
(9月7日 オバマケアに反対するティーパーティーの人々 “impeach”とは“政治家・官僚などを(官職に関する不正で)弾劾[告発, 告訴]する”との意味だそうです。 “flickr”より By Marc Langsam http://www.flickr.com/photos/29671464@N02/9696545663/in/photolist-fLRkcM-gdRgKa-ghcCU9-fQKeC4-geFFfn-geHuqT-gumMix-ge1ekU-gmorfD-fW9en2-gGYwQa-gpLKGh-gjdjnn-gGcGhq-gH9RDv-gGYwPD-gGYwZD-gH6Z4s-gruwk9-grE7RL-ggWRD4-fPrvEz-fPnpQ5-gchpHZ-fW6R3t-fPZW3g-gcot8w-fNsEX8-gem2N7)
【「米国は少しばかり間抜けに見える」】
アメリカの債務不履行(デフォルト)も危惧された債務上限引き上げ問題は、周知のように期限とされた17日を目前にギリギリで回避されました。
もっとも、“来年2月7日まで”という“問題先送り”ですが。
併せて、1月15日までの暫定予算が認められ、連邦政府機関閉鎖(シャットダウン)の方も、一応回避されました。
この問題は多くのメディアがこぞって論評していますので、ここで取り上げるまでもないのですが、これまでの“中締め”(最終決着ではなく)として、また、「いいかげんにしろよ!」ということで、今日もこの話題です。
****米債務上限:引き上げ法案を上院下院可決 デフォルト回避****
米議会上院下院は16日夜(日本時間17日朝)、連邦政府の債務上限引き上げと、政府機関再開のための暫定予算を盛り込んだ法案を可決した。
上限引き上げの期限は17日に迫っていたが、連邦政府のデフォルト(債務不履行)などの危機は土壇場で回避された。オバマ大統領だ署名し法案が成立する見通しだ。
法案は上院与野党間の合意に基づき提出された。来年2月7日まで債務上限を引き上げて新たな借り入れができるようにするほか、1月15日までの暫定予算を認め、一部閉鎖中の政府機関を再開させる内容。上院は採決の結果、81対18の賛成多数で可決された。
野党共和党が多数を占める下院では、オバマ大統領が進める医療保険改革法の見直しを求めるなど、共和党内になお強硬意見も強かった。ただ、下院432人のうち200人を占める民主党の賛成に加え、共和党の穏健派など一部が賛成に回り、285対144の賛成多数で可決した。
オバマ大統領は上院での可決後、ホワイトハウスで声明を読み上げ、「法案が届けばすぐにでも署名する」と表明した。
国立公園など閉鎖中の政府機関は17日にも再開し、一時帰休となっていた職員も職場に復帰する見通しだ。
米財政問題を巡っては、共和党が医療保険改革法の見直しを求めてオバマ政権と対決姿勢を示し、暫定予算が成立しなかったため、10月1日から一部の政府機関が約17年ぶりの閉鎖に追い込まれた。
また、17日までに議会が16・7兆ドルの債務上限を引き上げなければ、連邦政府は新たな借り入れができなくなり、過去の債務の利払いなどができなくなるデフォルトに陥る恐れがあった。
デフォルトが発生すれば、金融市場の混乱などで世界経済に影響が及ぶことが懸念されていたが、当面の間、危機は回避される。【10月17日 毎日】
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オバマケアを潰すためならアメリカ経済、ひいては世界経済が混乱に陥ろうがかまわないといわんばかりの共和党保守強硬派、ティーパーティーに引きずりまわされ、世界経済を人質にとったチキンレースのような展開で、アメリカ政治の機能不全をあらわにした今回騒動でした。
“ブルッキングス研究所のシニアフェロー、バリー・ボスワース氏は「米国は少しばかり間抜けに見える」と述べるとともに、「米国は経済問題の扱い方を他の国にアドバイスできるという考えだが、こんなことが起きているのでは世界は米国の言うことを本気にしないだろう」と付け加えた。”【10月17日 ウォール・ストリート・ジャーナル】
共和党の頑なな姿勢へ批判的な世論の高まりもあって、レッドライン直前で共和党も譲歩しました。
今回妥協案に下院共和党からも数十名の賛同者が出て可決できたあたりで、最後の一線で良識が保たれた感があります。
【与野党対立の原因 オバマケア】
民主党長年の懸案事項であり、オバマ政権1期目の数少ない、しかし歴史的な成果でもあるオバマケアについては、基本線は変えずに微修正で落ち着きました。
オバマケアの簡単な概略を整理すると以下のとおりです。
****オバマケア、微修正決着****
与野党協議を長引かせていた最大の原因は、オバマケアを巡る根本的な路線対立だ。米国を史上初の債務不履行(デフォルト)の危機にさらしてまで、与野党が折衝を続けていたのはどうしてなのだろうか。
米国には、65歳以上の高齢者向け(メディケア)と低所得者向け(メディケイド)をのぞいて、大きな公的保険はない。多くの米国民は勤務先を通じて、民間の医療保険に入っている。
だが、民間保険は値段が高く、従業員に保険を提供できない中小企業も多い。このため、米国民約3億人のうち無保険者は約5千万人に上り、長い間、米国の社会問題になってきた。
当初、オバマ政権は、全国民を網羅できる公的保険の導入を目指した。しかし、お金がかかりすぎることなどから、民間の保険会社に、無保険者に対しても手頃な値段の保険を提供させる路線に転換した。
製薬業界や医療機器などへの増税で財源を確保し、個人や中小企業に、保険加入のための補助金も出すことにした。その代わり、個人には加入義務を課し、加入しない場合は罰金を科す。
こうした内容の医療保険改革法は、民主党が上院、下院とも制していた2010年に成立。1960年代以来の大改革で、10年間で1・3兆ドル(約128兆円)の政府支出が必要といわれる。
この制度で、無保険者約5千万人のうち約半数が保険に入れるようになるといわれている。
だが「個人の権利」を重視する共和党側は、オバマケアは「個人への過剰介入で、米国の建国の精神に反する」と猛反発。製薬業界など大企業の支持もバックに制度の骨抜きに必死だ。
オバマケアはすでに段階的な運用が始まっているが、個人への加入義務が生じるのは来年1月からだ。そのための予算をどうつけるのかは制度の根幹を揺さぶるだけに、与野党の争いが激しくなっている。
共和党は、今回の与野党協議でまず「来年1月からの本格運用の1年間先送り」を提案。オバマ政権は、制度の抜本修正には断固反対する姿勢を崩さず、最後は微修正に落ち着いた。【10月17日 朝日】
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アメリカ国内を二分したオバマケアですが、その導入を成果として戦った大統領選でオバマ大統領が再選されたことで、実行に移していくことへの大筋の国民的判断がなされたと言えます。
【ティーパーティーに引きずられる共和党】
妥協の障害となった共和党保守強硬派の頑なな姿勢の背景には、下院選挙区割りが共和党に有利なように設定されており、たとえ今回騒動に対する一般国民の批判が強まっても、予備選挙で影響力を持つティーパーティーの支持を得て党内の候補者になりさえすれば本選挙(来年の中間選挙)では勝てる、逆に、ティーパーティーに支持されないと本選挙に進めない・・・という選挙実態があると指摘されています。
****米国:共和党「分裂状態」あらわ…債務不履行回避****
米連邦政府のデフォルト(債務不履行)危機は16日夜、回避され政府機関の再開も決まった。抵抗を続けた野党・共和党は支持率が低下し、党内の「分裂状態」もあらわとなった。保守強硬派「ティーパーティー(茶会)」系議員に引きずられた結果だが、共和党議員には、来年の中間選挙を見据えれば、強硬姿勢を貫いた方がいいとの発想がある。
「我々はいい戦いをした。勝てなかっただけだ」。下院共和党を束ねるベイナー議長は16日、地元オハイオ州のラジオ番組で「敗北宣言」した。
上院共和党は、与党・民主党と事態打開に向けた法案作りを進めたが、茶会系議員の発言力が強い下院は、医療保険改革(オバマケア)の修正にこだわり、意見集約に失敗。上院の穏健派を中心に「無駄足だ」(マケイン上院議員)などと、異論が噴出していた。
下院は、オバマ政権1期目の2010年中間選挙で、オバマケア反対や大型景気対策への反対を訴えた茶会が大きなうねりとなり、共和党が歴史的な勝利をおさめた。
その後に実施された10年に1度の下院の選挙区割り見直しでは、共和党が主導し、同党に有利となるよう調整。支持率が悪化しても影響を受けにくい。
米選挙分析機関クック・ポリティカル・リポートは、来秋の中間選挙で共和党が既に過半数の218議席までわずか7議席に迫っていると予測。共和党地盤の議員にとって、重要なのは中間選挙より年明けごろに本格化する同党候補者を決める予備選となっている。
そこで恐れられているのが茶会だ。民主党と対決せず妥協的だと見なされれば、資金力豊富な茶会に別の候補者を立てられかねない。昨年は、共和党穏健派のルーガー上院議員(当時)が、予備選で茶会の全面支援を受けた新人に負けた。穏健派議員の動きが鈍いのは、このためだ。
ベイナー議長ら指導部も茶会系議員の意向を無視できない。
共和党について、ニューヨーク大のダニエル・アルトマン教授は8日の米外交専門紙フォーリンポリシー(電子版)で「共和党は今や二つの党の連立だ。(茶会系という)約50人の下院議員と数人の上院議員しかいない少数派が、第1党と同じような権力をふるっている」と解説した。【10月17日 毎日】
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【「次回はぎりぎりでの解決とならないことを願う」】
今回の妥協が休戦協定的な“問題先送り”に過ぎないことは言うまでもなく、“(下院共和党を束ねる)ベイナー氏は「オバマケアに対抗していく。闘いはまだ続く」と合意のそばから「戦闘再開」を宣言した。かりそめの休戦協定すら意味を失い、財政協議の迷走が米国と国際社会を再び危機に突き落とす懸念はぬぐえない。”【10月17日 産経というのが実情です。
オバマ大統領は「次回はぎりぎりでの解決とならないことを願う」と述べていますが、どうでしょうか?
上述のような選挙実態、債務上限を議会が決定するという現行システムが変わらない以上、年明けにはまた同じような騒動が繰り返されることになります。
年中行事のように繰り返される財政問題によって、ワシントン発の世界経済危機を心配しないといけない日本を含めた世界各国にとってはいい迷惑です。
また、インドネシアで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議などについてオバマ大統領が欠席を余儀なくされたことで、アジア太平洋の米同盟国の間で、アメリカのアジア重視戦略への疑念、アメリカの影響力低下と中国の台頭への懸念が高まっています。
“米国は突出した経済大国として、第2次世界大戦以来、世界の金融システムの土台の役割を果たしてきた。しかし、観測筋は今、ワシントンでの財政面での機能不全によって米国の権威はひどく傷つき、海外で物事を成し遂げるその能力は限定的なものになったと見ている。”【10月17日 ウォール・ストリート・ジャーナル】