール陥落により、支配下に置いていた最後の主要都市を失ったことになる。(後略)【11月3日 AFP】
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ロシア主導の和平協議 クルド人勢力も参加へ
政府軍がISを駆逐する形で大勢が決する流れを受けて、関係国の“和平”に向けた取り組みも現実味を増してきます。

協議は、戦局で優位に立つ政府軍を支援するロシアが主導する形ともなっています。

10月30日、カザフスタンの首都アスタナで第7回和平協議が始まりました。協議はシリアに影響力を持つロシア、イラン、トルコの3カ国が仲介し、アサド政権と反体制派の双方が参加して行われました。

****当事者は捕虜交換を=シリア和平協議で共同声明****
シリア内戦の終結を目指し、カザフスタンの首都アスタナで開かれた第7回和平協議は2日目の31日、全体会合を開き、仲介国がアサド政権と反体制派に捕虜交換を呼び掛ける共同声明を発表した。

憲法制定や選挙実施に向けてシリア国民会議を開催するというロシアの提案を検討することでも一致した。
 
前回の協議までに衝突回避のため「安全地帯」を設置することで合意しており、政治対話の前提となる信頼醸成措置を一歩進めた格好。

ただ、2011年から泥沼化する内戦で双方の対立は根深く、緊張緩和につながるかは予断を許さない状況だ。
 
ロシア、イラン、トルコの仲介国3カ国は共同声明で、アサド政権と反体制派の停戦で、過激派組織「イスラム国」(IS)掃討作戦は進展していると歓迎した。アスタナでの次回協議を12月後半に開催することも申し合わせた。
 
全体会合後の記者会見で、ロシアのラブレンチェフ大統領特使は「ISとの戦いは終わりに近づいている。政治対話について考える時だ」と強調。プーチン大統領が先に提案したシリア国民会議をロシア南部ソチで開催したい考えを示した。
 
これに対し、反体制派は「(ジュネーブやアスタナの協議があるのに)なぜ別の会議が必要なのか」とロシアの提案に不信感をあらわにし、実現に難色を示した。

また、反体制派の一人は「(ロシアとアサド政権は)子供を殺したり、女性を拘束したりしており、まずはそれをやめるべきだ」と主張、声を荒らげる場面もあった。【11月1日 時事】
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ロシア主導の“シリア国民会議”には、これまでシリアでの和平プロセスに含まれなかったクルド人勢力も含まれているとのこと。

ISが駆逐されて戦闘の終わりも見え始め、戦局を主導するシリア政府と、アメリカ支援の下でラッカを攻略し、政府軍に次ぐ支配地域を持つクルド人勢力も会議に参加するということで、ようやく実体を伴う和平協議が可能な状況が整ってきたとも言えます。

アサド政権を支えて戦局を掌握しつつあるロシアが主導的な役割を果たし、劣勢に立つ反体制派の影が協議でも薄くなるのはやむを得ないところでしょう。

****ロシア、中東で増す存在感 シリア国民対話会議、ソチ開催検討****
ロシアが中東への関与を強めている。イランやトルコとともに主導するシリア和平協議では、アサド政権と反体制派が話し合う「シリア国民対話会議」の開催を検討すると決めた。
シリア内戦への介入を契機に中東での存在感を高めるロシアには、米国の一極支配を崩す狙いがありそうだ。
 
(中略)「シリア国民対話会議」は、ロシアのプーチン大統領が10月、すべての民族と宗派の参加を想定して提案。プーチン氏は「シリアの政治正常化と、その後の新憲法策定への重要な一歩になる」と意欲を示した。
 
シリア国民が主体的に新憲法制定に向けて議論するという体裁を整えて既成事実をつくり、ロシアが後ろ盾となるアサド政権存続の正当性を訴える狙いがあるとみられる。
 
一方、反体制派は、ロシアが主導する和平への動きに警戒を強め、「シリア国民対話会議」への参加に難色を示す。米欧が支援する反体制派の統一組織「シリア国民連合」の報道担当はSNSで「ロシアはアサド政権側に立ち、中立ではない」とコメントした。
 
ロシアは2015年9月にシリアでの空爆を開始。当初はISへの攻撃が名目だったが、その後、攻撃を他の組織にも拡大した。アサド政権は窮地を脱し、いまや内戦での優位は決定的。ロシア抜きでは、シリアの和平実現は難しい状況となった。
 
ロシアはシリアへの介入を機に、ソ連崩壊後に低下した中東への影響力も回復しつつある。

10月には、親米路線を採ってきたサウジアラビアのサルマン国王が初めて訪ロし、プーチン氏と会談した。プーチン氏は10月、トルコのエルドアン大統領やイスラエルのネタニヤフ首相とも電話などで協議するなど、中東外交を活発化させている。

サウジやトルコ、カタールとはミサイルなど武器売却の交渉も進んでおり、中東での米国の影響力低下を狙う。
 
プーチン氏は1日にイランを訪問し、ロハニ大統領と会談した。トランプ米大統領は、イランが15年に米欧などと結んだ核合意を認めない立場。これには欧州も反発する。プーチン氏はイランで米国の「不当な要求」を強調することで、欧州の米国離れも促す思惑があるとみられる。【11月2日 朝日】
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アメリカ・トランプ政権が、こうした状況にどのように関与する戦略なのかは知りません。トランプ政権の中東戦略がはっきりしないことは以前から指摘されているところです。

****アサド政権、未来ない」=シリア内戦終結に向け―米国務長官****
ティラーソン米国務長官は26日、訪問先のジュネーブで記者会見し「シリアのアサド政権とアサド家には未来がない」と述べ、内戦終結後のシリアの新体制にアサド大統領は含まれないとの認識を改めて示した。
 
過激派組織「イスラム国」(IS)が「首都」と位置付けていたシリア北部ラッカが解放されるなどIS掃討戦が最終局面を迎える中、ティラーソン氏は内戦終結に向けて国連が仲介するアサド政権と反体制派の和平協議を支持すると強調した。【10月27日 時事】
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未来があるか、ないかはともかく、シリアの現実を見れば、アサド政権を含めた形での“戦後処理”を考えざるを得ないところです。

早期の戦闘停止・和平実現に向けて、アサド大統領の当面の存続も認めた形の現実的対応を明示することがいいように思われます。

復興もロシア、イラン主導で 新たな分断の懸念も
シリアの復興事業もロシア、そしてイランを軸に進む様相のようです。

****ロシアとイランがさらうシリア内戦後の復興利権****
<欧米各国は、アサド退陣の道筋が見えない限り復興事業には参加しない意向を示しているが>

6年間に数百万人の生活基盤を破壊し、数十万人の命を奪った悪夢のシリア内戦にも、ようやく収束の兆しが見えてきた。

アサド大統領の政府軍は、反政府勢力が支配していた地域の大半を奪還。テロ組織ISIS(自称イスラム国)は主要拠点から駆逐された。

シリア内外の企業は現在、復興需要に期待を寄せている。内戦で破壊された橋や道路、建物、発電所の再建が始まれば、こうした企業は魅力的な公共事業の恩恵にあずかれる。

8月には、数十カ国の企業が首都ダマスカスの国際見本市に殺到した。11年に内戦が始まって以来、この商業イベントが開催されたのは初めてだ。ただし、千客万来というわけではない。反政府勢力側についた国々の企業は招待されなかった。

復興事業絡みの契約の多くは、アサドを支援したロシアとイランの企業が手にすることになりそうだ。中国とブラジルの企業も商機をうかがう。

一方、欧米企業の姿はほとんど見えない。反アサドの立場を取る大半の欧米・湾岸諸国は9月14日の国連総会で、アサド退陣の政治的道筋が見えない限り、シリアの復興事業に参加しない姿勢を打ち出した。

マクマスター米大統領補佐官(国家安全保障担当)は10月19日、こう強調した。「この残忍な政権の支配下での復興には、1ドルも出さないようにすべきだ」

反政府派の地域は無視
ロシアはシリア内戦に軍事介入した半年後の16年4月、早くもインフラ事業など10億ドル近い契約を受注した。ロシアの政府系ニュース局RTによると、アサド政権は16年11月、ロシアに復興事業の優先権を与えると約束した。既にロシア政府と関係の深いエネルギー企業は、ISISの旧支配地域で石油、ガス、鉱業関連の事業を開始している。

アサド政権はもう1つの支援国への配慮も忘れていない。イラン革命防衛隊の関連企業は今年、電話網の再構築と鉱業分野の契約を受注。9月には複数のイラン企業が、北部アレッポと西部ホムスを含む数都市と発電所再建事業に関する予備契約を締結した。イランの石油関係者によれば、シリアでの製油所建設も請け負う見込みだという。

他の国々も動きだしている。ブラジルのヌネス外相は10月19日、シリアとの国交正常化と12年に閉鎖した大使館の再開を目指すと語った。復興事業へのブラジル企業の参加を後押しするための措置だ。国際見本市には、少なくとも3000億ドルといわれる復興事業を当て込んだ欧米の中小企業数社も参加した。

とはいえ、復興事業はシリア全体に恩恵をもたらすわけではない。反アサド派のエリートは既に大半が国外に脱出済み。国内に残った政権支持派が外国企業と組んで利権を獲得すべく新規事業を立ち上げている。

地域格差が出るのも確実だ。アサド政権は反政府勢力の拠点になった地域に復興資金を回す気はないと、英王立国際問題研究所のリナ・ハーティブは言う。「アサド政権はシリア全体の復興には興味がない。関心があるのは政権に忠実な地域だけだ」

援助団体は、こうした復興の偏りは内戦中に顕在化した分断と人権侵害を固定化することにしかならないと懸念している。

オックスファムセーブ・ザ・チルドレン、ケア・インターナショナルを含む複数の援助団体は、今春に共同声明を発表。人権を尊重しないアサド政権の主導で行われる「復興支援は、むしろ害のほうが大きくなる可能性がある」と警告した。【11月1日 Newsweek
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「アサド政権はシリア全体の復興には興味がない。関心があるのは政権に忠実な地域だけだ」というのは“現実”ではありますが、これを放置すれば格差・不公平感を助長し、新たな対立の火種にもなります。

こうした分断を改善するためにも、アメリカが今後の“枠組み作り”に積極的に関与していくことが望まれます。