lonelylika’s diary

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ

エジプト  シシ前国防相 大統領選挙で圧勝したものの、投票率は伸びず 強権的手法への懸念も


(5月28日 カイロ シシ前国防相の勝利を喜ぶ支持者 【5月29日 AFP】)

【「4000万人以上に投票してほしい」】
エジプトでは、ムスリム同胞団のモルシ政権を倒した軍による事実上のクーデターを主導したシシ前国防相が、予定どおり圧倒的な得票率で大統領選挙に勝利しています。

****シシ前国防相の勝利確定=得票97%、広範な支持集める―エジプト大統領選****
エジプト大統領選は29日、開票作業がほぼ終了し、地元メディアによると昨年7月の事実上のクーデターを主導したシシ前国防相が有効投票数の97%に相当する約2400万票を獲得し、勝利が確定した。選挙の最終結果は6月初めに発表され、その後新政権が発足する。

クーデターで失脚したモルシ前大統領を支持するイスラム組織ムスリム同胞団などが選挙ボイコットを呼び掛けた結果、投票率は47%前後にとどまり、モルシ前大統領が勝利した2012年の前回大統領選決選投票の52%に届かなかった。

ただ、シシ氏の得票数はモルシ氏が前回選挙で得た1300万票を大幅に上回った。国民の広範な支持を得たと言えそうだ。【5月29日 時事】 
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シシ前国防相の圧勝は、ムバラク政権崩壊、モルシ政権下のイスラム勢力と世俗勢力の対立、事実上のクーデター・・・という一連の政治混乱に疲弊した国民が、民主化・自由よりも軍を背景とした「強い指導者」による安定・秩序回復と経済再建を望んだ結果です。

2012年の大統領選にも立候補し、第1回投票で480万票を獲得した左派のサバヒ氏に殆ど得票を許さず、97%の得票率で圧勝したことは、それなりの意味はあるでしょう。

ただ、左派のサバヒ氏も昨夏のシシ氏のクーデターを支持し、憲法改正などで協力してきたことで反シシ票を集めきれておらず、有力な対立候補がいない(出られない)状況でシシ氏圧勝は確実視されており、大統領選挙の投票率が新大統領信任の度合いを示す数字として注目されていました。

“シシ氏と同氏の支持者らは世界および国内の懐疑派に対し、ムハンマド・モルシ氏率いるイスラム主義政権を倒した昨年7月3日のクーデターと、民主的統治への「ロードマップ(行程表)」が正真正銘の国民の支持を得ていることを示したいと思っている。”【5月28日付 英フィナンシャル・タイムズ紙】ということで、暫定政府・シシ陣営は高い投票率のもとでの圧勝を目指しました。

また、モルシ追放後「政治には関わらない」と宣言しながら、今年3月に「国民の要望に応えるためだ」と一転して出馬に踏み切った“心変わり”を正当化したいとの思いもあります。

その点では、シシ前国防相側のシナリオどおりにはいかなかったようです。

****暫定投票率は約44%****
・・・・2011年の民主化要求運動「アラブの春」まで約60年間続いた「軍人大統領」による統治が復活する。

シシ氏の得票率は9割を超え、軍を率いた指導力への期待の大きさを裏付けた。ただ反シシ派が選挙をボイコットするなどしたため、投票率は低く強権支配復活への懸念が強いこともにじんだ。

アルアハラムによると、開票率約9割の時点で、シシ氏の得票率は96%を超え、全27県で対抗馬の左派政治家、サバヒ氏(59)を圧倒。得票数は2200万票を超え、12年の前回選挙の決選投票でモルシ前大統領(62)が獲得した約1323万票を大きく上回った。

投票率は当初予定の2日間を終えた時点で約37%だった。選挙委は急きょ投票を1日延長し、地元メディアによると、暫定投票率は約44%に達した。しかし、前回の第1回投票(約46%)や決選投票(約52%)を下回る見通しだ。

シシ氏の圧勝は選挙前から確実視され、事実上の信任投票の色合いが濃かった。シシ氏は選挙戦中「4000万人以上に投票してほしい」と語っていた。

だがシシ氏が主導した昨年7月の軍事クーデターで失脚したモルシ氏の出身母体・イスラム組織ムスリム同胞団や、11年の革命を主導し、軍出身者による強権支配復活を懸念する若者グループなど、反シシ派の多くが投票をボイコットし、シシ氏の思惑は外れた。

大統領の任期は4年。シシ氏は治安や経済の改善に意欲を見せ、幅広い政治勢力を結集した政府の樹立を目指す考えも示している。

ただ政権公約は明らかにせず、政策の詳細は不明だ。「同胞団に居場所はない」と述べるなど反対勢力には抑圧を強めるとみられる。

シシ氏は軍情報局長などを経て、12年8月に当時のモルシ大統領から軍トップの国防相に任命された。昨年7月、大規模な反モルシ政権デモを受けて、クーデターを決行。

当初は大統領選への出馬を否定していたが、「国民と軍の要望に応えるためだ」として立候補した。モルシ氏はデモ隊殺害を教唆した罪などで起訴され、公判を受けている。【5月29日 毎日】
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強引な投票率押上げ策をとるも・・・
モルシ政権を支えたムスリム同胞団は「テロ組織」に指定され、逮捕者は延べ2万人を超えるとも言われる状況で、支持者は大統領選挙をボイコット。

ムスリム同胞団にも軍部にも拒否感を持つ若者勢力についても、昨年11月にデモ規制法を制定、4月28日には、2011年2月のムバラク独裁政権打倒で中心的役割を果たした若者グループ「4月6日運動」の活動を全面的に禁止する裁判所判断が示されるなど、当局による締め付けが厳しく、多くの若者が今回大統領選挙を棄権したと見られます。

****エジプト:大統領選で「強い指導者」待望 多くの若者棄権****
エジプトの大統領選でシシ前国防相(59)の当選が確実となり、シシ氏に投票した有権者からは「強い指導者」の待望論が聞かれた。

ただ、軍出身のムバラク大統領を倒した2011年の民主化要求運動「アラブの春」の主役だった若者の多くが棄権し、ムバラク時代のような強権支配復活への懸念も強まっている。

投票が行われた26〜28日、夏を迎えた首都カイロの最高気温は40度に迫った。
投票所は「軍一色」に染められていた。反シシ派によるテロを警戒するため、小銃を持つ軍兵士が常駐し、上空を軍のヘリコプターが旋回した。

近くの路上で軍を称賛するロック調の曲が大音量でかけられ、対抗馬のサバヒ氏(59)陣営が「選挙違反だ」と抗議する一幕もあった。

シシ氏に投票した無職のラミ・ロジディさん(66)は「治安と経済を立て直してほしい」と語った。

ただシシ氏が「白紙委任」されたわけではない。「アラブの春」で倒れたムバラク独裁政権時代へ逆戻りするのを懸念する声もある。不用品回収業のムスタファ・サイードさん(37)は「ムバラク政権のように金持ちを優遇すれば、再び反政権デモが起きる」と警告した。

投票所では中高年の姿が目立ち、若者の多くが投票を棄権した。大学生の女性(20)は「シシ氏の勝利は確実で投票しても意味がない。革命前のように自由がなくならないか心配だ」と話した。

サバヒ氏に投票したカイロ大学3年の男性(21)は「シシ氏は『政治的野心はない』と言っていたのに立候補した。約束を破る人間を信用できない」と断じた。

カイロ大では、シシ氏に追放されたモルシ前大統領の出身母体・イスラム組織ムスリム同胞団系のデモ隊と治安部隊の衝突が頻発している。男性は「催涙ガスが校舎内に入ってくる中で講義を受ける。そんな状況で、将来への希望は持てない」と首を振った。【5月29日 毎日】
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シシ陣営にとって投票率が期待したほど伸びないことが明らかになるにつれ、暫定政権は2日目投票日を急きょ休日に変更、正当な理由がなく棄権した場合は罰金を科すと発表、更には投票日を1日延長するという、ルール違反とも言える強引な方法で引き上げを図りました。

****エジプト大統領選:投票2日目を急きょ「休日」**** 
エジプト大統領選挙は27日、2日目の投票が行われた。軍主導の暫定政権は投票を促すため、急きょ27日を官公庁の閉庁日とし、民間企業にも休業するよう呼びかけた。

軍出身のシシ前国防相(59)の当選が確実視されるが、反シシ派の多くが投票をボイコットしており、投票率や得票数がシシ氏への信任度を測る鍵になる。ただ、27日の有権者の出足は鈍く、投票率アップにつながるかは不透明だ。(中略)

シシ氏は選挙戦中、「(有権者の約75%に当たる)4000万人以上に投票してほしい」と発言。「シシ政権」の正統性を国内外にアピールするため、得票数を伸ばしたい考えを示していた。(後略)【5月27日 毎日】
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****エジプト:大統領選 異例の投票1日延長 低投票率危惧か****
エジプト大統領選挙委員会は27日、2日間の予定だった投票を1日延長し、28日も実施すると発表した。

シシ前国防相(59)の当選が確実視されているが、投票率が低調に終われば、シシ氏への信任度に疑問符が付きかねない。投票延長という異例の措置をとった背景には、シシ氏の得票数を伸ばしたい軍主導の暫定政権の配慮があるとみられる。

投票は26日に始まったが、初日の投票が低調だったことを踏まえ、暫定政権は急きょ27日を休日にした。さらに「選挙法の規定により、正当な理由がなく棄権した場合、500エジプトポンド(約7000円)の罰金を科す」として投票を促したが、有権者の出足は鈍かった。選挙委は「投票延長はしない」と再三説明していたが、最終的に延長に踏み切った。(中略)

政府系紙アルアハラム(電子版)によると、シシ氏と左派政治家のサバヒ氏の両陣営は選挙委に不服を申し立てたが、選挙委は「多くの国民の要望だ」として却下した。ただ実際にはシシ陣営の意をくんだとの見方が強い。
暫定政権や選挙委の幹部は「中立」を標ぼうしているが、シシ氏の息がかかったメンバーが大半を占めている。(中略)

モルシ氏とムバラク政権時代の首相経験者が競り合った2012年の前回選挙(決選投票)でも投票率は約52%にとどまった。
今回はシシ氏の圧勝が確実視されており、選挙戦への関心は高くない。

政治学者のサイード・サデク氏は「前回は、同胞団と国民民主党ムバラク政権時代の与党)の残党という2大集票マシンが、有権者に金銭や食料品を配って投票を促進した。だが同胞団は弾圧され、国民民主党も組織が崩壊した。シシ氏やサバヒ氏には手駒になる政治組織がなく、投票率が低くなるのは仕方がない」と分析している。【5月28日 毎日】
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国民の選挙疲れ、圧勝が確実視されている選挙への関心の低さはあるでしょう。
ただ、“シシ氏やサバヒ氏には手駒になる政治組織がなく・・・”とのことですが、国民民主党ムバラク政権時代の与党)の残党、いわゆる旧体制勢力はシシ氏支持で動いているのではないでしょうか?

国民不在の強権的なにおいも
選挙戦においてシシ氏本人は有権者の前に姿を見せることも殆どありませんでした。
公約も具体性がありません。

****元帥」見えぬ選挙戦****
・・・シシ氏は選挙運動開始日の2日以降、テレビ出演以外で公の場に姿を現していない。密室で外交団や有識者と会っているが、内容は明かされない。対立候補の左派政治家、サバヒ氏(59)が積極的に地方を遊説するのとは対照的だ。

シシ陣営が警戒するのはクーデターで追放されたモルシ前大統領支持者によるテロだ。シシ氏は5日放映のインタビューで、過去に二つの暗殺計画があったと明かした。詳細は不明だが、軍や警察を狙ったテロは首都カイロでも頻発しており、この1年で300人以上が殺害された。

選挙運動でシシ氏の顔が見えないのと同様、政策でも不透明な部分が多い。補助金の削減や公共事業の拡充などに言及するが、詳細は不明だ。

財源についても「在外エジプト人に寄付を求める」などと根拠に乏しい説明をする。

陣営幹部は地元メディアに「詳細を示せば議論が巻き起こる。今は議論している時間がない」と述べ、意図的に政策を伏せているとするが、国民不在の強権的なにおいもする。(後略)【5月18日 毎日】
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姿も見せず、具体的な公約も掲げず、国民に白紙委任を迫る・・・、得票率が伸びないと見るや、投票日のルールも変える・・・これでは、政権獲得後の軍政的な強権的手法が懸念されます。

****エジプト大統領選 経済再建や同胞団問題など課題山積…シーシー氏、強権発動も****
エジプト大統領選で当選を決めたシーシー前国防相には今後、低迷する経済や、昨年7月のクーデターで排除されたモルシー前大統領の復権を唱えるイスラム原理主義組織ムスリム同胞団への対応といった問題がのしかかる。

その中では、2011年に民衆デモで崩壊するまでのムバラク政権期を思わせる強権も発動されそうだ。

エジプトでは11年の政変以降のデモや衝突による混乱で主要産業である観光が大打撃を受け、回復の見通しは立っていない。

そんな中、シーシー氏は今回の選挙戦で、観光を回復させるには、言論や集会などの自由を一定程度、制限してでもデモを抑制する必要があるとの考えを示してきた。

シーシー氏を実質的な最高実力者とする暫定政権は、昨年11月にデモ規制法を制定し、同胞団などのモルシー派だけでなく、若者中心の民主化グループのメンバーらを多数摘発。新政権のもとでは、この流れがさらに加速するとも予想される。

同胞団を今後どう扱うかも大きな課題だ。
同胞団はクーデター後、同胞団を「テロ組織」とみる治安当局の大量摘発や主流メディアによる批判キャンペーンで求心力が大きく低下した。

ただ、正規メンバーだけで数十万人とされる同胞団はなお、潜在的にはエジプト最大の政治・社会組織であり、同国の中長期的な安定には政治プロセスへの取り込みが不可欠となる。

同胞団は暫定政権の正統性を認めておらず、今回の選挙もボイコットした。次期政権としては、こうした態度をとり続ける限り和解は難しいのが実情であり、当面は同胞団を屈服させるために圧力を強めながら、同胞団内の変化を促していく可能性が高い。【5月29日 産経】
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