lonelylika’s diary

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ

ロシア革命から100年 「強いロシア」「母なるロシア」への思いが交錯 微妙な帝政ロシア・ソ連の評価


ロシア革命に倒れたニコライ2世の禁断の愛を描く映画「マチルダ」のポスター 宗教右派からは皇帝の名誉を汚すとの批判、映画館放火の警告も。ソ連再評価が進むロシア政府は上映擁護 【10月24日 毎日】)

若く、のびやかな大都市モスクワ 「母なるロシア」への回帰も
ロシア・モスクワには行ったことはありませんが、そのイメージはソ連時代、そして崩壊後の混乱期の記憶もあって、どこか重苦しいものを感じます。

しかし、少なくとも大都市モスクワに限って言えば、以前と印象は大きく変わっているようです。
一見したところは、欧米の都市と変わらない雰囲気も。

ただ、“「母なるロシア」への愛国心”がいたるところで強調されるというのが、現在のロシア・モスクワのひとつの特徴のようです。

****AFP記者コラム】二度と来ないと決めたのに…3度目のモスクワの驚き****
・・・・私が最も驚いたのは、若者たちだ。彼らは新世代ロシア人だ。10年前の典型的なティーンエージャーのイメージと言えば、ビールを手に公園で酔っ払っている子たちだった。今は探そうとしても、そんな若者はまったくいない。

公園にいる若者がしているのは、スケートボードローラーブレードやダンスだ。まったく新しい表情、とてもオープンでとても現代的で、まったく異なるジェネレーションだ。

もちろん今、私はほとんどモスクワで過ごしているし、他の国の大都市と同様、モスクワはロシアではない。だが、この変化はとにかく衝撃的だった。
 
以前はモスクワの公園に行けば、お年寄りがいた。だが今はほとんど若者ばかりだ。スケートボードローラーブレード、ジョギング、ダンス、ヨガ……長く冷たい冬の後にようやく訪れた暖かい春、という見方もできるだろう。

自分がどこにいるのか知らなかったら、西欧のどこかの国かと思えるほどだ。外見だけは、髪の色がピンクだったり、黄色だったりグリーンだったり、ちょっとワイルドだ。あとは女の子たちがヒールを履いて、メークをしている。米国だったら女の子たちはサンダルを履いて、ノーメークだ。

だが、以前だったらモスクワ女子の必須だったミニスカートは消滅している。今の暗黙のユニフォームは、細身のスキニージーンズだ。(中略)

以前だったら撮影できなかったような場所、モスクワの地下鉄の中とか、赤の広場(Red Square)の横にあるグム(GUM)百貨店の中でも撮影できる。

もう一つ、驚いたのが、愛国心ナショナリズムの発露だ。「母なるロシア」への愛国心をそこかしこで目にする。どこに行っても、ロシアが一番、と吹き込まれる。ロシア国旗も、Tシャツ、パーカー、土産物からマグネットまで、いたるところにある。

私自身が10年前に撮影したプーチン大統領の写真が使われたマグネットさえ目にした。これまでに見た最も人気のあるTシャツは「我々は奴らに勝つ」というフレーズが入ったシャツだ。「奴ら」とは誰か、というのは書いていない。

テレビのニュースも変化していた。放送されるニュースのほとんどはプーチン氏が何をした、何を言ったという報道か、ウクライナがどれだけひどい国かといった報道だ。ローカルニュースは多少入るが、国際ニュースは極めて少ない。昔は世界中から届いたニュースを目にした。だが今は極めてロシア中心的だ。

他の変化は、オープンカフェが何百もできて、前よりも人がたくさん外にいることだ。サービス産業にも驚いた。スウェーデンの家具販売店、イケア(IKEA)はここでは夜中の2時までやっている。夜中の1時にソファを買ったら、昼間にはもう配送されてきた。
 
レンタカーを借りるのには、電話を2回かけ、メールを3回送り、店頭に車を引き取りに行くだけだ。クレジットカードを出し、パスポートを見せ、2通の書類にサインをしたら手続き完了。米国だったら10通以上の書類にサインしなければならなかっただろう。

だが、これほどたくさんの変化があっても時々昔のソ連の面影がよぎる。以前は外国人は入国から1週間以内に当局に登録しなければならなかったが、今ではこの期限が24時間しかない。(後略)【10月31日 AFP】
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ロシア革命から100年 微妙なその評価
今年2017年は、ロシア革命から100年という大きな節目の年ですが、あまり大きくアピールされてはいないようにも思えます。

そこには、ロシア革命をどのように評価するかについて、ロシア・プーチン大統領の微妙な心情があるようにも見えます。

****ロシア革命100年 「皇帝プーチン」、対応に苦慮 ****
ロシア革命から100年。帝政ロシアの崩壊(2月革命)からレーニン率いるボルシェビキによる権力掌握(10月革命)へと展開し、世界を揺るがした大事件をどう評価するか。100周年の節目に際し、世界的に議論が盛り上がる中で、ロシアのプーチン政権は対応に苦慮しているように見える。(中略)
 
政権は革命100周年の節目をどう総括するか決めかねている。プーチン大統領は2016年末の記者会見で「1917年を振り返るにあたり、分裂ではなく、和解に向けて動かなければならない」と短く触れただけ。

同年10月の議会演説ではニコライ2世の下で改革を担いながら革命派を容赦なく弾圧したストルイピン首相の言葉を引用し「結束」を求める場面もあった。「大国復活」を求心力としているだけに、強いロシアと帝政時代を重ねる傾向が強いことは確かだ。
 
独立系レバダセンターの世論調査によると、ニコライ2世がロシアに良い影響を与えたと答えたのは52%、対するレーニンは46%とほぼ拮抗している。世論が割れているため、政権は革命100年への立場を示しにくい面もある。

メドベージェフ首相は1月末、「評価は歴史家に任せるとして、イデオロギーの違いによって社会を分裂させないことが重要だ」と語った。100周年の式典などの予定も今のところ発表されていない。(後略)【3月16日 日経】
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プーチン大統領が「強いロシア」を目指すなかで、スターリン再評価が進んでいることはしばしば取り上げられるところです。

****プーチンのおかげで高まるスターリン人気****
スターリンの大粛清の血塗られた歴史は忘れ去られ、「歴史上最も重要な人物」に選ばれるまでに>

1970〜80年代のソ連では、「偉大な革命家」ウラジミール・レーニンの肖像が街にあふれていた。しかしその後を継いだヨシフ・スターリンの肖像を見掛けることは皆無だった。

独裁者スターリンの罪を暴いたのは、後継者のニキータ・フルシチョフだ。56年のソ連共産党大会で秘密報告を行い、大粛清の恐るべき実態などスターリンの個人崇拝が招いた弊害を糾弾、世界を震撼させた。以後、スターリンを革命の英雄とあがめる風潮はなくなった。

70年代にモスクワで育ったジャーナリストのマーシャ・ガッセンは、スターリンについて「学校では教わらなかった」と言う。「まるで存在しなかった人物のよう。スターリン時代は丸ごと歴史から消されていた」

だが今、葬り去られたはずの偶像が掘り起こされ、再び人々の崇拝の的になっている。

かつてドイツ軍とソ連軍が激しい攻防戦を繰り広げたボルゴグラードスターリングラード)に程近いボルガ川東岸の都市サマラには、42年にスターリンのために建設された地下壕がある。91年のソ連崩壊以前には地下壕の存在は隠されていたが、今ではここはちょっとした観光スポットになっている。(中略)

ドナルド・トランプ米大統領の誕生が多くのアメリカ人にとって晴天のへきれきだったように、ソ連時代を知る人たちにとってスターリン復権はまさかの展開だ。ロシアには強権的な指導者を求める国民感情が根強くあるから、この風潮はなおさら危険と言わざるを得ない。

民主主義より大国主
スターリンの罪は忘れ去られ、第二次大戦を勝利に導いたと持ち上げられるなど、偉大さばかりが喧伝されている。スターリン復権は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が長年温めてきた構想だからだ。

ロシアの独立系調査機関レバダセンターの最近の世論調査で、回答者が「歴史上最も重要な人物」に挙げたのはスターリンだった。2番目には詩人のアレクサンドル・プーシキンと並んで、プーチンの名が挙がった。同センターの別の調査でもスターリンの支持率は46%で、過去16年間で最高だった。

ロシアが欧米に対して敵対的な姿勢を強め、核戦争の脅威が現実味を帯びつつあるだけに、こうした調査結果は気掛かりだ。スターリン時代を知る高齢者が次々に亡くなっていることに加え、独立系メディアがほとんど存在しないことも手伝って、ロシア政府は歴史を好き勝手に歪曲できる。

ノースウェスタン大学ゲーリー・モーソン教授は、ロシア人が大国の誇りをどれほど重視しているか、アメリカ人には理解できないと指摘する。

多くのロシア人にとって、90年代の民主化の試みは大国の栄光の歴史から逸脱した混乱でしかなかった。ソ連時代を懐かしむ風潮が高まるなか、プーチンの登場は「母なるロシア」への回帰として多くの国民に熱狂的に歓迎された。

ロシアには民主主義は根付かないのだろうか。「そんなことはない」と言いたいが、プーチンの強権支配下で飼いならされた人々が歴史の教訓を忘れて、強い指導者に熱狂する様子を目にすると、絶望的な思いを拭えない。【8月24日 Newsweek
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「母なるロシア」「強いロシア」への憧憬、“強い指導者スターリン”再評価の流れは上記のとおりですが、プーチン大統領も(以外にも)ソ連時代の人権侵害・市民弾圧を全く無視している訳でもないようです。大統領選挙を控えて、リベラル派へのアピールの意味合いもあるようです。

****ロシア プーチン大統領ソビエト時代の弾圧を非難****
ロシアのプーチン大統領は、ソビエト時代の弾圧で犠牲になった人たちを追悼する碑の完成式典に出席して弾圧を非難し、来年の大統領選挙を前に、人権への配慮を強調することで従来の支持層以外の層を取り込む狙いもあるものと見られます。

ソビエト時代の1937年からの2年間、当時の最高指導者のスターリンが行った大規模な弾圧で、およそ70万人がいわれのない罪で処刑されました。

ロシアの首都モスクワ中心部で、弾圧の犠牲者を追悼するための高さ6メートル、幅30メートルの碑が完成し、30日、記念の式典が開かれました。

式典では、プーチン大統領が「数百万の人たちが『人民の敵』と宣言されて銃殺されたり、拷問を受けたりした。国民の記憶からこの恐ろしい過去を消してはならない」と述べ、弾圧を非難しました。【10月31日 NHK
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もちろん、“反政権派や人権活動家ら約40人は30日に連名で声明を出し、今もロシアには政治的に抑圧され、支援を必要とする人々がいると訴え、プーチン政権による追悼碑建立を「恥知らず」と酷評した。”【10月31日 時事】という問題がある訳ですが、その方面の話は今日はパスします。

スターリンも“強いロシア”を象徴する人物ですが、一方で帝政ロシアも“強国ロシア”を思い起こさせる時代です。「母なるロシア」への回帰という点でも、帝政ロシアはロシア人の心の故郷でもあるでしょう。

スターリンは再評価するものの、ソ連時代の“弾圧”もあって、どこまでソ連再評価に踏み込むのか、ソ連を生み出したロシア革命で崩壊した帝政ロシアをどのように評価するのか・・・微妙なものがあるようです。

【「母なるロシア」への回帰、伝統への回帰で強まる宗教右派の影響力
「母なるロシア」への回帰ということでは、ロシア正教復権、宗教の影響力の高まりがロシア社会に見られます。

****中絶規制をプーチンに迫るロシアの宗教右派****
少子化対策を旗印に宗教右派が中絶反対を提唱、大国復活を目指すプーチンに規制を迫る>

9月のある風の強い日、ロシアの首都モスクワで風変わりな抗議行動が繰り広げられた。ロシア正教会系の活動家グループ「命のために」が市内の公園の一角に2000足の子供靴を並べて、人工妊娠中絶の禁止を呼び掛けたのだ。

主催者側によると、モスクワで実施される中絶手術は1日に2000件。同数の靴を並べたのは、「命を断たれた子供たちだって学校に行きたかった」と訴えるためだ。

そばに広げられた横断幕にはウラジーミル・プーチン大統領の言葉が書かれていた。「少子化対策は死活問題だ。ロシアが存続するか、消滅するかがそこに懸かっている」

中絶反対の抗議行動は、ここ数カ月間にロシアの40都市で展開されている。「中絶を禁止しなければ人口は増えない。人口が増えなければロシアの偉大な力は失われる」。「命のために」モスクワ支部のマリア・シテュデニキナはそう訴える。

ロシアでは今、宗教的な保守派を中心として中絶反対の声が高まっている。折しもプーチンはシリア内戦への介入に続き、朝鮮半島危機の打開でも主導権を取ろうと機会をうかがっている。中絶反対派はその野望に訴えようと、ロシアが大国であり続けるには「胎児殺し」は許されないと主張する。

プーチンロシア正教会との連携を強めているが、中絶規制の強化についてはまだ考えを明らかにしていない。だが宗教右派に押されて、何らかの対応を取るのは時間の問題のようだ。(中略)

突出するロシアの中絶率
プーチンがこの問題で発言を控えている理由の1つは、規制を強化すればヤミの中絶手術が横行する懸念があるからだ。(中略)

プーチンは世論の動向も気にしているはずだ。ロシア世論・市場調査センターの1年前の調査では、ロシア人の72%が中絶禁止に反対している。(中略)

しかし現状には問題もある。多くのロシア女性は、避妊の唯一の手段として中絶を利用している。政府の統計では中絶手術を受ける女性は14年で年間約93万人。これでも減ったほうで、95年にはこの3倍。ソ連時代の65年には今の6倍で、中絶件数が新生児の出生数の3倍近くに上った。欧米諸国と比べると、ロシアの中絶率は今でも極端に高い。(中略)

中絶を禁止すれば出生数が増えるとは限らないが、ロシアでは少子化が深刻な問題であることは確かだ。(中略)現在の人口は1億4400万人だが、今世紀半ばには25%程度減るとの予測もある。(中略)

伝統回帰の動きが拡大
こうした法改定の背景には、ロシアの家父長主義的な伝統を強化し、強い指導者として国を統率しようとするプーチンの思惑があると、米シンクタンク外交問題評議会のケート・シェクターはみる。「強いリーダーシップが打ち出され、男女の伝統的な役割への回帰が叫ばれるなかで、もともとあった女性蔑視が一層ひどくなっている」

伝統回帰の動きは急速に強まっている。米調査機関ピュー・リサーチセンターの最近の調査によると、91年のソ連崩壊の前後にはロシア人の3分の1強にすぎなかった正教徒が、現在では70%を超えている。

正教会の価値観は女性の権利拡大の流れとしばしば衝突する。ピューによれば、正教徒が多数を占める国々では、女性は伝統的な役割にとどまるべきだという考えが根強い。ロシアでは妻は夫に従うべきで、女性の社会的役割は子育てだと答えた人が36%に上った。

宗教右派の極端な主張には一定の距離を置くプーチンだが、伝統回帰の運動は奨励している。プーチンが解き放った勢力が制御不能なほど拡大しているとの見方もある。「この手の動きはいったん解き放つと、もう抑え込めない」と、人権擁護団体ヒューマン・ライツ・ウォッチのユリア・ゴルブノワは言う。

「命のために」の集会は楽観ムードに包まれていた。プーチン政権は必ず中絶禁止に踏み切るというのだ。「人口危機の克服を支援したい」と、シテュデニキナは熱く語った。「私たちは大統領のために闘っている」【11月1日 Newsweek
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宗教右派の影響が強まるのはアメリカも同じですが、宗教的な大義を前面に押し出されると反対しづらいことから「この手の動きはいったん解き放つと、もう抑え込めない」傾向もあります。

【「母なるロシア」と「強いロシア」への思いが交錯するニコライ2世の“禁断の愛”】
「母なるロシア」への回帰を目指す宗教右派からすれば、帝政ロシアこそがロシアの本流ということにもなりますので、(ソ連時代にロシア正教は厳しく弾圧されたこともあって)ロシア革命ソ連には否定的にもなります。

****<ロシア>禁断の愛 ニコライ2世のロマンス描く映画に賛否****
帝政ロシア最後の皇帝ニコライ2世(1868〜1918年)と若いバレリーナの関係を描いた新作映画「マチルダ」が26日、ロシアで一般上映される。

ロシア正教会や保守派が「皇帝の名誉をけがす内容で許されない」と上映禁止を主張し、上映館の「放火」を警告するキリスト教過激派組織も登場。来月7日にロシア革命(17年)から100年を迎えるロシアだが、賛否両論の大混乱の中での封切りとなる。
 
ニコライ2世はロシア革命で退位を余儀なくされ、翌年、ソ連当局に妻や5人の子供とともに処刑された。ソ連当局から激しい弾圧を受けたロシア正教会などは、最近のロシア国内の「ソ連再評価」の兆候に敏感となっており、映画への反感も同一線上にある。(中略)

露文化省は「マチルダ」の上映を支持しており、プーチン大統領の側近の一人で、ロシア革命を巡る議論を主導するナルイシキン露対外情報庁長官は「ソ連に対して善か悪、白か黒かの極端な評価をしてはならない」と主張。

世界初の共産主義革命を経て誕生し、各方面で世界に大きな影響を与えたソ連の肯定的な面を再評価する雰囲気は、プーチン政権内でも強まっている。(後略)【10月24日 毎日】
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「母なるロシア」「強いロシア」への思いが交錯するなかで、帝政ロシアロシア革命ソ連への評価が微妙となるようです。

その一方で、欧米的な人権・民主化を求める声は・・・・大きくならないようです。ロシアは中国同様に、欧米社会とは異なる独自の道を歩むようです。